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二人は、ナチスという最悪の時代に、戻ることで、愛を成就した。「愛の嵐」(Night Porter)/リリアーナ・カヴァーニ監督(1974)

僕がこの映画を観たのは、公開から5,6年経過した大学生の頃。その時ハマっていたルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に落ちた勇者ども」や「ベニスに死す」の後でした。
この3本の映画には、ダーク・ボガードが出演していることもあり、同じタイプの映画だと感じていましたが、プロデューサーは3本ともロバート・ゴードン・エドワーズ。

この映画は、ナチスドイツ崩壊後に、戦犯として裁判にかけられるのを恐れ、つつましく生きる元ナチス将校のホテルマン(ナイト・ポーター)と収容所にいられて、なんとか生き延びたユダヤ人の美少女が再会してしまい、二人は過去の極限かつ背徳の記憶を思い出し、再び二人の世界に溺れてしまいます。
リリアーナ・カヴァーニ監督はナチスの強制収容所から帰還した女性をインタヴューしたドキュメンタリー「レジスタンスの女」に触発されたこの映画を作ったそうで、取材された女性たちの「犠牲者はすべて無実だなんて思わないでください」という言葉から、彼女達強制収容所でどのように生き伸びたかということが、この映画でも描かれています。


観ていると、禁断、背徳、頽廃 倒錯 そしてエロス・タナトスなんて言葉が浮かんでくる映画で、そのドロドロとした世界は少女漫画的ともいえますが、最近観る機会が増えた“フェミニズム映画”同様、女性の視点が、この映画をより情念に世界に我々を誘います。
ナチスの戦争犯罪の生き証人たる彼女をナチスの残党から守るため、二人は軟禁状態で食物もなく、厳しい状況になりますが、ラストでは、殺されてしまうことをわかっていながら、二人はナチス時代の将校の制服と収容所で来ていた衣服に着替え、橋まで、行き射殺されてしまいます。


二人は、ナチスという最悪の時代に、戻ることで、愛を成就したということですね。
ナチ帽にレザーの長手袋、素肌にサスペンダーで踊るシャーロット・ランプリングがナチス将校の前で歌い踊るシーンは何度観ても衝撃的

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