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ウマ娘にオタクとしての魂を弄ばれている話


これはある種の、お気持ち文書である。


「ウマ娘プリティーダービー」
ご存知の方も多いのではないかと思います。
実在の競走馬を擬人化・美少女化したキャラクター達が登場するメディアミックス作品です。

私がその名前を知ったのは2018年に放映されたテレビアニメ一期が放映されていた頃でしたが、当時はさほど、というよりもほとんど興味を持っていませんでした。

と言うのも、私は競馬を含む『ギャンブル』というものにあまり良い印象を持っていません。

自衛官時代、給料やボーナスをパチンコに注ぎ込む同僚や、競馬→居酒屋→ソープランドのウルトラスーパー退廃コンボをキメる後輩を見ていた事もありますが、何より


手を出したら絶対ハマるから近づかない


という自衛意識がやがて嫌悪感へ変わっていったというのが正確なところでしょう。
余談ですが、アニメや特撮のパチスロ化も嫌いで、特に「バジリスクタイム」は個人的地雷ワードの最上位クラスに位置します。
バジリスクも陰陽座も青春の1ページなんですよ……


さて、閑話休題。
そんな訳で当初は全く興味を持っていなかったウマ娘。
風向きが変わったのはこの春、満を辞してアプリゲームがリリースされた事でした。

初めはこれまで同様興味を持てなかったのですが、既にプレイした人達の狂いっぷりに、ほんの少しだけ興味を持ち始めます。
オタクというのは因果なもので、コンテンツに狂ってる人々を見かけると、まるで誘蛾灯に群がる哀れな蛾のように引き寄せられてしまうのです。

初めに興味を惹いたのはやはり、ゴールドシップでした。

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長身でスタイル抜群、美しい銀髪をなびかせる上品な顔立ち。
そして、不条理不合理不可思議不思議を煮詰めて濾したトンチキ極まるゴルシワールド。
そしてそれを再解釈した二次創作イラストに強い興味を持ちました。そう、持ってしまったのです。

それまで馬といえば、ディープインパクト、トウカイテイオー、オグリキャップ、ハルウララ、ハイセイコー。赤兎馬、的驢馬、ミドリマキバオーにドーカイテイオーくらいしか知らなかった私。

しかし目の前に広がるそれは、美少女達がキャッキャオラオラとした有様で躍動する楽しげな空間。
人生の半分以上を萌え豚として過ごした身としては、やはり気になる気になっちゃう。


と言うわけで私はついに、あのギャンブル嫌いだった魂をそっとしまって、アプリをダウンロードしてしまうのでした…………

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※思えばドーカイテイオーってオカマのゴルシみたいな奴だったな。


さて、そんな訳で育成を開始した私こと西住。
最初の育成を誰にするか頭を抱えます。

セオリー通りであれば、育成の基本を学びやすくクリアしやすいサクラバクシンオーを選択するところですが、ゲームを始めるにあたり意図的に攻略情報を避け、極力何も知らない状態を作ってから始めていたので、そんなセオリー知るよしもありません。


お?このゴールドシップ様を呼んだかぁ
おーゴールドシップってこういう声なのか。でも君は最後の楽しみに取っておこう。

ダイワスカーレット、いくわよ!
あー、この娘Twitterでよく見た娘だなー。
いやホントふた昔前のヒロインっぽいな……

おう!ウォッカだ!
へぇ、こういうヤンチャ系もいるんだー
※後にCVが大橋彩香さんと知ってぶったまげる。

ハルウララ!がんばりまーす!
あーハルウララってこういう感じなんだ〜。

はい!サクラバクシンオーです!!
うるせぇな、コイツな。


さてさて、記念すべき初育成をどうするか悩んでいた私は、ついに、そのキャラクターのアイコンをタップしてしまいます。

「はい♪スーパークリークですよ〜♪」




「はい♪スーパークリークですよ〜♪」






はい♪スーパークリークですよ〜♪


…………ふ……ふーん………こういう娘もいるよね、こういうコンテンツだもんね。

私の目に飛び込んで来たのは、THEおっとり巨乳のお姉さんといった風貌の、優しそうな少女でした。

何を隠そうこの私、お姉さんキャラが好きなタイプでして、古くは「ラブひな」の乙姫むつみや「ひだまりスケッチ」のヒロさん等、気がつけばその手のキャラクターを好きになっている事が多かったのです。


が、しかし、しかしです。
それ故に私は知っています。
この手のキャラ、特に女の子がたくさん出てくるような作品にいる『おっとりお姉さんキャラ』が必ずしも好みとは限らないと。

極論を言ってしまえば、この手のキャラはおっぱいを大きくしてタレ目にして頬に手を当てながら「あらあら」と言わせておけば成り立ちます。

それ故に「おっとりお姉さん」ポジションというのは粗製濫造され易く、美少女がたくさん出てくる作品には高確率で出てくる割に、お話の中核を担ったり1番人気になる事はほぼありません。

また、没個性を避けるために安直な設定が付与されたり、主に二次創作においては「腹黒」属性が与えられるなど、「おっとりお姉さん」キャラ界隈にはベトコン並みの凶悪トラップが満載なのです。
※おっとりお姉さんキャラが尻軽だったら興奮するという個人的な性癖については、ここでは横に置いておきます。


そして目の前の少女、スーパークリークは先に挙げた「誰でもつくれる!おっとりお姉さんキャラテンプレート」的要素を全て持っています。


頭をよぎるのは「ランボー 最後の戦場」のワンシーン。
悪のショタコンクソゲス将軍が、捕らえたカレン族捕虜を地雷の埋設されている田んぼを歩かせて遊んでいるあの場面です。
この将軍が私の野生や欲望、カレン族の捕虜が私の理性に重なります。

「いや、こんなん無理ですわ。見えてる地雷ですやん」という捕虜。
「行け、行かねば射殺する」
と股ぐらをいきり立たせて死を強要する将軍。


そして私の心の捕虜は、儚い現世に絶望しつつ、「次へ」をタップしてしまいます。


また、ため息を漏らす時が来るのかと諦観を滲ませながら……








おぎゃあ






西住悠玖32歳。
スーパークリークにドハマり。

正直な話、途中までは見た目も性格もまさにテンプレ通りの感じで全くハマる感じはしませんでした。
それどころかやたらトレーナー(プレイヤー)を甘やかそうとする姿が元カノ(例えるならヒシアケボノをマヤノトップガンサイズに縮め、心の中にスーパークリークとヒシアマゾンを秘めたぴにゃこら太のような人)と被ってしまい、ちょっと鬱になりかける始末。

まあこんなもんかと思いながら適当に育成を流して行きますが、すみれステークスを終えた辺りで様子が変わります。
原因不明の不調により調子を崩すスーパークリーク。目標にしていたクラシック三冠路線を諦め、一人声をあげて涙を流す彼女を見て、ほんの少しだけ心が動いたのです。

彼女の不調の原因はその強すぎる責任感。
「私が頑張らなきゃ」という思いが重圧となり、目に見えない形で彼女の足に絡みついていました。
しかしトレーナーは粘り強く彼女を支え続け、彼女もまた、自分達だけの強さ、すなわち「絆の強さ」を自覚します。

かくして彼女は立ち上がり、運命の菊花賞のゲートへ立つ………



 \ピコンッ/
『4位』



ダメでした。

訳もわからず育成していたせいか、はたまた時の運か。無情にも私のスーパークリークは、栄冠を手にしないまま目標未達成でエンディングを迎えるのでした……


その時私の胸に謎の炎が燃え上がります。

「ごめん……!ごめんな……クリーク…………!俺が、俺が必ず一等賞にしてやるかなっ……!」

長らく忘れていた『推し』という感情を思い出した瞬間、踊る赤ちゃん人間と化した三十路男性は、ズブズブとその深い沼地へと駆け出して行ったのです。

以来私は彼女に頂点を掴ませるべくウマ娘達の育成に邁進、いく先々で新たな推しに出逢いながらもスーパークリーク最優先で育成を進めて行きます。

そして遂に、育成目標を全て達成し、URAファイナルズでの優勝を勝ち取った瞬間、私は高らかに叫ぶのでした。




ママァーーーーーーーーーーーーー!!!!!!




それはフレディより強く、スネ夫より切実な、本気の雄叫びだったのです。



しかし振り返ってみれば、スーパークリークというキャラクター自体、さほど珍しいキャラクターではありません。
基本的には先ほど言ったテンプレート通りのキャラ造形ですし、彼女特有の個性と言えば他人を甘やかしたい欲求が強すぎてトレーナーに『でちゅね遊び』なるものをおねだりするくらいにとどまります。とどまります?

しかしながらウマ娘という存在は、レース外の日常ではどんなにおっとりしていても、どんなにおバカな事をしていても、レースとなれば闘争心を剥き出しにして走ります。

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それは彼女とて例外では無く、レース中の真剣な眼差しからはとても普段の姿を想像出来ません。


それ故に私は、彼女を応援したくてたまらなかったのでしょう。


例えば彼女が、レース中もニコニコしていたらきっと、私は彼女を『ネタキャラ枠』として笑っていたと思います。

まして彼女が走る理由はウマ娘としての本能だけで無く、「自分が勝つ事でトレーナーの実力を証明する」というもの。
誰かの為に頑張る彼女らしいとも言えます。

これは実体験を基にした持論なのですが「誰かの為」と「誰かのせい」に違いはさほどありません。
その違いはほとんど自己満足の域を出ないのです。

彼女が「トレーナーの為に」と走り続ける限りそれは私のせいであり、そして彼女が敗北する度にそれも私のせいであります。
だから私は足りない知恵と雀の涙ほどの課金を用いて彼女を勝たせようと努力します。
それこそが彼女とトレーナーの「絆」の力なのです。

絆(きずな、きづな)は、本来は、犬・馬・鷹などの家畜を、通りがかりの立木につないでおくための綱。しがらみ、呪縛、束縛の意味に使われていた。
           〜Wikipedia「絆」より引用〜

こうして見ると彼女が「絆の強さ」を口にしていた事が皮肉に見えます。

果たしてその絆で繋がれたのは私でしょうか、彼女でしょうか、それはきっと彼女を育成した事のある人しかわかり得ません。

少なくとも私は彼女のために、今日もウマを走らせ続けています。




現在開催中のイベント「ジェミニ杯」
私のチームの勝ち頭は、彼女と寮で同室のナリタタイシン。
微課金でゲーム下手の私はオープンリーグへ出場しており、育成ランク的に出走できるスーパークリークはあまり強く無い為、メンバーにも入っていません。

しかし彼女はタイシン達の闘いを応援する私の隣に立っています。


まるで、我が子の運動会に駆けつけた父兄のように。


                    おぎゃあ

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