金魚鉢
美雨と知り合って二度目の誕生日がもうすぐ来る。
プレゼントに金魚鉢をあげようか、風鈴をあげようか、と悩んだ結果、金魚鉢を選んだ。
風鈴の音を西瓜でも齧りながら聞くのも風情があって良さそうだった。
それでも金魚鉢にしたのは、口実が欲しかったからだ。
金魚鉢をプレゼントしたら次は金魚か熱帯魚を買いに行く流れに自然となるはずだ。
駅から十五分程歩いた所に小さな熱帯魚店があることはこの前確認した。
道中に美味しそうなドーナツ屋がある事も確認した。
だから金魚を買いに行くことになったら一緒に十五分散歩できるし、一緒にドーナツを選んで食べ歩きすることもできる。
一緒にできることの多さを比べてみたら金魚鉢が圧勝だった。
金魚鉢は昔からよく見覚えのある形状のものを買った。
透き通った球体のガラスの口の部分がフリルになっている。
シンプルなものを好む美雨もきっとこのフリルの雰囲気は気に入ってくれるはず。
美雨のことだから金魚じゃなくてメダカをこの金魚鉢で育てることを選ぶかもしれない。
そうなったらそうなったで美雨が選んだメダカに凛とか泡とか適当に名前をつけて大切に育ててみよう。
美雨は最近職場内の人間関係に疲弊して元気をすっかり失ってしまっているから、金魚鉢の中に宿る生命が美雨にわずかばかりの活力を与えてくれるんじゃないかとも期待している。
きっと良い方向にいくはずだ。
さっきまで降っていた雨はなくなって、透明なギフト袋に包まれた金魚鉢に太陽の光が当たった。
そしたら足元の道に虹が発生した。
金魚に虹と名付けるのもいいかもなと思った。
終わり
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