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里親オタオタ日記(12)

3人目の里子 最強女子Sちゃん

Y君のショートステイが終わってからしばらく何も無く静かな日々が続いた。
もう里親として声がかからないのかな…?と思った頃、児相から電話「13才中1の女の子を一時保護で預かってもらえませんか?」とのこと。
一時保護とは児相が虐待とか非行で警察に補導されたりした子を保護して一時保護所に預かり、その後、児童養護施設なり里親なり元の家に戻すかが決まるまでの保護期間のことで最長2ヶ月。あくまで一時保護なので学校とかはすぐ始まらない。落ち着き先が決まって、そこに転居届けを出して住所が変わって初めてその地域の学区の学校に通える。よく児相に保護されると学校にも行かせないみたいな文句を見たり聞いたりするが一時保護の間は無理なのである。そして一時保護の間は良くない友達との繋がりを切ったり虐待されてる子は居どころを知らせないため携帯やスマホは禁止でお金も児相が管理している。子供の安全を守るためなのだが子供からしたら児相にスマホも小遣いも取り上げられたと思うのだろう。
そして、Sちゃんについて。
児相さんが言うには「家出癖があってちょっと難しい子なんです。委託先が決まるまでの間でいいんですけど…」。
ちょっと難しい…なんだか嫌な予感がする…けど里親を始める時に「おたすけとしてやらせていただくので、どんな年齢でも、どんなご身上があってもお受けいたします」と宣言しているので断るという選択肢はない。
「わかりました。うちはお受けします。いまその子は保護所にいるのですか?」と聞くと「ありがとうございます。保護先決まったのでこれから捕まえに行ってきます。捕まえたらまた連絡します」とのこと。
これから捕まえる…てことは只今、絶賛家出中!ってことか。お~!まだ会ってもないうちから、なかなかなエピソードである。しばらくして「捕まえたので明日連れていきます」と連絡があった。
翌日、思ったよりも大人っぽい雰囲気の女子が来た。高校生ぽくも見えるのに手にポケモンの仲間のぬいぐるみを抱えて、ちぐはぐな雰囲気で玄関に立っていた。担当の児相さんからうちに来るまでの経緯を聞くと「親との仲がうまくいかない、特に父親と、それが元で家にいるのが嫌になってお友達の家を点々と過ごし不登校にもなってしまった。うちに預けたい最大の理由は彼女の家から遠いから、なるべく早めに保護先を決めますのでそれまでの間お願いします」。そうか、父親と仲が悪い…私も仲悪かった。私は家出する根性は無かったけど部活だバイトだと極力家にいないようにしていたなと思い出し。なんとなく因縁めいたものも感じて受け入れることにした。
さて、うちに来てまずはご飯。私「何が好き?」
Sちゃん「何でも食べますけど苦手なものがけっこうあるんです~」
私「何が苦手なの?」
Sちゃん「牛肉✕、豚肉✕、鶏肉ちょっとなら○、魚✕、野菜もダメなの多いんです~」
私「何食べて生きてきたの?」
とりあえず食べれそうなもので何か作って食べさせたが食べ終わってから「これも苦手だったんです~」とか言う。
はあ~前途多難…先が思いやられる。
次の日「洗濯物出しなよ」と言うと思ったより少ない洗濯物。これだけ?女の子なんだから他にもありそうなのに…よくよく聞いてみれば替えの下着やら服やらタオル類がほとんどない着た切りスズメ状態だと言う。それじゃ可哀想だと買ってあげたいのもやまやまだが一時保護では費用がそんなに出ない。ここで買い物したら赤字なので、うちの備蓄からタオルやらを出し下着類は私が買っておいた物を出したりした。
しかし何日で落ち着き先が決まるのやら最悪ありがちだが、うちでそのまま里子に措置されるもアリかも…と覚悟を決めた。
たった3人しか面倒見てないがそれでも思う。「思春期が始まった子たちは本当に難しい」。
この世に生まれてから今に至るまで「生まれてこなければよかった」と何回思ったか…そして思う度に心の中の穴が大きく深くなって思春期を迎える頃には大人なんか信じるもんかと心に高い高い城壁が出来上がっている。その城壁をに少しでも隙間を作れれば心の奥底にいる本来のその子に触れられるだろうが、それはなかなか難しそうだ。
さてSちゃんどうなることやら。

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