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故人の偲び方

今日、20代の頃働いていた会社の社長のお別れ会に参加してきました。

会場に入ると、白いカーネーションで埋め尽くされた壇上の真ん中に、ウィスキーのグラスを持ち笑顔でこちらを見つめる社長の遺影が。
献花をして静かに手を合わせ、ご挨拶をしました。

現社長にお悔やみを申し上げ挨拶するも、伝えたい言葉はたくさんあるのに涙ぐんでしまい言葉にできない。
哀しみよりも感謝の思いが溢れて胸が詰まります。

挨拶を済ませると即、お盆にお酒やソフトドリンクを載せたホテルのスタッフから声がかかります。

メイン食材からデザート、握り寿司コーナーから蕎麦まで並び、立食パーティーのような雰囲気です。

美味しい物とお酒をこよなく愛する社長でした。

私も若い頃、「勉強」と称しては色々なお店に連れて行っていただきました。
「美味しい!だけではアカンで。どう美味しいのか言えるようにならんと。」
この教えは、シェフになった私にとって大きな財産となっています。
文化や四季を大切にする心も教えていただきました。

誰よりも率先してスタッフとコミュニケーションを取る姿勢、お酒を飲みにいくと部下が社長を気遣うよりも早く、部下のグラスの減りを気遣う姿。
社内では敬称を使わず〇〇さんを徹底。
私が入社する以前はスタッフのお母様全員に母の日のカーネーションを送っていたのだとか。
お金があるからできることですが、お金があるからといってできることでもありません。
【人を大切にする心】があるからこそです。
決しておごらない、愛に溢れた偉大な方でした。

日本人で初めてアメリカのホテルで働き、日本で初めてラム肉の輸入をして会社を立ち上げ、万博で紹介した行動力とビジネスセンス。
会場の数箇所には若い頃からの写真がスライドショーで流され、そこには数々の社長語録が散りばめられており、とても懐かしく涙と笑顔がこぼれます。

「勉強」も語録の一つで、今日も私は勉強でハイボールとラムチョップをいただきながら、懐かしい面々と話し、泣き、笑い合ったのでした。


会社をやめてから16年。
今でも続くご縁があり、今日をきっかけに繋がり直したご縁もあり。
経営者と従業員だけではない、人と人との繋がりを強く感じる本当に素敵なお別れ会でした。
旅立ったあとまでこのようなギフトをくださった社長に、意思を引き継いで心のこもった会を開いてくださった役員の皆様に感謝が溢れます。

「心を尽くす」とはこういうことなんだなと感じながら、電車に揺られ帰りました。

最後にスライドショーの締めくくりにありました。

「ほな、また!さいなら、気ぃつけて。」

笑顔で手を上げる社長の笑顔が目に浮かびます。

また会う日まで、私はあなたから学んだたくさんのことを今までも、そしてこれからも自分の一部として紡いで生きて行きます。

私の命を生きて行きます。

愛をこめて
たまひろ






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