カフェ4分33秒
時計の長針が1から2に辿り着かないくらいの時間、それが4分33秒。
彼と訪れたこのカフェの名前は4分33秒。
本当はスタバに行く予定だったけど、面白い店名だったから入ってみた。
レトロな時計が多く飾ってある純喫茶。
この道一筋であろう店主が丁寧に珈琲を抽出している。
店内は私たちだけかと思わせる程に静か。
ぽつりぽつりと点在している先客達は読書をしたり、珈琲を味わったり、各々の時間を満喫している。
薬缶が沸騰している音や、耳を澄ますと時計の針が進んでいく音も聞こえてくる。
その音に没頭し過ぎて、彼と一緒にこの店に来ていたのを忘れていた。
彼は自分の存在を忘れられていたことを知っていながら、ただわたしのことを見守ってくれていた。
そういえば、彼のそういう眼差しを好きになったのだった。
長針はいつの間にか2を超えて3に移動している。
静寂は停止することかと思っていたけど、どうやら違うみたい。
出来立ての珈琲の香りが近づいてきた。
◇
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