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小学校時代、少し変わった同級生の思い出

私が小学生の頃って、
恐ろしいことにもう50年近く前の話になる。

同じクラスに、タカコちゃん、という同級生がいた。
彼女は” 知恵遅れ” であるというのが、みんなの共通認識だった。
今は「知的障害」というのか? 
でも、「知恵遅れ」という言葉のほうが、優しい気がするんだけど。
数十年後に知ったのだが、タカコちゃんは、自閉症だったそうだ。

タカコちゃんは普通学級にいたわけだが、
混乱は全くなかった。
タカコちゃんが授業中にふらふらと席を立つと、
どういうわけか、クラスで一番「わんぱく少年」って感じの子が、
タカコちゃんを連れ戻しに行った。
授業は一瞬、中断するのだけど、
それって、
「誰かが消しゴムを床に落として、『うわっ』と言った場合」
と、同じ程度の中断。

タカコちゃんの行動を、誰も馬鹿にしなかったし、
「まあ、タカコちゃんだからな」
と、とくに誰も気にしなかった。

タカコちゃんは人と目を合わせなかったけれど、
クラス全員に同じ質問をしていた。

「森野さん。誕生日いつ?」
訊ねられて誕生日を答えると、即座に
「森野さん、蟹座?」
と、星座を当てる。すごいもんだなあ、と思った。
彼女はクラス全員の顔と名前を知っていた。
星座を訊ねるのは、彼女なりのコニュニケーションだったのかな、と思う。

当然、保護者からの苦情の噂も聞いたことがない。
トラブルもなかった。
今にして思えば、担任の先生の技量もあったのかもしれないけれど。
「授業中も突然、席を立ってしまうタカコちゃんと、
それを気にしない私たち」
みたいな、仲間意識っぽいものもあったかもしれない。
彼女の存在によって、
教室の心理的な風通しが良かった気がする。

ここから、何らかの美談とか教訓を引き出すことはできない。

自閉症というのは、症状の幅も広く、
ご家族の負担がとても大きい場合もあるそうだ。

ともかく、障害や病に限らず、
「いろんな人がいる」
という単純な事実を、体感として知ることで、
世界の居心地はずいぶん良くなるんじゃないかな、
と思う。

それにしてもタカコちゃんは今、どうしているかな?
わんぱく少年だった男の子は、今はどんな大人(というか、おじさん)
になっているだろうなあ、と、思う。

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