#02 地球基準のモノづくりへ。
2018.04.15
“突き詰めるとモノづくりがこの地球にとってプラスかどうか。そこしか考えない。”
柔和な笑みを浮かべながらきっぱりと、玉木新雌はそう語る。 世界中にtamaki niimeの作品を届ける、自分たちのビジネスが広がってゆくのにつれ付随してくる大量生産・大量消費、地球の環境や生命体への影響の問題。 そこに考えを巡らせ、遂には新たな方向性を見い出すに至った彼女の今の想いを、まずは聴いてみよう。
玉木新雌
「去年の7月だったかスタッフとShop & Labの外でBBQを開催した時に、せっかくだから、みんな何かひとことずつ言っていこうとなって。」
酒井義範
「言いたい事をシャウトする!自分の志とか、こんな道に行きたいとか。」
玉木
「そう、自分がこれからどうしたいかをシャウトする!そういうコーナーを作って、最後に私が振られて。何言おう?と思ったけれど、その頃考えていたのが、集約してモノづくりが可能なこのShop & Labを実現した達成感というか、10年くらいかけてようやく到達したという想いが自分の中ですごくあって。じゃあ次の10年どう生きるねん?と考えた時に、もう目標だった地点に今実際いるわけだから、ヤバイ!どうしよう、私どこに向かって歩こう?となって。もちろん売り上げは継続してしっかりと取っていかなきゃいけないという、何だろう?…変なストレスを感じて。」
― モチベーションの持って行き方が…
玉木
「わからなくなった。迷路に入りそうになった時があって。自分の中ではただ売ればいいってわけじゃないし、例えばすでに何枚もうちの作品を持っている人に押し売りして更に何十枚も買ってもらって売り上げ上がりましたと言われても、じゃあそれをタンスに眠らせたりゴミに出しちゃったりするんだったらそれっていいのか?と、色々と考えが巡って。自分が創りたいモノを創って、それが良いモノだからこそ買ってもらえると思っていたのがゴミになってしまうんだったらどうなんだろう?とか。…やればやるほど、食べ物とは違い、モノって後に残るからこそ、これは考えなあかんと思って。そんなむやみに創らんでええんちゃう、それやったらいっそのこと売らんでええんちゃう?という話になって、酒井がじゃあ会社やめようか?とか言い出して。おっとお!みたいな。(笑)」
酒井
「究極やもんな。」
玉木
「ゴミになろうが商品が売れれば良し、ひたすら利益の拡大を目指す強欲資本主義みたいな方向に行ってしまうんなら、いっそやめたらええんちゃう?と言われて。それは困るから、じゃあどうするか?となって熟考したんです。使い捨てにするのではなく、モノを大切に使ってほしいという想いを伝える、その為のツールが私たちの作品であるのなら。tamaki niimeの作品を少しずつ沢山の人に買ってもらう仕組みづくりが出来るのなら良いか、と考えたんです。」
酒井
「そもそも地球の生命というものに関心を向けたきっかけは、ヴィーガン(※肉類だけでなく酪農製品も摂らない完全菜食主義者)の話とか、食のことから入ったんじゃなかったっけ?」
玉木
「たまたまヨガをやってるスタッフに、ヨガを教えてもらうという話になって、それまですごくヨガには興味はあったけど全然足を踏み入れてなくて、ヨガの聖者の方の本を何冊か読ませてもらった時に、 あっ!そうか、 私はみんなが幸せになるべきと思ってるし、誰かを踏みつけてまで上に登っていくんであればそれは本当の幸せじゃないと思ってきたけど、その考えが人間レベルでしかなかった、と思って。」
― そこで“気づき”があったんですね。
玉木
「そう、隣の人の足を引っ張って上に登って、やったぁトップになった!なんていうのはしょせん人間の個人同士の争いでしかなくて。その下には無数の動物たちの存在があったんや、という実態を本を読んでわかって、何しとったんやろう?という。平等がいいとか平和がいいとか口にはしてたけど、犬や牛にとったら、この世の中もう地獄やん!って思って。」
畜産業の現場で動物達が人間の御都合によって(何万羽ものブロイラーの鶏たちが発育のコントロールのために陽の当たらない空間に閉じ込められ飼育されていたり、牛たちが効率よく大量の乳を絞る目的の為に繰り返し妊娠させられたりetc.)酷使され続けている実態を本やドキュメンタリー映画を通して玉木は知る。 冬物の作品用に何トンものウールを使うとすればどれだけの数の羊を必要とするかに想いが至った時にも、玉木の心は苦しくなったという。
玉木
「知らなきゃいけないと思ってドキュメンタリーの映像もけっこう観て。牛たちが飼われている状態とか、もうその現実を観た瞬間に、映画とかもすぐ入り込むタイプなので、もう牛よ、私は!」
― その瞬間まさに牛の気持ちになってしまった、と。
玉木
「何度も妊娠させられずっと乳を絞られ続ける自分を想像して、地獄やん…と思って。そんな家畜に選択肢は無いし生まれた時から運命が決まっていて、一生そうやって過ごし乳が出なくなったら屠殺され肉にされる。分かってはいて食べていたくせに見ないふりをしてきたんやと思って。よく知ろうともしなかったし、家畜たちのそんな状況の上に自分たちが生きているという事に対して大した感謝もしてなかったし…。」
玉木
「これはまずいと思って焦って。じゃあ気持ち悪いから私自身は肉類は食べないでおこうと決めて。それでも食生活のバランスが崩れずに元気に生きられるのであれば、それをみんなに推奨したいと思って。色々資料を読んでいくと、ヴィーガンで暮らしている人もたくさんいると分かり、動物性タンパク質を摂らなくても生きていける、むしろそっちの方が健康的だという資料とかも出てきたりすると、なんだ、情報が閉ざされているから知らないだけで、そういう可能性があるんだったら、自分の中で試してみたくなって。それもまた私にとっては実験で(笑)。」
酒井
「また始まったな、と(笑)。」
玉木
「はい、スタート!明日からもう肉は食べません!と宣言して。タバコもそんなん吸ってる場合じゃありませんって止めて。わが身を通した実験だからタバコのせいで死んだら意味ないから。そこで志して色々と食の勉強もしたし、じゃあどういう食が本当に良いのかというのはモニターしていかなわからんから、うちの調理スタッフには是非勉強してほしいって言って、肉を使わない美味しい食事、しかもヴィーガンだからというんじゃなくて、普通の人も美味しかったと思える食事を心掛けていたいっていう。それを追求していこうと。」
― やっぱり食は楽しくないと、というのがありますしね。
玉木
「そう、牛さんと同じように人間も我慢して、幸せじゃないのに無理して頑張って、とかだと続かないし広がらないから。それは意味がないから、楽しく美味しく食べるけど誰の迷惑もかけない、というスタンスにしたいと思うから、それを確立するために動こう!ってやり始めたんやな?」
酒井
「物質的な世界に多少なりとも精神的な世界もあったというこれまでやったけど、どっちかというと精神的な世界ありきで物質的な世界がある感じやな今の玉木は 。だから逆になってるんやと思う。内面のコアな部分とか自分がこの広い宇宙の中でどのような存在なのか、という処から…発想法が全然逆転したというか。」
玉木
「そう、シュッて変わった!逆転した。」
次回は、玉木の食に対する意識や内面の変化をもとに、今年から新たにスタートしたtamaki niime食の試み「腹ごしらえ会」について。引き続き玉木と酒井のコンビが存分に語ります。
書き人 越川誠司
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