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戯曲『王様のブランチ』 裏話






こんにちは!

今回は、戯曲『王様のブランチ』の裏話をしようと思います。


作品はこちらから。
↓  ↓  ↓


この作品は、大学の実習で課題として制作した作品です。

『王様のブランチ』では、今までにやったことのない新しいことに挑戦しました。
その一つが、具体的なテーマを決めて書くことです。
今作は大きなテーマとして、「料理」「パンデミック」「おとぎ話」の3つが掲げられています。

元々上演を目指して実習で制作していた作品だったので、
どんな上演をやりたいか、という話し合いから、作品作りがスタートしました。
普段は全くの思いつきからお話を書き始めることが多いので、
こうやって具体的なイメージから書き進めていくのはとても新鮮な経験でした。

話し合いの中で、舞台上で実際に料理を作ったら面白いのでは?という意見が出て、是非やってみようということになりました。
なので、まず第一に「料理」が重要なモチーフになる物語、ということで構想をしました。

頭を捻り、うわ言を呟き、日々悶々としながらアイデアが降ってくるのを待っている期間、
制作に苦悩する一方で、当時の私にはとっておきの楽しみがありました。
それが、バイオハザードのゲーム実況です。

3年前、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で高校が休校になった私は、家でひたすらYouTubeを見てのんびり過ごす日々を送っていました。
その時に出会った新しい趣味が、ゲーム実況でした。
今でも好きでよく見ているのですが、ちょうど制作期間だった今年の4、5月は最新作のプレイ動画がたくさん上がっている時期でした。
寄生虫の感染者たちが次々に撃ち抜かれていくのを見てストレスを発散している最中、ふと、私の頭にとあるひらめきが浮かびました。
それは、「ゾンビになった仲間を殺すか殺さないかみたいな感じで、
食材になった仲間を食べるか食べないかみたいな議論があったら面白いのではないか?」
という思いつきです。

こうやって文字で書いてみると、何ともアホくさいというか、
成人にもなってゾンビゲーム見ていて考えつくことがこれか、という脱力感に襲われるのですが、
ともかくこの設定で構想を練ることにしました。

作家を目指してお話を書いていると、すごい!と言ってくれる方もたまにいるのですが、
かっこいい作家さんはたくさんいるけども、少なくとも私の作劇法というのはこんな感じです。
ほぼ寝言みたいなものです。
毎日藁をもすがる思いでやっています。
頑張ります。

そんなこんなで、バイオハザードから得た発想を元に、
人が豚に変容してしまうウイルスの大感染が起きた世界、という設定が生まれました。
それと同時に、ゲームのようなデンジャラスな世界だと議論そのものに集中できなくなる上、見ていてリラックスできないかもしれない、と考え、
物語の雰囲気や世界観をメルヘンな感じにしました。
バイオハザードの最新作も舞台がヨーロッパだったし、お城が出てくるし、引っ張られた部分はあります。
正直に白状いたします。
カプコンさん、本当にありがとうございます。心から感謝いたします。大好きです。

という経緯で、3大テーマ「料理」「パンデミック」「おとぎ話」が出揃い、『王様のブランチ』という物語の骨組みが出来上がりました。


「パンデミック」というワードから「バイオハザード」を連想した方は極少数、もしくは生粋のバイオオタクの民ではないかと思いますが、
このテーマには、「パンデミック」というワードからすぐに想起されるような近年の新型コロナウイルスによるパンデミックにかけて、という意味合いもあります。


テーマとはまた異なりますが、登場する2人の登場人物の背景や心情、関係性には、私がコロナ禍で実際に経験したことを反映させています。

既に少し触れたように、新型コロナウイルスの感染が拡大して、緊急事態宣言が発令されて、高校が休校になっている間、私は何一つ不自由ない生活を送っていました。
元々友達との関係も希薄で、完全なインドア派だったということも大いに関係していますが、一番大きな要因は部活でした。
私は高校の時部活動をしていましたが、2年生の夏以降、同部員たちとの関係が上手くいっておらず、なかなか大変な思いをしていました。
辞める勇気もなく、辛抱するにも限界を感じていた頃、
帰りのHR中窓の外を眺めながら、隕石が降ってこないかなとか、謎のウイルスが蔓延して自分の部活だけ廃部にならないかなとか、
毎日そういう妄想をしながらとぼとぼ部室に向かっていました。
そして2020年冬、妄想が現実になりました。
ニュースで聞いていただけの謎のウイルスは徐々に身に近い存在になり出し、部活は中止、あっという間に休校、あれよあれよという間に総体は開催中止になってしまいました。
全国の学生が落胆したその報せを聞いて、私は、
親に頼んでケーキを食べました。
私は本当に、心からとても幸せな気持ちでいました。
大嫌いだった部活にどうにか報いたような気がしていました。
そうやって安らかな休校期間を過ごし、久々に学校に行った時、
同級生たちの暗い雰囲気にびっくりしました。
そこで初めてパンデミックがもたらしたものは世の中にとって嘆かわしいものだ、という認識に気がつきました。
当時は私も幼かったので、自分の喜ぶことに対して悲しんでいる人もいる、という可能性について考えることがありませんでした。
自分の考えの至らなさを反省するのと同時に、
自分の感じた思いが世間では少数派であることに少しばかりショックを受けました。
今にして思えば、自分は自分、他人は他人なのだから何もショックを受けるようなことはないとは思いますが、
色々なことを身をもって学んだ今だから言えることなのかな、とも思います。

このエピソードが、対立して交わらない2つの意見の象徴として、今作の愉快な2人の登場人物の性格に反映されました。

前述したように、このお話は元々コロナ禍における何かをテーマにして作ったものではありません。
あくまで、モチーフとしてコロナ禍を通しての経験が登場します。
新型コロナウイルスの存在が物語の中核に無い物語を書けるのは、
少しずつパンデミック前の日常が戻り始めている今だからこそ、という気がしています。
私の場合だと、一番大変だった2020年上半期あたりの記憶というものが、近すぎず遠すぎず、熱さは感じるけど触れないほどでは無い、それくらいの温度になったと思います。
実際、これまでコロナ禍当時の率直な感想や気持ちを語ったりすることにかなり後ろめたさを感じていたのですが、
最近はすっかり笑い話に変えることができてきたと感じます。
こうしたちょっとした寂しさや悲しさを笑える明るい話として書いて伝えることで、
過去の受け取り方を変えていけることが創作の醍醐味だと思っています。
なので、テーマを決め設定を決め、登場人物の背景やモチーフにこのエピソードを選んだ時から、
この作品はとびきり笑えるものに仕上げようと決めていました。
自分の中で完全に記憶や体験が冷めきって、結論や答えが出てしまう前にこのお話を書くことができて、よかったと思っています。



今回はリーディング公演という初めての上演形態に向けて、本格的な2人芝居の会話劇を書いてみようと思い、
今作の大元となるスタイルや形式を固めながら書いていきました。
テーマと構想による設定で組んだ骨組みに、エピソードや人物造形などで肉付けをしていき、最後に形式をガッツリ決めて体裁を整える、というイメージです。
尺にしておよそ90分ほどあるのですが、登場人物が2人しかいないので1人あたりのセリフ量がえげつない上、
開幕から終幕までお互いに喋り倒す、えらくハイテンションな物語が出来上がりました。
序盤はかなり苦戦しましたが、中盤以降は2人共勝手に喋り出してくれる感覚があり、登場人物にかなり救われた作品でもあります。
ただし、喋りすぎてひたすら尺が伸びていき、話の筋に誘導するのが大変な、厄介なキャラクターでもありました。
もしこの戯曲に私が登場していたら、2人の間に立って終始おろおろして何もしない人だったと思います。
そういったヒヤヒヤする感覚も非常にスリリングで、書いていて抜群に楽しい作品でした。
書き上げた後の疲労感も抜群でしたが。


こうして、全力で面白いことを追求して作ったお話ですので、
何これ下らない、なんて言いながら軽い気持ちで楽しんでもらえたらとても嬉しいです。


ちょっと長めのお話ではありますが、
是非お時間のある時にゆっくり作品をご覧いただくか、
『バイオハザード RE:4』をプレイしてください。

よろしくお願いします。

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タマ
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