鳥獣戯画ノリ【ショートショーnote】
地元のファミリーレストランは今日も、わいわい、がやがや。
太郎の後方の席でビジネスマンと女性が話だした。
「このプランに変更すると、三万円もの節約になるんです」
「どんなプランなの」
ここが勝負と見たのか、ビジネスマン、一気に畳み掛けている。
「通常30ギガまで定額なんですが、このプランだと、なんと、鳥獣ギガまで使用できるんです」
ん、鳥獣戯画ならこの前、太郎と見に行ったが、鳥獣ギガまで使用できるとはなんぞ。
不思議に思っているのは私だけみたいで
その女性は
「鳥獣ギガまで!」
と驚いた様子。
それどころか興奮しすぎて、ひっくりカエル。
ビジネスマン、すかさず合いの手を入れる。
「よっ、これぞ、鳥獣戯画ノリ」
各席からも拍手喝采。
半世紀ぶりにこんな立派な鳥獣戯画ノリを見れたと涙ぐむ、じじいまでいる始末。
だから私もノリでひっくり返ってみたのに、返ってきたのは太郎の苦笑いだけ。
ふざけんな。
訳の分からぬ世界に嫌気がさした私は猿になって、この人間社会から逃げ出した。
おしまい
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