未来を望む! 新たな国際アートフェア「Tokyo Gendai」を訪ねて
フェア初日の7月7日は、日本や中国で毎年行われる伝統行事「七夕」である。会場中央では、そのイメージを表現に取り入れたという彫刻家・大平龍一のインスタレーション作品《The Circuit》が展示された。今回のアートフェアのために制作されたものという。たくさんの彫刻が立つ中に、レース場のような「サーキット」が敷かれている。伝統的な美意識や文化の多様性を問うコンセプトと、ダイナミックな展示方法が印象的だった。
アートの未来のあり方を感じる展示
Tokyo Gendaiは、初めての開催にあたって、次のようなコンセプトを打ち出している。
会場は、四つのカテゴリーに分けられていた。Tokyo Gendaiのウェブサイトによると以下の通りである。
Galleries:ギャラリーを代表する作家による、クオリティの高い展示
Hana 'Flower':新人または中堅のアーティストの作品を展示
Eda 'Branch':著名な、または歴史的に重要なアーティスト、もしくはテーマに基づいて構成された展示
Tane 'Seed':デジタルメディアを中心とした展(NFT 、アニメーション、映画、AR、VR等)
「Tane’Seed’」については米国の2つのギャラリーの出展にとどまっていたが、デジタルの世界で犬を飼うことができ、NFTアートへの変換も可能なエキソニモの作品などの展示があり、アートの未来のあり方を感じた。
現代社会の重要なテーマを探求するトークイベントも
アートフェアの役割を果たしつつ、トークプログラムも充実していた。美術家のほか、大林剛郎(コレクター、大林組取締役会長、⼤林財団理事⻑)・片岡真実(森美術館館長)・名和晃平(美術家)の3人によるダイアログや、蔵屋美香横浜美術館館長らによるセッションなど八つのアートトークを通して、今の美術界をめぐる状況を知る機会にもなったのではないか。多角的な視点からの考察にふれることにより、グローバルな問題とコンテンポラリーアートへの理解を深めつつ、現代社会に横たわる重要なテーマを探求していた。アートフェアは本来、作品売買のための場である。しかし、アートそのものが現代社会を映す媒体であることを鑑みると、こうした立体的な試みには大いに意義があるのではないかと思う。
文=王耀林
写真=小川敦生、王耀林