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タバコと居酒屋と場違い

近所の気になってた居酒屋に一人で入ってみた。
タバコとストーブの匂いで祖父の家を思い出した。だからどこか懐かしさを感じて、怯えることなく店に入ることができた自分に驚いた。

先に飲んでいたお客さんはお店の方と仲が良いみたいで人は少ないけれど賑やかなお店だった。

生ビールといくつか気になるつまみを頼んで店内を見回す。ボトルがたくさん並んでいて、ストーブの上にはおでんの入った鍋が暖まっている。

ビールとお通しのお味噌汁が出された。
お味噌汁は優しい味に、黒胡椒が効いていた。黒胡椒をお味噌汁に入れたことはなかったが、とても良い風味で美味しかった。

お味噌汁とビールを飲んでいると続々とお客さんがやってくる。店員さんと先にいたお客さんは顔見知りのようで、口々に挨拶をする。

もしかしたら場違いかもしれないという不安を抱えていると料理が届く。

一品目は雲仙ハムの焼いたやつ。


雲仙ハムは私の好物で、味が濃くて肉々しいから焼いただけでも死ぬほど美味い。
マヨネーズと付け合わせの野菜が美味しくてビールが進んだ。

カウンターの端っこで飲んでいる自分と盛り上がるテーブルの客、他のカウンターの客は店員さんと盛り上がっている。
こういう光景を傍から見るのも面白い。自分にはコミュニケーション力が無いから盗み聞きして雰囲気を楽しむ。

二品目は若鶏のからあげ。

居酒屋の定番だろう。これが届いてから気付いたが、すこし量が多い。既に二人前くらい食べている。どれくらい多いですかと聞けばよかった。
唐揚げは柔らかくてジューシーでとても美味しかった。たまに期待外れの居酒屋もあるが、ここはかなり良い。

お客さんが増えて、タバコの匂いは強くなる。先日、後輩からタバコを1本頂戴して人生初の喫煙をしたが、想像以上に拒否反応がなくて驚いた。
その日は飲みすぎて7割くらい記憶がないから、タバコもあまり覚えてないのかもしれないが、受動喫煙の匂いで少し吸いたい気持ちになってしまう。人生経験のつもりが、喫煙に対するハードルが下がってしまった。
ただ、やはりお酒のほうが好きだから、タバコを吸わず酒を飲んで、結局トントンみたいな感じにしたい。煙草を吸うことで酒を控えるくらいなら吸わない。受動喫煙で十分。

なんて思っていると三品目を頂いた。
三品目はかきギョーザ。

牡蠣を餃子の皮で包み、醤油で味付けしたシンプルな料理。牡蠣には目がないので当然注文してしまった。
生ビール3杯目を頼んだところで、初めて店員さんに話しかけられる。
「ビールばっかりですね」
「ビール好きなんすよ〜」
精一杯の笑顔で答えた。エヴァのワンシーンじゃないが、こういうときどんな顔したらいいか分からないの。
焼き牡蠣は祖父の家でも出された記憶がある。タバコとストーブと牡蠣の香りでまた岐阜の祖父母を思い出す。年始に認知症が進んだ祖父を見て一瞬不安になった。しかし、思ったより周りがにこやかに接していたので重くはとらえなかった。きっと家族のことを忘れても、それを笑い飛ばして根気強く自己紹介し続けるのかもしれない。

お腹いっぱいになったし、財布も心配だったのでここでチェック。会計は4000円。予想通りくらい。

引っ越しまで残り2カ月を切って初めて最寄りの居酒屋へ行った。かなり親しみやすいお店だったのでもっと早くから通って行きつけにすればよかった。

行きつけの居酒屋をつくる、という引っ越して社会人になってからの新しい目標ができた。


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