珺
【東京の夜】にあった物語をまとめています。
久しぶりにnoteに戻ってきた。 最初に書き始めてからもう数年が経っているが、 わたしの日常は何の変化もない。 いや、正確にいうと変化はあったが、状況は何一つ変わっていない。 何故か、ふと、過去に思いを馳せたくなり、 自分が書いたnoteを定期的に読んでいる。 たぶんわたしは、まだ都会に憧れを抱いているのだ。 きっとそうだ。 地元が嫌なわけではない。家族もいるし。 ただ、 自分がここでくすぶってるわけにはいかないなという気持ちだけはある。 気持ちだけは。
誰からもらったのか、 または、自分で持ち帰ってきたのか、 金木犀の花が、家にやってきた 部屋の敷居を跨がず、紹介された花の香りは、 この部屋のヒーターの暖かさで、 当人の笑顔と共に、 全くもって僕には届いてこなかった 金木犀の花は、冷たい空気だからこそ いい香りが鼻をくすぐるのかもしれない
こうして手紙を書くのはいつぶりでしょうか。 そちらは、天気や気温という概念はあるのでしょうか。 今年はいろんなことが起きましてね、 あなたのことだから、近くで見てくれていたでしょうから わざわざ説明することもないのでしょう。 あなたがここからどこかへ旅立ってしまって、もう8年ほど経ちますね。 一緒にお散歩した街も随分変わってしまったんですよ。 でもね、歩くのが早いあなたが、 足を止めて唯一わたしを待ってくれていた場所は まだ綺麗に残っています。 そちらへわ
南の魔女が死んだ。 と言うのは、パロディだが、 彼女のことを「魔女」なんて言ったら、絶対にバチが当たる。 彼女は、関わった人々、みんなの太陽のような存在だった。 〝頭がいい人は、聞き上手〟 と言うことをいつもわたしに実感させるように、 彼女は頭が良かった。 しかし、その滲み出る優しさや温もり、人格の素晴らしさは計算ではなかった。 わたしの中で彼女の存在は、人生の道標だったのだ。 共に同じ家で17年もの時を過ごした。 しかしながら、わたしも大人になる成長の過
人間は、どうしようもない「悲しさ」に打ちひしがれる時、涙すら流れないのかもしれない。
22歳のわたしが、未来のわたしに向け書いた言葉、第二段。 前回はこれ↓ 今回は「自分の秘めた才能」と言う題名で、 過去の自分は占いを元に自己分析していた。 大学4年生、就活で自己分析を軽くやっていただけあって、 今のわたしから見ても、よく分析できているなと感じる。 内容は以下の通り。 わたしには、柔軟性があり、優れた感性があるらしい。 人が思っていることを察知する能力に長けており、 周囲の人のやる気を引き出す能力が高いらしい。 おまけに、対象を理解する才能
彼と帰る道のりが 全て最後かのように わたしはしっかりと景色と感情を胸に刻んだ 何回もキスをされたが わたしがそれに応える形 大人は正義でかっこよく強くあってほしい だから、その場の雰囲気だけで 簡単にキスなんてしちゃダメなんだよ。 と思いながら目を閉じた。 わたしにはまだ 〝愛おしい〟 と言う感情が分からない。 だけど、何回も言ってくれた人。 彼と最後に交わしたキスは ツナマヨの匂いがした。 不謹慎だが、 レーズンと口内の酸を合わせると ツ
わたしは何もできない。 家の掃除をすることや、庭の掃き掃除、 仏壇に生ける花の世話やその付帯作業、 親の死を目前にしている彼女たちを労ること、 自分の感情を殺すことしかできない。 先月、わたしは会社を辞めた。 わたしはわたしのした選択に後悔はない。 何より愛おしくて、わたしの全てで、 絶対的存在である祖母の近くにいたかったから、 東京から実家へ戻ってきた。 会社は〝うつ病〟と診断され、三ヶ月後に辞めた。 祖母が入退院を繰り返すのを、現状が分からない離れた
〝人は10代の頃に思う存分しておかなかったことを生涯引きずる気がする〟 そう、日記の冒頭に書いていた。 この日記は、22歳の頃書いていたのもで、 多くは、未来のわたしへ向けたメッセージが書かれている。 書いた当初、わたしはもう20代だったが、 何か行動を起こさなかったことを引きずっていたのだろう。 続けてこう書いてあった。 〝終わりがあるからこそ、初めて人間は日常を全力で生き、そこに感謝することができるのだ〟 わたしは今でもずっと「終わり」を意識し、生きている
これは、僕が彼女と出会った、あるひと夏の物語。 大学を卒業し、上京して3年目。 仕事もプライベートもある程度、満足している。 元々フットワークも軽かったおかげで、友人関係もそれなりに広がった。 ーーーピコン。 聞き慣れた機械音が僕を呼ぶ。 〈今度の土日、キャンプしない?〉 歳が近い、会社の先輩からの誘いだった。 「先輩とだったらどこへでも行かせていただきます!!」 〈即答すぎ。大勢でやるから、詳細決まったら言うわ〉 「おっけです。お願いします!」 こうし
さよならだ。って、秋 案外、あっけなく過ぎ去ってしまう、秋 一年待ち続けた冬、長く感じる冬 寒いから閉じこもってたいね、そうしたいね いろんな角度からつつかれ、顔を歪ませる からだの外側を流れる何か、 レフ板みたいな役割かもしれない シャワーみたいな役割かもしれない もしくは、体温で雪が溶け、 からだの外側に流れているのかもしれない キラキラと輝きを増して、 わたしのからだはまたひとつ脱皮する 春の桜の蕾のように、夏を待っているセミのように、 紅葉に
誰しも、一度は思ったことがあるのではないか。 〝あの頃に戻りたい〟 それは、過去に馳せる叶わない願い。 人が人生で出会う人の人数は平均して、約30,000人と言われている。 その中で、気の合う友人や親友と呼べる人と出会えるのは 素晴らしく奇跡だと思っている。 一緒に過ごした学生時代を僕は忘れない。 あの頃僕たちは、その一瞬一瞬が全てだった。 成人だけど、まだ学生。 僕たちの世界は、まだ狭かったのかもしれない。 狭かったからこそ、成り立っていた世界なのかもし
満月の日に 待ち合わせは錦糸町。 スカイツリーがよく見えるこの街は、 改札から出てすぐに喫煙所がある。 そこが決まってわたし達の待ち合わせ場所だ。 「ごめん、待たせちゃったかな」 「全然平気だよ。さっき来たところ」 「今日は何が食べたい?」 「んー、じゃあ、鳥貴族がいい」 「おっけー」 わたしは上京して、地元にはない鳥貴族をこよなく愛していた。 店に着くと、検温とアルコールを求められる。 少し前は、当たり前ではなかったこの風景も、 今では自然と手首を
人は、関係性に名前をつけたがる。 1恋愛にしろ、友情にしろ、とにかくだ。 しかし、過去を振り返った時、 わたしは、自分の記憶の〝曖昧フォルダ〟にある思い出ほど、 よりノスタルジックな気持ちにさせられる。 わたしが彼と出会ったのは、 新卒で入った会社の先輩の、人数合わせとして呼ばれた会だった。 仕事上、遅れて参加したわたしの席はもう決められており、 必然的に隣の男性と話す機会が多くなるような形となった。 彼は30歳で、わたしより8歳年上だった。 「好きな料理
秋のことだ。 少数派かもしれないが、 わたしは夏より、冬より、 秋になると、人肌が恋しくなる。 わたしは、ひどく塞ぎ込んでいた。 部屋に引きこもりがちで、コンビニにご飯を買いに行く以外は 外から出ない生活を何週間も続けていた。 そんな時、 わたしはネットで知り合った年下の男の子とご飯の予定が入った。 待ち合わせは、西船橋駅。 前の予定が少し早くに終わったので、駅構内のカフェに入る。 ここのカフェはもう店内でたばこが吸えなくなったらしい。 などとどうしよ
キミと別れてからまだ1週間しか経っていないのだ。 考えられない、もう1ヶ月くらい経ってるかと思ってた。 時間の流れなんて、人の感じ方によって 全く異なることを実感している。変なの。 キミは元気にしているだろうか。 わたしはこの1週間、とても濃い時間を過ごしたよ。 気持ちの整理、少しはついたのかもしれない。 わたしはキミの過去になるんだ と、自分の中で、落とし所を見つけているような気がする。 だけどね、本当は、 わたしがキミを幸せにしたくて、 わたしが一番