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第100回箱根駅伝 エース区間2区の争いは史上最高レベルの大激戦に!

第100回箱根駅伝について、前回の記事ではエントリーされていない選手に注目してみました。ここからの記事では逆にエントリーされていて、恐らく走ると予想される選手に注目してみます。
まず、箱根駅伝の華、エース区間2区についてです。

2区出走が予想される選手たち

独断と偏見で、2区出走が予想される選手たちを列挙していきます。挙げる順番も私の独断による「強い順」です。(敬称略)

  • 中央大学:吉居大和

  • 駒澤大学:鈴木芽吹

  • 日本大学:キップケメイ

  • 山梨学院大学:ムトゥク

  • 國學院大学:平林

  • 青山学院大学:黒田

  • 東京農業大学:前田

  • 東洋大学:松山

  • 創価大学:ムチーニ

  • 国士舘大学:カマウ

  • 駿河台大学:レマイヤン

  • 中央学院大学:吉田礼志

  • 順天堂大学:浅井

  • 早稲田大学:石塚

  • 城西大学:斎藤

  • 神奈川大学:小林

  • 法政大学:松永

  • 立教大学:関口

  • 大東文化大学:久保田

  • 日本体育大学:山口

  • 帝京大学:福田

  • 明治大学:児玉

  • 東海大学:花岡

23校全て、列挙してみましたが、こうして並べてみると分かるのは、「みんな強い」という事です。
いえ、各校のエースが並ぶ訳ですから強いのは当たり前なんですが、しかし、ここ数年2区のレベルが爆上がりし、ひと昔前には区間賞レベルだった67分台以下で半分近くの選手が走るようになりました。(99回大会は9人、98回大会は12人)
そうなると、一昔前には合格点だった68分台で走っても、シード争いからも1分ほど立ち遅れる事になってしまいます。つまり、一昔前なら区間賞が取れるくらい高いレベルのエースを持たない大学は、シード争いからも大きく後手を踏む事になっている訳です。

しかし、上記のリストをみると、下の方に挙げた選手でも、調子さえ合えば67分台に手が届きそうな選手が揃っています。今年の予選会では、各校のエース達が62分半くらいまでにゴールしていました。立川の難コースでまだ残暑のある10月にこのタイムで走れるのは、相当に力があります。
また、予選会は怪我で調整が間に合わずに好走できなかったために一番下に記述している東海の花岡選手も、前回の3区区間6位で走っていて、今年の関東インカレ1万メートルでは一人留学生選手に食らいつき2位に入っているなど実力を大きく伸ばしている選手です。なので、2区でも十分に良い走りができると思います。(他の選手の方がより実績があるというだけの話です。)
また予選会下位の大学も、強い留学生(山梨、駿河台)が居たり、スーパールーキー(東農)が居たりします。なので、ここで大きく遅れる大学は居なさそうに思えるのです。
逆に言えば、エースが調整不足で走れなかったり力を出しきれなかったりすると、相当な下位から巻き返さなければならなくなります。また、留学生頼りで留学生の力で上位に進出したりリードしたりをアテにしても、これだけ強い選手が揃っていると、そんなに簡単にはいかないだろうと思います。
もう一つ言える事としては、1区の重要性が例年以上に高くなる、という事です。これだけ強い選手が揃い力の差も小さいと、1区で遅れたら追いかけるのは大変です。集団で競り合ってペースがどんどん上がるのを後ろから一人で追いかけるのはいかに力のある選手でも難しく、力を出しきれずにさらに立ち遅れる事になってしまいます。エースの力を引き出す為にも、少しでも良い位置で襷を渡したいでしょう。

区間賞争いは

区間賞争いの本命は、中央の吉居大和選手でしょう。前回の区間賞、しかも前々回は1区を独走で区間新を出しており、走力的にも一番あると言って良いと思います。前回走っている経験も大きいです。今シーズンの駅伝は本領発揮が出来ていませんが、八王子ディスタンスで28分ちょうどくらいで余裕を持ってペース走をしていました。これは過去、吉井大和選手が好走した時の調整パターンで、順調に準備ができている事が期待されます。去年の経験を活かし、今年はさらにタイムを縮めてくるのではないでしょうか。
対抗は、駒澤大学の鈴木芽吹選手。今年は継続して練習が積めているとの事で、安定して好結果を出し続けています。特に出雲駅伝アンカーの走りは圧倒的で、歴代の日本人選手で一番の記録で走っています。あと、鈴木選手に有利なのはコース適正です。鈴木選手は1年時に5区を任されたほど登りが得意で、なので去年までのエース田澤選手が「自分より芽吹の方が2区に向いている」と何度も話していました。吉居選手との争いは非常に高レベルになると思われます。
日大のキップケメイ選手も注目です。来日当初は貧血に悩まされていたそうですが、その治療が癒え夏を過ぎて覚醒。まず日本インカレで最強留学生・エティーリ選手と最後まで争い2位になると、予選会では総合トップを獲得し、日大の予選会突破に大きく貢献します。この時に記録・60:16は、10月に立川の難コースでこのタイムを出すのは驚異的と言えます。純粋な走力では一番かもしれません。ただし、箱根2区は権太坂や終盤の登り坂、23キロという距離で多くの留学生ランナーを苦しめてきた難コース。2区の経験どころか箱根駅伝も初めて、という経験のなさで3番手とします。
その予選会で3番だった山梨のムトゥク選手は、予選会ではキップケメイ選手に30秒離されました。しかし、それ以下の留学生には大差を付けて勝っており、走力的にはかなりあると思います。こちらも箱根を走るのは初めてになりますが、山梨の留学生はここ数年2区で好走を続けていて、ムトゥク選手は前年に好走したムルア選手の準備などを間近で見ていた分、経験を補えると思います。その分、キップケメイ選手との差は詰めてくるように思います。

強いランナーはたくさん出走予定ですが、区間賞争いという観点からは、この4選手の力が少し抜きん出ていると見ています。条件にもよりますが、66分そこそこ、ひょっとすると65分台の記録が出るかもしれません。

区間上位争い

区間賞争いは上記4選手と思っていますが、彼らとそれほど力の差がない位置に複数の選手が居ると思います。
その筆頭と言えるのが國學の平林選手。前回も2区を走り、区間7位ながら67:32とまずまずのタイムで走っています。今年はさらに大きく成長し、1万メートルで27分台を出し、全日本大学駅伝ではエース区間7区で区間賞を取りました。吉居選手や鈴木選手との差を確実に詰めてきている筈で、今回は66分台は十分に出ると思います。
青学の黒田選手も強いです。前哨戦の出雲駅伝・全日本大学駅伝ではいずれも好走。青学・原監督が今シーズン最も警戒しているランナーは駒澤・佐藤圭汰選手だと思われ、原監督はその警戒している選手に自チームの最も信頼しているランナーをぶつける傾向がある(去年は田澤選手に執拗に近藤選手をぶつけていました)のですが、今年 その役割を任されているのが黒田選手です。黒田選手はその期待に応え、出雲では佐藤選手と同着の区間賞、全日本では8秒差の区間2位(区間新)と、それほど離されずに走っています。また前回は山登りを走る可能性があったとの事で、登りを得意としているそうです。そうしたコース適正も有利に働きそうです。
そして、最注目なのが、東農大のスーパールーキー・前田選手です!
前田選手は今シーズン、ルーキーの枠を超え大学長距離界の顔とまで言えるほどの活躍をしてきています。まず、デビュー戦の関東インカレ5000mで多くの留学生選手に混じって4位入賞を果たすと、圧巻だったのが全日本大学駅伝予選会。タイムを稼ぐためにハイペースで飛ばす留学生たちの集団に日本人で一人食らいつくと、ラスト500メートルで前に出て留学生選手たちと真っ向勝負を仕掛け、3位に食い込む大健闘を見せ、東農大を14年ぶりの本戦に導きました。これには度肝を抜かれました。ここ数年の全日本大学駅伝予選の日本人選手で一番の活躍だったと言って良いでしょう。
箱根予選会でも、当たり前のように好走しました。ハーフの距離が初めてで、大学の予選会通過のため絶対に失敗できないレースとの事で、前半は自重して留学生集団には付かず、日本人2番手集団(吉田礼志選手が一人留学生集団に付く)で進めますが、15キロでスパートして集団から抜け出すと、留学生選手や吉田選手もどんどん追い抜き、9位まで順位を上げてゴール(当然、日本人選手では一番です)。タイムも素晴らしかったのですが、これでもまだ余力がありそうなのが恐ろしいです。
全日本大学駅伝でも、2区で激走します。10位で襷を受けると前をどんどん追って順位を上げ、3位まで上げて襷を渡します。区間記録も佐藤圭汰選手・黒田選手に次いで3位で区間記録を更新しています。
このように、出るレース全てで圧倒的な走りをしてみせていますので、箱根2区でも当たり前のように区間上位争いに食い込んでくると思います。
あと、2区で忘れてはいけないのが、東洋大学の松山選手。過去2回の箱根駅伝では2区でいずれも好走、1年時は77:15、2年時は77:02と非常に高レベルで安定した記録を出しています。3年時は怪我で走れず、それが東洋苦戦の一要因となっていました。なので、松山選手に関しては、1、2年生の状態にどこまで近づける事ができるかが重要だと思われます。怪我で継続した練習ができている訳ではありませんので、大きく記録を伸ばす事は難しいでしょうが、非常にアベレージが高い選手なので、状態が戻りさえすれば、76分台で走る事は可能でしょう。

ここまでで既に8人の選手を挙げていますが、それ以外の選手も、それほど差がある訳ではないと思われます。留学生選手たちはいずれもトラックや駅伝、予選会などで好走しています。また27分台のランナーが他に3人(吉田礼志選手、石塚選手、斎藤選手)います。27分台ランナーは並ではなく、少し前なら区間賞争いの筆頭くらいに挙げられるのですが、それがこの位置になるほどレベルが上がっているのです。

ここ数年、2区のレベルは爆上がりしていると何度も書いてきました。ただし、その2区のレベルの急上昇に付いてこれていない大学もあって、ここで大きく立ち遅れてしまっていました。しかし、今年はそういう大学はほとんど出ないのではないかと思います。(あるとすると、何らかのトラブルでエースが走れなくなった場合でしょう。そういう大学が今回は出ない事を祈っています。)


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