地球全部が私たちの畑。足元の野草が教えてくれる、人間らしい自然な自分
こんにちは、TSUMUGI編集部のMamiです。
TSUMUGIでは、毎月コミュニティのメンバーに「暮らしのキット」をお届けしています。セレクトしているのは、日常の中で「自然体に還るひととき」を過ごしてもらえるような食品やドリンクなど。
今回ご紹介するのは、1月のキットでお届けした「月のよもぎ茶」を作っている、蓬〈よもぎ〉と薬草暮らしのブランド「suu - (スー) 」の佐々木美帆さん。
“すっと沁み込む、すみわたる。素の自分に還るお茶”
美帆さんとお話しすると、誰も傷つけない優しさを持ちながら、本質を捉えてブレない素直さのバランスがとても心地よくて、Zoom越しになんだかハグされているような親しさを感じてしまうほど。ふんわりと包み込むように優しく香るよもぎ茶は、美帆さんのお人柄そのものだなあと感じます。
私自身が最近、都会の暮らしの中で感じていた違和感を美帆さんがどんどん言葉にしてくれて、私も素の自分に還っていくような、そんなインタビューのひとときでした。
インスピレーションで移り住んだ海街・糸島
福岡県の西に位置する半島地域「糸島」。綺麗な海と山に囲まれ、浜辺アートや静かなカフェなどが点在する、自然あふれる地域です。
その糸島に拠点を構え、自然とともにあるライフスタイルを提案している美帆さん。自生する野草を摘んでお茶や食材、化粧品などを作っています。てっきり糸島が地元なのかと思っていたら「わたしは東京出身で。糸島は全く縁もゆかりもない土地でした。Google Mapで見てピンときただけなんですよ」と、にっこり。
小さい頃から動物が好きだったという美帆さんは、獣医学科を出て動物病院へ。しかし、働きすぎで体調を崩したことをきっかけに、自分を見つめるためにカリフォルニアへ。スタートアップの立ち上げなどに携わり、ビジネスパーソンとして働いていました。
「実は私自身、のめり込むとブレーキがきかずに無理してしまうタイプで。そろそろ日本に帰って、どこか海の近くでゆっくり生活したいなと思っていたときに、偶然見つけたのが、糸島でした。最初は周りに知り合いもいないし、車もないのに歩いていける範囲にお店がなくて食べ物を買いに行けず、海で魚を釣って食べたのが思い出深い記憶です(笑)」
足元は素晴らしい野草に囲まれている
そんな予想外の幕開けから、自然と共にある暮らしを送り始めた中で、一番驚いたのは自生する野草の種類の多さや力強さでした。
もともとハーブに親しんではいたものの、海外で育ったこともあり、ラベンダーやレモンバームなどの西洋ハーブにしか注目していなかったそう。植物に触れる時間が一番素直な自分になれると感じ、いろんな野草を摘んでは食べたりスキンケアに使ってみたり。
中でも、美帆さんを魅了した野草が「蓬(よもぎ)」でした。よもぎは、雑草として道端や公園にも生えていたり、昔から団子や餅に練り込んだりと、日本人とも馴染みが深い野草です。
「よもぎは、四季を通して日本全国どこにでも自生していて、栄養価も高く、とっても優しい味わい。老若男女、誰にでも使ってもらいやすいし、足元にこんなに素晴らしい野草に囲まれて生きてたんだと、感動しました。それに、丁寧に熟成と火入れの研究を重ねると面白いくらい食材として美味しさが追求できることにも惚れ込んでいきました」
心身のバランスを崩していた自分自身を救ってくれた野草の素晴らしさを、同じような辛さを抱えている人にお裾分けできたらと、よもぎ茶のブランドを始めることに。そうやって4年前にできたのが「- suu - 」でした。
独自の製茶によってよもぎの美味しさを引き出しながら、西洋ハーブやスパイスなどと合わせて、数種のブレンドティーをつくっています。よもぎの優しい味わいをベースに、生姜のアクセントや、ハーブの爽やかさなど、それぞれに個性のある味わい。
また、薬草を使った化粧水手作りキットや、最近ではよもぎや小豆を使ったよもぎピローなど、ライフスタイルに取り入れる様々な提案をしています。
地球全体が自然の畑みたいな感覚
野草は、糸島みたいな自然のある場所だけじゃなく、都会にも住宅街にも生えています。美帆さんの、一番のおすすめは河原。あとは、たんぽぽやつくしなど、絶対に自分が分かるものから探し始めると、次第に目が慣れてくるそうです。
「なにもないって思っていた原っぱや路肩でも、“緑の目”になると、びっくりするくらい、ひとつひとつの命が見えてきますよ。その辺に生えている植物が食べられるんだと分かると、地球全体が自然の畑みたいな感覚になって、偉大な存在に生かされているなと実感します。だから、“地球を守ろう”なんて言うのもおこがましいというか。住まわせてもらっているんだからマナーを守ろうという気持ちです」
いつのよもぎを採ったらいいかという質問もよくあるそうですが、そういうのもずっと見ていたら分かるようになってくるものだと言います。美帆さん自身も情報として植物の「旬」は知っていたけれど、毎日見ている中で、植物が生き生きしているかどうかが感覚的に分かるように。
「知識ではなく、五感、六感で分かることがたくさんあるんです。自然と暮らしていると、繊細さや敏感さを保ったまま生きていられるなと感じます。都会ではいろんなセンサーを鈍化させておかないと、必要以上に傷ついてしまう。そうして、自分の辛さを感じられなくなって、相手の辛さも分からなくなってしまいます」
揺れることではじめて真ん中が見えてくる
スピードの速い都市とゆっくりの自然。そのどちらの良さも悪さも分かった上で、現代社会には「ゆらぎ」が失われてしまっているのではと話します。
「ぎゅっと均一に矯正していた社会にも、そろそろ揺り戻しがあるんじゃないかな。人間って、もっと繊細で揺れ動く生き物。もちろん私自身も数字やお金のことを考えることもある。けれど自分から湧き出たものを純度の高いまま、プロダクトやビジネスに昇華させていきたいなって思います」
調子良い時もあれば、不調なときもある。論理や対価を追求することも必要だけれど、自分の中のナイーブな部分を見つめて創造することも必要。
振り子のように行き来することを許されない社会では、どこかで無理が来てしまうのかもしれません。夏があるから冬も良い。冬があるから夏も良い。季節も同じです。
「真ん中はどこなのかなって、揺れなければアンバランスなことにすら気づけない。行ったり来たりする中で、自分の真ん中のようなところに近づいていけたらいいですよね。自分がそうでありたいし、誰かのそういう有り様を支えられたら嬉しい」
昨年末はご自身も体調を崩されて一時期休養をしていた美帆さん。そのことも、包み隠さずSNSで伝えながら、回復食として自分で作った薬膳鍋のレシピなどもシェアしていた様子を見て、本当に「お裾分けしたい」という気持ちでやっていらっしゃるんだなあと感じました。
「他人の辛さを本当の意味で知ることはできないから、誰かを癒すなんてことはできないと思っています。だから、自分のためにやっていることを、みんなシェアできたらなあと思って、そんな気持ちでsuuをやっています」
今では薬草の力も借りながら体調も回復し、2月にはsuuのウェブサイトや商品パッケージをリニューアルするなど、未来に向けてまたいろんなクリエイティビティが溢れています。
これからはパッケージを簡素化して、すぐに飲んでもらうことができる「できたて便」を仕組み化したいと構想したり、日本古来の自生の木の実「どんぐり」にも注目したいと考えていたり。
「夢は、ぐりとぐら・・・!(笑)あんなふうに、毎日野山で集めてきたものを使って、自然を思いっきり楽しんで生活していたいんです」
きらきらした目でそう話してくださった美帆さんのこと、きっとよもぎ茶を飲むたびに思い出すし、そんな純粋で繊細な部分を自分もちゃんと無くさないでいようと思える。都会に住んでいても、路肩に身を寄せる小さな野草たちを見て、住まわせてもらってる地球に感謝しようと思える。
よもぎと美帆さんに、人生でとても大切なことを教えてもらったような気がします。
「- suu -」さんのブランドサイトを今回リニューアルを、エンジニアとしてお手伝いしたのが、実はTSUMUGIメンバーのかよこ!よかったらぜひサイトも覗いてみてください。
また、美帆さんを始めとして、全国津々浦々の素敵なパートナーさんをお迎えした、コミュニティ「TSUMUGI」にご興味を持っていただいた方は、ぜひこちらのサイトをご覧ください。
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