往復書簡 たまたび青森②山神様に会いに行く〜いのちパートI。
「ヒャぁ〜っ!危なかった!」
5分前に見た、晴天の岩木山神社でアイスクリンを楽しむ人々の姿が嘘だったかのように、
レストランのドアを開けるや否や、
バケツをひっくり返したような突然の大雨が降り始めた。
大雨。雷。ガマガエル。漆黒の森。
まさに魔の森。
山神様と呼ばれる青森県弘前市にある『燈明杉』での不思議なひと時のお話、
はじまり、はじまり。。。
ランチを済ませて、少し雨が静まったタイミングで、山神様に会いに向かった。
雨が降っても、いつも良いタイミングで止むのに、山形『魔界の森』以来の大雨。
※正しくは『幻想の森』です。
カーナビにセットした登録地点に車が近づくほどに、どんどん暗くなる空。
険しくなる山道。
どこまで車で進めるのだろうか。。。。
もちろん私たち以外には、
前にも後ろにも、すれ違う車もない。
不安を感じながらも、前へ突き進む。
雨の中、窓を下げて五感を研ぎ澄ませながら突き進む。
のろのろと15分ほど走ったところで、
急に森の空気が変わったことを感じ、
ふと遠くを見つめると赤い鳥居が見えた。
異様な雰囲気をまといつつ、神聖さが漂う。
車は突然開けた場所に到着し、そこは燈明杉がある湧き水で有名な堂ヶ平桂清水だった。
車を停めると、ますます激しさを増す雨。
轟く空。
いまにも雷が落ちそうだ。
しばらく車の中で待ってみたが、止みそうもないので、意を決して外へ出てみた。
せ〜のっ!
「えっ近くない!?」
かなり近くで雷がゴロゴロ鳴っている。
わかっています。知っています。
雷は危険です。
そんなとき山に入ってはいけません。
雷は木に落ちるって聞いたことあります。
でも、でもなんです。
魂が行けというんです。
「これでもし死んだらそういうことや、とにかく行くことになってる。」
ここまで来たからには、そういうことだ。
「せやな」の一言で、雨支度を整え出発することにした。
と、足元で何かがうごめいた。
ぎゃぁ〜っ!
暗い森の中で、地面と同化したその生き物からは、何かが飛び出していた。
大きなガマガエル。
ぎょえぇ〜っ。。。。
我々が気づかずに、歩み寄ってしまった為に、
傷を負ったそのカエルは大きくジャンプし、更に傷を深くした。
きっと車で私が轢いてしまったのだろう。
助けてあげたい、でもどう手を出していいのかわからない。
持ち上げたところで、傷を縫い合わせることもできない。
これ以上近づいたら、更に傷つけてしまうおそれもある。
しばらく頭を捻らせたが、一休さんのような名案は浮かんでこなかった。
ごめんなさい。と何度も何度も心から謝罪し、奇跡の快復を祈って燈明杉へと歩みを進めた。
つづく。