続・自由人の散歩道
おうち大好き
引きこもり主婦の私が
久々に散歩したくなったのは
中3長男が通っていた保育園へ続く
楓の並木道。
小2次男を先日学校まで
迎えに行ったとき車で通り
黄色や真っ赤に色づいた楓に
目を奪われた。
長い間週末は
長男の野球の試合で早起きするか
練習のためにお弁当をつくるか
バタバタする朝を
過ごしてきたけれど
彼が引退してようやく
ゆっくり過ごせるようになった。
青い秋空広がる
ぽかぽか陽気の休日。
目覚めてからも
布団にくるまれたまま過ごす
まったりタイムに
温かい湯船に浸かって
体中に血のめぐりを感じる
リラックスタイム
そんなふうに午前の時間を
存分に贅沢に使ったあとは
お待ちかねのお散歩タイム。
これまでなら当然のように
小3長女と小2次男を
誘うところだけれど
長男の卒園文集に
たまには一緒に散歩しようねと
書いておきながら
叶えないままもうすぐ9年を
迎えようとしていることを
思い出した。
生き方かえてから
やりたいことはやる
有言実行してきた私としては
それをこのまま
なかったことにしたくはない
そんな思いに駆られ
散歩のパートナーに
長男を抜擢することにした。
しかしながら
照れ屋で素直でない私にとって
これはなかなかハードル高いミッション。
だいたい中学生男子が
お母さんと二人で散歩なんて
嫌がるんじゃなかろうか。
なんとか誘う口実を
頭をフル回転させて考える。
まずは散歩とは言わず
引退後の体力維持のための
ランニングを提案してみるとしよう。
保育園を通り越した
並木道の終点には自動販売機。
そこでジュースを買うことを
エサにして誘い出すという
なんとも幼稚な作戦を考案した。
断られないかなと
まるで好きな人を
デートに誘うかのように
ドキドキしながら
長男の部屋のドアを開けると
もう昼前だというのに
まだ布団の中にいる彼。
私以上に休日の午前を
のんびりして満喫していた。
私の提案に対しては
「わかった、でも昼からな」
と意外にもあっさりした返事。
お昼ご飯を食べてから
計画の詳細を彼に話す。
楓の並木道の終点まで
私は写真を撮りながら行くから
彼も一緒に歩いて行って
自動販売機でジュースを買ったら
私は来た道を戻るから
彼はその先をランニングして
帰ってくるというプラン。
行くよと声を掛けて私が家を出ると
数メートル遅れて彼が歩いてくる。
数ヶ月前からカメラにはまり
「日常の箱」わが家の中で
写真を撮るようになった私にとって
風景をカメラにおさめるのは
まだまだ慣れず迷うところ。
ゆるくカーブを描いて立ち並ぶ
赤、オレンジ、黄色に染まった木々。
陽の光に透かされた
オレンジの葉。
雑草の緑とのコントラストが美しい
真っ赤な落ち葉。
散歩道を一部埋め尽くすほどの
落ち葉の集まり。
はっと心惹かれた景色の
納得いく構図を探している間に
彼は私を追い越し
ずいぶん先を歩いていた。
しまいには
先に自動販売機まで行ってもいいかと
聞かれる始末。
数枚の写真を撮ったのち
ようやく彼が待つ並木道の終点
自動販売機に私も到着。
欲しかったコーラは
売ってなくて
代わりに選んだアイスティーを
彼が飲むとすぐ
私たちは別れた。
所々に集まった
楓の落ち葉の上を歩いてみると
乾いた葉っぱが
カシャッカシャッと鳴る音と感触が
なんとも快感。
長男とこの通園道を
ほぼ毎日通った3年間に
この快感を味わう余裕なんて
私には全くなかったようだ。
いつの間にやら
すっかり日も陰ったこの散歩道に
冬の気配を感じながら
こどもみたいにわざと
落ち葉を踏みしめて帰った。
帰ってみると
家にはすでに長男の靴が。
ずるしてショートカットを
してきたんじゃないかと
疑う私に
俺を見くびらんといて!
と実力を主張する彼。
確かに所属する野球チームでも
一番といえるくらい
長距離は得意。
2年ほど前に
私が一緒にランニングしてみたときは
到底彼についていけなかったことも
思い出した。
あれができない
これもできない
私がダメ出ししてばかりいた長男にも
私より優れたところが
実はいっぱいある。
まもなく身長も
私を抜いていくだろう。
一息ついて
今日は一緒に散歩したと言えるのか
甚だ疑問に思えてきた。
でもきっとこれが
私と彼にとってのほど良い距離。
自由気ままにチョロチョロ動く彼を
心配するあまり
無理やり手を繋いで
自分の側でまっすぐに
歩かせようとする
そんな私の子育ては
12年で破綻を迎えた。
そのおかげで今では
たまに相手の存在を確認しつつ
それぞれが
自分の楽しみを見つけて
自分のペースで進む
そんな関係でいられるように
なったんだ。
妊娠中手を繋いで通う日を
楽しみにした散歩道
入園してみたら
急かしてばかりだった通園道
卒園したら
9年近くも叶えず仕舞いの散歩道は
私と長男の成長を感じさせてくれる
大切な大切な散歩道。