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生活必需品ではないからこそ

「ここのテイクアウトがお得だよ」「あのお店もお弁当始まったよ!」そんなおいしい情報が、LINEの中で毎日飛び交っている。
普段は立ち飲みのみで子連れには縁遠い店の惣菜テイクアウトから、割烹のお値打ち弁当、子ども食堂への支援につながる店など、日を重ねるごとに情報は多角的になり、このごろは選ぶにも真剣勝負になりつつある。

「花のデリバリーを試してみたよ」というのも、地元の友人の声だ。
聞けば、7キロまでの自転車圏内なら宅配料なしで、玄関前に置き配してくれるらしい。

ときどきは花を買うよう心がけてはいたけれど、それでも不要不急かと言われるとちょっと悩ましいし、なにより近くの花屋は少しずつ営業を自粛している。開いている店も、あまり売れないのか花より鉢を増やしはじめたりしていた。
そんな矢先の、花のデリバリー。

夕方遅く玄関に置かれた花は、まるで贈り物みたいだった。紫のバラの人から受け取った気分(「ガラスの仮面」の主人公は正体不明のファンから花束を通して励まされている)をちょっぴり味わいながら、そうぞうよりも大きなみずみずしい束を両手に抱えて迎え入れる。

わたしがお願いしたのは、おまかせの花束とドウダンツツジ、それにハーブ鉢の詰め合わせ。
どれも1000円とは思えないボリュームで、特に花は、2000円と2種類あって迷ったけれど、うちの花瓶の少なさを思うとこれで正解だった。
ハーブはローズマリーやミント、バジルやシソに加えてミニトマトもあったので、世話を子どもたちにまかせ、観察日記もついでにお願いした。

部屋がパッと明るくなったのは、言うまでもない。家にいる時間が長いからこそ、潤いは大切だ。

花も、おいしいスイーツやお酒も、本も。今は積極的に買いに行くにははばかられるものかもしれない。けれど、ひとさじの楽しみは、家で過ごす時間が長引くにつれて軋(きし)みはじめた暮らしの車輪の潤滑油になる。

花はなくとも暮らしていける。でも花があれば、もっとご機嫌に暮らしていける。

ところで。
今に限らず、自分の胸に手を当てて、ささいな気持ちのさざ波を敏感に受け取ることは大切だと思う。ちょっぴり疲れていないだろうか、イライラしかけていないだろうか、寂しさを感じてはいないだろうか。

そんなときは、迷わず誰かの手を借りたり、大好きなもので自分を甘やかす。自分が何で機嫌よくなるかを知っておくことは大切だし、そうやって機嫌と調子をとることは、今だけでなく毎日の階段をリズムよくのぼりける秘訣かもしれない。言わば、自分の機嫌を保つ処方箋。

さて、花から潤いと元気をもらったわたしがこの先できることは。まずは、この店で花を買い続けることだろう。今年の母の日の花は、この店から贈ると決めている。

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