コロナ禍4年目の「技能実習」と「特定技能」のこれから
コロナ禍4年目となる2023年。
依然として新型コロナウイルスによる経済・生活への影響は続いており、今年は本格的な「withコロナ」が求められる年となりそうだ。
これまでコロナ禍を理由に“とりあえず据置き”とされてきた様々な物事に対して、本腰を入れた改革が求められることだろう。外国人材領域においては、技能実習と特定技能の両制度の改正を議論する政府の有識者会議が開催され、いよいよ具体的な改善が始まるとみられている。最大の焦点は、技能実習制度の取り扱いだ。
新興国への技術移転という制度設立当初の目的と乖離する実態や、失踪や犯罪など実習生が引き起こす社会問題をふまえ、技能実習の廃止論や特定技能への一本化等の意見もある。このような話題に対して、果たして現場はどのように感じているのだろうか。
長年、監理団体として技能実習制度に携わり、特定技能の登録支援機関でもあるHRS事業協同組合(神奈川県)の代表理事 齋藤 貢一さん(写真)に話を伺った。
齋藤さんは、「技能実習」・「特定技能」いずれも制度の見直しは必然だが、併せて、今後新たに発生する課題に対して柔軟に対応できる、余白を持った制度設計が肝要だと説く。
外国人材受け入れについては、送出機関をはじめ国境を越えた各国事業者も深く関与するため、日本国内の視点で建て付けたものが恒久的に通用するものではないという前提に立つべきと訴える。
例えば技能実習については、実習生より送出機関や監理団体等の仲介事業者が優位な立場になりやすい一面がある。
昨今のベトナム実習生は、送出機関の仲介ブローカーや監理団体へのバックマージン等を負担するカタチとなっており、それが失踪を誘発しているともいわれているが、こうした事態は制度施行時には想定できなったであろう。他方で実習生や受入企業の利益を守るために、制度の抜け道に対しては時機を逸せず厳正に対処し、最適化を図っていくことを求めたいということだ。
さらに齋藤さんは制度運用に関わる事業者の資格取得要件の厳格化をあげる。
監理団体(約3,600件)、登録支援機関(約7,800件)と両制度に関わる国内事業者数は、延べ1万件以上に上るものの、果たして適切に外国人受け入れを支援できる事業者がどれくらい存在しているのか、齋藤さんは疑問を投げかける。
受入企業・外国人材双方の希望や課題を汲み取って、公正且つ的確なアドバイスを行うには、相応の専門性や人的工数が求められる。
資格を乱発するのではなく、入り口の段階でわかりやすい定量的な基準を設けることを検討する必要があると指摘する。
近視眼的な改革はもはや許されないだろう。
国際社会に対して胸を張れる制度となることを期待したい。
(※このコラムは、ビル新聞2023年1月30日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」を加筆転載したものです。)
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