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やっぱり大荒れに荒れた箱根駅伝予選会

まぁ、事前の予想通りではあったのですが、それにしても難しいですよね。

一つ言っておきたいのは、多くの選手にとって人生を賭けた大勝負レースだからこそ起きたトラブルな訳で、気楽に走れるレースなら、こんな事はそうそう起きない訳です。どうしても勝ちたい勝負で1秒でも早くゴールしたいから、ギリギリの速いペースで走らざるを得ない、からこそ、こういう悲劇の数々が起こってしまうのです。それだけは、ご理解いただけたらな、と思います。

とりあえず、感想を大学別に。


立教大学

事前の多くの予想でも通過が有力視され、トップ通過候補にも挙げられていた立教大学が堂々のトップ通過。と言っても、トップ通過の本命ではなかった上に、関東インカレハーフ入賞のエース格を欠いた中でのトップ通過は、相当な地力と調整力を見せたと言えるでしょう。
個々の選手を見ても、チームトップの馬場選手は日本人3位、それに続いて林選手・國安選手と言ったエース格の選手が順調に上位でゴールし、チーム10番目も137位と10人が大崩れせずにゴールするという、ほぼ完璧な結果。
今年就任した高林監督は、全日本大学駅伝の予選会も通過に導き、箱根予選会もトップ通過と、手腕は確かなようです。(というか、名将の予感がぷんぷんします。いずれ、母校と國學院とで優勝を争う事もありそう。)

やっぱり「名将の雰囲気が漂」いますよねぇ。

専修大学

一応、2大会前の出場校で何度も出場している伝統校の一つではありますが、事前の予想では、通過可能性がある20校ほどの中では下位の方の評価で、通過は難しいのではと思われていました。
それが、通過できただけでなく、堂々の2位。大躍進と言って良いでしょう。
と言っても、専修大学のここ数年の「スカウト」は、予選会通過ボーダー校とは思えないほどの充実ぶりで、その成果が出たと言えそう。
それだけでなく、この厳しい暑さの条件に最も入念な準備をしたのが専修大学だったみたいで、その辺りの大学の本気度が、この結果を生んだと言えそうです。

個々の結果では、何より新留学生・マイナ選手の3位の貯金が大きかった。日本人エースも新井・上山両選手が上位でタイムを稼ぎ、それ以外の選手も集団走が機能して9番目まで崩れずしっかりまとめる事ができました。(10番目は遅れたものの大崩れはせず、貯金をあまり使わずにまとめました。)

山梨学院大学

山梨大も、優勝3回の名門ですが、近年は低迷して出場できない事も出てきて、今回も前評判は高くはありませんでした。
しかし、今年就任した大崎監督が有能そうで、しっかりと調整できたようです。
個々の結果では、やっぱり留学生キピエゴ選手の2位の貯金は無茶苦茶大きかったです。最後までトップ争いをして、3位でさえ45秒も離す(日本人トップとは2分27秒差)大貯金。それ以外も、2桁順位が4人、10番目で185位と、下位層も大崩れせず、全体として上手くまとまった結果でした。

日本体育大学

連続出場中の伝統校。予選会巧者で、しかも今年は全日本大学駅伝予選も通過し、戦力的にも充実していて通過が有力視されていましたが、安定していましたね。
個々の結果でも、山﨑・平島両選手が日本人4位・7位と上位で走り、7番目までが二桁順位と中間層も充実していました。一人がアクシデントで途中棄権し、10番目が201位と下位層は苦しみましたが、アクシデントに負けない強さがありました。

中央学院大学

今回出場する日本人選手の中では群を抜いた実績を持っていた吉田礼志選手は、留学生集団がハイペース過ぎたため、日本人選手の集団からも離れて単独で留学生集団からこぼれた選手を拾っていくレースとなりました。高温の厳しい条件の中、単独で走るレースは難しかったでしょうが、他の日本人選手とは格の違いを見せつけるレースだったと思います。
また、準エース、学生ハーフ2位の近田選手も日本人6位と力を出し切り、全体でも、10番目が143位、11番目でさえ148位と、全く危なげなくレースを進められたようです。
ただ、吉田選手は、強豪校のエースと互角の戦いをすべき選手。今年こそ、箱根本戦での快走を見たいですね。

中央大学

中央大学は前回の箱根本戦前にインフルエンザ蔓延のよるトラブルで力を出しきれずに予選落ちしただけで、本来ならこの場にいるべき実力の大学ではありません。所謂「場違い」な大学で、他の予選会出場大学とはワンランク上の実力を持っている大学です。
しかし、エントリーリストにエース格の選手が5名ほど載っておらず、代わりに1年生が5人エントリーされていました。1年生は高校時代から有名な有力選手たちでその実力は折り紙つきではありますが、それでもハーフマラソンという長い距離のレースは初めてで、プレッシャーのかかる予選会の舞台で全員が無事に実力を出すのは、経験豊富な上級生よりは難しいと考えられます。
また、前の記事にある通り、今回は気候条件も難しくなった訳で、不確定要素が多いなか、実力者を温存して大丈夫か、という不安もありました。
結果を見ると、その危惧は半分は当たっていたと言えます。実力的にはかなりの確率でトップ通過できた筈ですが、難しい条件の中、崩れてしまった選手が何人も出てしまいました。10番目は218位でした。
しかし、1年生はしっかり走り、チーム内順位も2、4、5、7番目と上位の方を占めています。1年生をこんなに使って大丈夫か、という危惧は杞憂だったと言えるでしょう。逆に、1年生の奮闘のおかげで、予選会落ちをせずに済んだと言えそうです。

日本大学

名門・日本大学も、ここ数年は何度も出場を逃すなど低迷が続いていましたが、去年就任した新監督は手腕がしっかりしていて、ようやく安定して強化できる体制になってきたと言えそうです。
個々の結果では、やっぱり留学生・キップケメイ選手の個人トップの貯金は大きかった。この難しい条件で60分台は驚異的です。今年のボーダーは11時間・一人当たり66分台だったので、一人で5分以上の貯金を稼ぎ出した事になります。それ以外では、9番目・10番目が182位・183位と、かなり崩れそうになっていましたが、なんとか持ち堪えたといった所でしょうか。
(今年は悪条件で全体のタイムが遅くなった分、留学生貯金が例年より大きかったと思います。)

東京国際大学

実はかなりピンチでした。主将の楠木選手がプレッシャーからか、前半で熱中症を起こしリタイヤ、早い段階で一人少ない戦いを強いられます。また、頼りの大エース・留学生のエティーリ選手が暑さにやられ、さらに腹痛も起こして失速、大きな貯金は稼げませんでした(それでも11位では戻ってくるのですから、物凄い実力の持ち主ですけどね)。さらに、一人少なくなった事で下位層の遅れがモロにタイムに反映される状況となり、8〜10番目が67分台と大きくタイムをロスしてしまいます。
それを救ったのが中間層の選手達の頑張り。6番目までが二桁順位に入り、その分のタイムを何とか稼ぎ出します。
本戦ではエティーリ選手はどんな走りを見せるでしょうか。

神奈川大学

神奈川大学も大きなトラブルに見舞われます。エースの宮本選手が途中でリタイヤ。タイムを稼いでくれる存在がいなくなります。
ただ、神奈川大も予選会巧者。稼ぐ存在がいなくても、中間層の選手達が終盤にまとまって順位を上げ、タイムを稼ぎ出します。6番目までが二桁順位で上がり、10番目と175位と一人少なくなっても下位層の崩れを許容範囲内に留め、なんとか圏内に踏みとどまりました。
こういう難しい条件だと、チームの地力みたいなのが問われますね。トラブルにも崩れなかった神奈川大、お見事でした。

順天堂大学

ギリギリ通過できたのが順大。かつての名門校で、今でも多くのトップ選手が入学し所属もしている大学なので、予選会ギリギリというのは寂しい限りです。
しかし、順大も実は事前予想では前評判は高くありませんでした。というのは、内部のゴタゴタが表に出てしまって、とても選手達が競技に集中できる環境とは思えない状況でしたので。全日本大学駅伝の予選会では惨敗。それに激怒した澤木氏が学生達に罰ゲームのような練習をさせ、それで入院するような選手まで出てしまい、そのトラブルが表に出てしまい、澤木氏は処分される事に。(しかし、澤木氏のコメントでは全く反省はみられず、今後も何かと現場に首を突っ込んできそう。誰か早く、御大の首に鈴をつけて現場に近づけないようにしないと、選手達が可哀想です。)
今回の結果も、通過したとは言え、それは東海大学のトラブル(後述)に助けられただけで、通過ラインを実力で越えたと胸張って良い結果ではないと思います。(1秒を大事にした結果だとかコーチ陣が言ってましたが、そんな事を言ってる場合か、と思いました。)10番目が199位と下位層は崩れてしまっていますし、中間層もタイムを稼げていません。そんな中、孤軍奮闘とも言える走りをしたのがエースの浅井選手。ずっと怪我で前半シーズンを棒に振り、実質復帰戦というような状態だったと思うのですが、鬼気迫る走りで日本人2位と躍進。これこそがエースという走りで、名門校の誇りを見せました。
とりあえず、選手達が競技に集中できる環境が一日も早く訪れるように願わずにはいられません。

東京農業大学

たった1秒差で出場を逃したのは悔しいでしょう。出場したどの選手も「あと2秒なら削り出せたんじゃないか」と思える結果ですから、夢にまで見るほどの悔しさだと思います。
ただ、前年度出場校とは思えないほど、前評判は低かった。躍進を引っ張った並木・高槻両エースを始め多くの主力選手が卒業した上に、大エースの前田選手が肺気胸でエントリー漏れ。さすがに厳しいだろうと思われたのですが、その事前予想を覆す結果だったとは思います。大エースを欠きタイムを稼いでくれる選手もいないなか、全員で粘ってタイムを縮め、下位層の崩れも許容範囲内で何とか踏みとどまった。前田選手不在でここまで戦えた自信と、あと1秒だったという悔しさを胸に、今後、躍進するのではないでしょうか。
ただ、1つ後悔があるとするなら、前田選手の欠場(これはしょうがなかったでしょうから)よりも、実力者の原田選手・深堀選手がイマイチ伸びきらずタイムを稼げなかった事でしょうか。学生ハーフで深堀選手が8位、原田選手が9位と実力を付けてきていたので、この二人がもう少し他校の日本人エースと競り合ってタイムを稼げていれば、というのは、タラレバとしてはあるかもしれません。前田選手復帰後の躍進のためにも、両選手や他の選手たちの奮起が求められるでしょう。

東海大学

今回、最も大きな悲劇に見舞われたのは東海大学だったでしょう。ロホマン選手のゴール前での棄権は大きなニュースにもなりました。映像も見ましたが、居た堪れない思いになりました。
ただ、ロホマン選手以外にも、10番目だった越選手はゴール時に蛇行していて熱中症に近い症状だったと思われます(医務室で治療を受けたという話もあります)。11番目の選手もそれより時間がかかってゴールしていて、同じようなトラブルだった可能性は高いでしょう。3人も大きなトラブルに見舞われたというのは不幸としか言いようがないです。
と言いましたが、3人も熱中症になってしまったのだとしたら、チームとして暑さ対策に問題はなかったか、という話にはなると思います。当日暑くなるのは、数日前には分かっていた筈です(なので私もこんな事前記事を書いた訳で)。その対策が十分でなかったのでは、と言われても仕方がないと思います。
東海大学自体、事前予想ではトップ通過の有力候補で、戦力的にはかなり余裕をもって通過できる実力はあった筈でした。全日本大学駅伝の予選会はトップで通過していて、今年の戦力に自信を持っていたと思います。何人か主力は出場できませんでしたが、少なくとも出場選手のリストを見れば、他校が羨むような実力の選手が並んでいた筈でした。なので、慎重に暑さ対策をしていれば、と思わずにはいられません。

OB中島選手のコメント。実に真っ当な指摘です。

矢印が自分に向いている選手は強くなるし、だから兵頭選手の今後も期待したいです。

それ以外の大学

明治大学

明治は、全体としては崩れてはいなかったです。10番目でも172位でしたし。ただ、チームトップの吉川選手で83位と、稼ぐ選手がいなかったのが響きました。稼ぐ役割だっただろう、堀選手が欠場、森下選手や尾崎選手が失速と、エース格の選手が暑さからか上手く走れなかったようです。
と言っても、7、8人が上位で走る明治大学の中間層の厚さが今回みられなかったのは、暑さに上手く対応できなかったと言うべきでしょうか。

国士舘大学

前回の箱根本戦で12位と躍進した国士舘のこの結果も衝撃ではあります。本戦での躍進の立役者だった生駒選手がエントリー漏れし、本線で健闘した生田目選手が欠場したりと台所事情は厳しかったでしょうが、本戦でしっかり走ったメンバーがかなり出走はできていて、戦力的には十分にあった筈でした。
結果を見ると、留学生のカマウ選手を始め、もうちょっと上位で走って欲しかったと思う選手が多く、そういう小さな誤算が積み重なっての結果でしょうか。改めて予選会は難しいと思いました。

駿河台大学

駿河台大学は、前回出場時に下級生が多かったため、経験者が多く残っていて、戦力的にはギリギリという評価ではありましたが、通過候補ではあったと思います。
ただし、結果は16位と惨敗と言って良い結果だったでしょう。個々を見ると、留学生レマイヤン選手は5位と健闘したのですが、日本人エースの東泉選手と古橋選手の失速が痛かった。また、チーム7位が250位と中間から下位層が完全に崩れてしまっていて、一人二人の立て直しじゃどうしようもない状況だったと思います。
でも、出場選手で4年生は一人と若いチームで、しかも駿河台自体が隔年傾向のある大学なので、来年には期待したいと思います。

https://twitter.com/sundai_ekiden/status/1847988883113615379

慶應義塾大学

事前記事に書いた通り、期待はしていたんですけどねぇ。29位と、近年では最も悪い結果で惨敗としか言いようがない結果でした。近年で戦力の最大値となる年でこれでは、ちょっと話にならないと思います。
慶應についてはレース後の記事が全くなく、コメントも全く確認できないので、何が起きたかはわからないのですが、外野が結果だけを見て言うなら、田島主将以外は、実力を出しきれなかったと言えるでしょう。上位で戦うべき木村選手で118位(ゴール後ふらついているのが見えました、恐らく熱中症の症状でしょう)。チーム3番目で77分以上と、ボーダーを越えてしまっています。
難しい条件で荒れる年なのでチャンスがあるかと思いましたが、暑さに対応できるだけの実力をまだ蓄えられていなかった、と言えるのかもしれません。いずれにせよ、慶應の箱根復帰はまだまだ遠そうです。

箱根本戦の展望

今回の予選会は条件があまりに特殊すぎて、あまり参考になりにくい結果と言えるかもしれません。
ただ、条件が近かった96回の結果を見てみると

予選会校の本戦の順位:東国5位、神大16位、日体大17位、明大6位、創価9位、筑波20位、日大18位、国士舘19位、早大7位、中大12位

4校もシード権を獲得するなど、本戦でも躍進していました。また、下位通過だった早稲田や中央が本戦では健闘していて、実力があるが予選会失速したチームでも予選さえ通れば本戦は関係ないとは言えそうです。
そういう意味では、中央や順大は、今回の結果は気にしなくても良いかもしれません。
逆に、予選会良かった神大や日体大が本戦で下位に沈んでいて、そういう意味でも予選会はあまり参考にならないかもしれません。今回良かった大学も、それがあまり本戦での結果に結びつく訳じゃない事は胆に命じて準備を進めるべきでしょう。

という事で「今回の結果は本戦の展望にはあまり繋がらない」という話でした。どうもすみません。

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