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ランニングの上下方向を考察する(ランニング理論で遊ぼう)

さて、ランニングを座標軸に分けて考えるシリーズのPart 1.  まずは一番易しいZ軸方向から考えてみましょう。
上下方向だけで考えた場合、ランニングは連続ジャンプ運動と考える事ができます。空中に浮いている場面は、いわゆる放物運動の動きになり、上下方向だけに絞れば下向きに重力だけがかかっている等加速度運動です。
という事で、まずは、上向きに飛んで地面に戻ってくるまでを計算してみます。

文字式での計算

具体的な数字を入れる前に、まずは文字式で整理します。
上向の初速度を $${ v_1 }$$ 、重力加速度がg、地面を0とし上向きにプラスにZ軸を取ります。時間を t とすると、
t 秒後の速度:$${ v_1 - gt }$$
t 秒後の高さ:$${ v_1 t -\frac{1}{2} g t^2 = \frac{1}{2} (2 v_1 - gt) t }$$
これが基本になります。
それで、知りたいのは、
1.どれくらいの時間で地面に戻ってくるか、
と、
2.どれくらいの高さまで上がるか(一番高い位置は?)
の2つです。これも計算できて、1つ目は、下の基本式が0になるt を求めれば良くて、

$$
\frac{1}{2} (2 v_1 - gt) t = 0 \\
t = \frac{2 v_1}{g}
$$

となります。
一方、一番高い位置は、速度が 0 となる時の位置なので、上の式で速度= 0 の t を求めて、下の式に代入すれば計算できます。式変形は省いて結果だけ記すと

$$
H = \frac{v_1^2}{2g}
$$

となります。
(速度= 0 の tは、ちょうど最初の時間の半分です。これは、グラフが頂点で対称だからなんですが。)
これで何が分かるか、というと、
「上向きの初期速度、つまりどれくらいの勢いで飛び上がったか、だけで、飛び上がる高さと地面に降りてくるまでの時間が決まる」という事です。
地面に降りてくるまでの時間は、初期速度に比例し、飛び上がる高さは初期速度の2乗に比例します。
これが、X方向、Y方向がどうであろうとも、つまり、どれくらいの速度で走っているか、とかに全く関係なく、上方向の初期速度だけで決まってしまう、という事になるんです。

単純化する

これが何を意味しているか、を、もうちょっと噛み砕いてみます。
物事を単純化して、接地時間をゼロ、つまり、身体が地面に降りてきたら、一瞬で跳ね返って同じ速度で上向きの運動になる、とします。
(接地時間を考慮する考察は、少しややこしいので、また改めてやります。)
こうすると、「どれくらいの時間で地面に戻ってくるか」がピッチに変換できるようになります。

具体的な数値を入れて計算する

では、具体的な数字を入れて計算してみます。
入れないといけない数字は、g(重力加速度)と $${ v_1 }$$ (上向の初期速度)の2つです。
重力加速度は決まっていて、$${ 9.8 m/s^2 }$$ です。
問題は初期速度、どう決めても良いのですが、現実的な範囲の数字にしたいですね。なので、逆に適当なピッチから計算してみます。
ピッチは170としましょう。1分間に170回飛ぶという事ですから、飛ぶ間隔は秒単位なら、$${ 60 / 170 \risingdotseq 0.353 }$$ 秒になるので、$${ v_1 }$$ は次の方程式で求まります。

$$
0.353 = \frac{2 v_1}{g}  \\
v_1 = 0.353 \times 9.8 /2 \risingdotseq 1.73 (m/s)
$$

飛ぶ間隔は、上記計算の通り、だいたい 0.353秒なので、あとは飛ぶ高さですね。それは、上の式に$${ v_1 }$$ を代入すると、

$$
H = \frac{v_1^2}{2g} = 1.73^2 / 9.8 / 2 \risingdotseq 0.153 (m)
$$

となり、だいたい15センチくらい飛び上がってる事になります。
(予想以上に高いと感じるかもしれません。それは接地時間をゼロにしているため、同じピッチでも飛ぶ間隔が長くなっている影響です。接地時間がゼロではない場合は、もう少し先で計算しますが、ざっと半分くらいになると思ってください。)

ピッチを決めるもの

この計算で何が分かるか、という事ですが。
それは、上向きの初期速度: $${ v_1 }$$ によって、飛ぶ高さと、落ちてくるまでの間隔、それはつまりピッチ、が決まるという事です。
言い換えると、どれくらい高く飛ぶか、が、ピッチを決めている、という事になります。ピッチを決めているのは、上向きに飛ぶ高さだけで、どれくらいの速度で走っているかは無関係に決まります。

では、ピッチが変わるとどうなるか、については、次の稿で考察しましょう。

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