テキストラリー短編戯曲 『ハロー!フラワーワールド〜江古田異世界冒険譚〜』 裏話
こんにちは!
今回は、前回公開したテキストラリー短編戯曲『ハロー!フラワーワールド〜江古田異世界冒険譚〜』の裏話をします。
前回の記事はこちらから。
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この作品は、大学の実習発表として展示企画があり、そのために制作したものです。
展示内容はテキストラリーで、先月一週間ほどの間大学構内にて展示されました。
テキストラリーがどういうものかというと、エピソードが印刷された紙が構内にどこかにバラバラに置かれていて、全部集めると一つの冊子になり物語の全編を読むことができる、というものです。
これまでは、上演を見据えてお話を書いたり、戯曲作品として完結させるような作品を制作してきましたが、今回は上演とも違う、イベント用の作品の制作作業が初めてだったので、新鮮で楽しかったです。
どうせなら面白いものを、と思って、今作では特にこだわったというポイントがいくつかあります。
まず一つ目が、読む順番です。
普通、物語は1ページ目から2ページ目、3ページ目、4ページ目・・・とページ番号順に読んでいきますが、今回はA4の紙を折り込んでA5サイズの冊子を作るのを完成形にしたかったので、一枚の紙を見開きにするとページ数が順番通りにならずに飛んでしまいます。
つまり、1ページ目の隣は14ページ目、2ページ目の隣は13ページ目・・・と、ページ番号がバラバラになってしまうのです。
そこで、あえて印刷の仕様はそのままにして、読む人はエピソードを時系列やページ番号とは違う順番で読む形式にしました。
別に投げやりになったわけでも面倒くさくなったわけでもありません。
今作の大きなテーマとしてファンタジーを掲げていたので、王道RPGっぽいエピソードの連なりのような物語形式なら、あまり時系列や順番を重要視せずにお話が書けそうだな、と思ったのです。
ちゃんと計算の内なのです。
これでも結構頑張って色々考えながらやってるんですよ。
さて、ぼやきはいい加減にして、参加者の方はテキストと呼ばれる紙を最初に手に取った時、始まりのエピソードと終わりのエピソードを読むことになります。
その次は序盤と終盤、そして中盤と、ちょっと変わった読み進め方をしていくのです。
小説の最初と最後を読んで、その後どんどん真ん中に向かって読み進めていく、というイメージです。
ネタバレ断固拒否ガチ勢の私からするとあり得ない読み方ですが、この発想には元があります。
私の母は韓国ドラマが好きなのですが、この先の展開を予想しながら見るのがストレスなので面白そうなドラマを見つけたらまず初めに最終回から見るという、ネタバレ大賛成勢なのです。
なので、ものすごい熱量で盛り上がっている白熱のシーンを真剣に見ている母に、「これどういう場面?」と尋ねると「全然わからない」と返ってくることもしばしばあります。
たしかにタイトル・サムネ詐欺もあるけども。
主要人物とか推しキャラが想定外に死んだりフェードアウトしたら落ち込むし引きずるけども。
しかしどうしてそんなドラマの見方をするのか、果たして面白いのか、未だに納得はできていませんが、結末がどうなるのか早く知りたい、という気持ちは理解できます。
母のように先に終わりを知りたいという意見を持っている人もいるだろう、と考え、今作は終わりが先にくるような仕様にしました。
ネタバレ滅亡派同志の皆さん、この度は誠に申し訳ありませんでした。
でも、基本的一般的な作品は結末のネタバレをしないようにできていますし、今回限りということでどうか寛大なお気持ちで受け止めてくださると幸いです。
二つ目のポイントは、ちょっと先にネタバレしちゃいましたが、ファンタジー世界です。
今回の展示企画では新入生をターゲットにして、構内の色んなところに行くきっかけを作ろう、という狙いがありました。
なので、私が偏見で全人類にとっつきやすいと思っている王道ファンタジー、それもRPGっぽい明るく軽い楽しいお話にして、大学生になったばかりも新入生も参加しやすくなるようにしました。
私はこれまでゲームなどでちょっとかじる程度にしかファンタジー作品や世界観に触れてこなかったので、これを機にファンタジー世界についても色々と勉強しました。
モンスターや種族などの解像度が上がって、書いていてどんどん楽しくなっていったのが印象的でした。
元々ファンタジー系のお話を書いてみたい気持ちはあったので、とてもいい経験になりました。
私が新入生だった頃を思い返せば、大学という新しい環境や上京したての目に映る東京なんてほぼ異世界でした。
周囲の人みんながモンスターに見えたと言っても過言ではないかもしれません。
まだまだ学校に来る度ドキドキしたり緊張したり、不慣れなことがたくさんあるだろうこの時期に、少しでも学校に慣れるような楽しいことができたらいいな、という思いを込めて、このテキストラリーを制作しました。
主人公の一人であることりくんが異世界に迷い込んでしまった現代人なのも、新しい環境に飛び込んで来た新入生の方々と重なるところがあるな、と思ったからです。
アンケートを取ってないので、実際にどれくらいの新入生が参加してくれたのかはわかりませんが、楽しんでもらえたらいいな、と思います。
もちろん、上級生が遊んでも楽しい作品に出来上がったと思っています。
こうして書き上げた物語ですが、一番頑張ったことは文字数の管理でも時系列の整理でもありません。
印刷の設定です。
A4用紙に横書き裏表見開き小冊子設定にしてプリントするのは大変だと予想はしていましたが、ここまでとは思いませんでした。
何度上書き保存しても元に戻るWordの書式設定、ネットで調べてもOffice?Word?がどのバージョンか分からないので解説文がチンプンカンプン、A4と思っていたデータがA5で保存されておりプチパニック、データの受信を拒否する気まぐれな学校のPC、ページの左右の組み合わせが永遠に合わない、何度やってもA3でしか印刷できない、印刷時にのみ現れる摩訶不思議な空白ページ等々、本当にたくさんの困難にぶち当たりました。
情けなくもありとあらゆる人の力をお借りしまくって、最終的に何とか無事印刷できました。
協力してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
上手くいくまで結局1000枚近いコピー用紙を無駄に消費してしまい申し訳ありませんでしたが、私には他にどうすることもできませんでした。
不可抗力です。
お願いですから何かマニュアル置いておくとかしてください。
大きいコピー機難しいよ本当に。
企画から制作作業まで、今作は何から何までいつもと違う新鮮な体験でした。
一つ前に書いたお話がかなり暗めだったので、その反動もあって明るい話を書こう!書きたい!となったのですが、意欲と企画が上手いこと合致してほぼストレスフリーで書くことができました。
こんなこと後にも先にもないと思います。
そうしたらバランスを取るかのように全く印刷設定できない地獄が後から襲って来たわけですが。
とても楽しく書いたというのは本当ですが、ただ私のやりたいことをやるというのではなくて、物語として面白くするにはどうしたらいいかと頭を使ったり、実際に参加者の人が読む時を想像したり、お話に込めるメッセージやテーマのようなものを考えてそれをファンタジーの世界観をすり合わせたりなど、やることや目標を一つ一つ達成していく過程は、まさにゲームのような感覚でした。
シンプルな企画と設定だからこそ自由にできる範囲も増えて、伸び伸びと制作することができたのだと感じています。
全く新しいことをやっているというワクワク感に加えて、そうやって明確な目標や意図の下で作れたことも、楽しいと思えた理由の一つだと思います。
でも作者の私が楽しくてもしょうがないので、何よりも読んでくれた方に楽しく感じて欲しいと思っています。
前回の記事で公開した作品はデータ版なので、実際に展示されたものとは違う印象になってしまうと思いますが、是非たくさんの方に読んでいただきたいな、と思います。
よろしければご一読ください。
ではまた次回!