違法の冷蔵庫
ソファ越しに青空を眺めていた。チャイムが鈍く響いた。戸を開けると、黒服の漢が招く前からどたどたと踏み入って来た。相変わらず無礼な奴だ。その漢、僕の高校時代からの親友は普段通り冷蔵庫を勝手に開け、ビールを飲みだした。
◇
ビール片手に俺は冷蔵庫の中を見た。こいつの冷蔵庫は常に狂ってる。今日だってなんだ。椎茸のバター炒め、蛸のカルパッチョ、鯛の塩釜焼き、スイートポテト、ケールとアーモンドのサラダ、ティラミス。今夜宴でもあるのかよ。旨そうなものばっかだ。こんなもん時代が時代なら違法もんだ。思わず
「こりゃ違法の冷蔵庫だな」
なんて叫んじまった。
叫んだら頭が明瞭になって。気づいた。
気づいちまった。
俺は冷蔵庫を薙ぎ倒した。下敷きにされていた床が露わになった。
床下から「助けて」と掠れた大人の女の声がする。
女は何十年も監禁され料理まで作らさせられていたんだ。
元少女。
ずっと探してた。
俺たちの愛娘。
この非道な男。違法だろうが冷蔵庫にぶち込んで凍死させてやりたい。だが俺はお前みたいにはならない。違法じゃない方法で罪を償わせる。
終わり
※父親が床下に娘がいると気づけたトリックは、あるあるですが、冷蔵庫に並べられた料理の頭文字からです。
『し』いたけのバター炒め、『た』このカルパッチョ、『た』いの塩釜焼き、『す』イートポテト、『け』ールとアーモンドのサラダ、『て』ィラミス。
『シタ、タスケテ』
娘はずっと父に助けを求めていたのです。
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