あつい夏
酒を片手にクリスマスソングを聴いて、電車に揺られている。
現状から逃げたくて、窮地に陥るといつも旅に出ていた。けれど今回は貯蓄が尽きた頃にやってきたもんだから困ってしまった。
毎年参加していた祖母の家での食事会を蹴り、今私は、何が欲しいのかも分からない。
前までは安心が欲しくてたまらなかった。
けれど安心や安寧というものは、どの状態になろうが手に入らない「形のない」もので、ひととき感じることが出来ても一瞬でいなくなってしまう。不安や焦燥感はどこへでも着いてきてくれるのに。
私の中にある不安感を拭う方法は誰も知らない。
やめてしまいたい世界。
以前関わっていた、大切だった人に「言う言葉に必ず保険をかけないで欲しい」と言ったことがある。今の私は言葉に保険をかける人だ。きっと辛い状況だったのに、何も考えずに頭が回らずに酷いことを言った。今からでも、取り消したい。そっと距離を置けばよかったのだ。
いつでも振り返ればそこには、足りていない自分がいる。
では、今はましになっているのだろうか。そんなことは私には分からない。
いつまでたっても、手が届かない理想郷の自分を求めている。
嫌いにしかなれない。なのに、好んでくれる人はいるもので、許してくれる人もいる。だから、それに甘えて生き延びている。いつもいつも。どうして「傷つけてもいい」「手を離さない」「それでいいんじゃない」なんて言葉が出てくるのか。それはきっと、きっと無責任なだけだって、わかっているのになぜ私は縋ってしまうのか。
答えはまだ認めたくない。認められない。
陽気に観せる、平気な顔をして強気な顔をして歩く。
けれど中身はそんなことないに等しいか、黒いものしか入っていない。
そんな私をまだ、許してくれる人が居る。
だからもうすこし。