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みかんの匂いのする女

夫の実家は柑橘農家なので、贅沢なことに家にはいつも柑橘があふれている。伊予柑、紅まどんな、甘平――

コワーキングスペースに行くときは、あらかじめ皮を剥いて切り分けて持っていく。
そうしないと、勢いよく剥いた瞬間、柑橘の香りがブワッと広がってみんなが「ん?今、みかん剥いた?」と振り向くのが目に見えている。

今日は自宅仕事だったので、昼ごはんのあとに堂々と甘平を一口。
果汁がじゅわっと広がり、手にはしっかり柑橘の香りが残る。
そんな香りをまといながら、午後の予定へ向かうも、初対面の人にみかんの女と思われないか心配した。

柑橘が豊富にあると、つい「お裾分けしようかな」と思うのだけれど、相手のご実家が柑橘農家だったりすると「いや、うちもあるし……」となりそうで、なかなか配りづらい。(愛媛ならでは)
結局、家族でせっせと食べることになる。でも、毎日食べても飽きないのが柑橘のすごいところ。

私は人の言葉に影響されやすいので、みかんの皮って、ちょっといいなと思う。寒さや傷から果実を守りながら、中にはぎゅっと甘さが詰まっている。私もそんなふうに、大事なところをしなやかに包み込んで、ツラ厚く過ごせたらいいなと思う。
(近しい人からは十分厚いよといわれそうだが)



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