ゆるも #白4企画応募(3350字)
ちょっと、へんてこなはなしをしましょうか。
あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんはチョーナイカイのくさかりボランティアに。おばあさんはコインランドリーに行きました。最近おうちのセンタクキのチョーシがわるいのです。
「おばあさん、ぼくも手伝うよ」
「いつもありがとうね。モモタロウ」
モモタロウとよばれたコドモは、モモの実のようにまあるくて、かわいい子でした。
モモタロウには、おかあさんがいません。おとうさんも、いません。
だけどしあわせでした。おじいさんとおばあさんがあいしてくれるからです。
「よいしょ。よいしょ。」ふたりでセンタクモノを運んでいると、キンキューソクホウが入りました。街中に大きな音が鳴りひびきます。
『MOMO-3564がオニのシュツゲンをカクニンしました。ジュウミンはいますぐ近くのタテモノの中にかくれること』
ここはオニのいるセカイ。ときどきこわいオニが街にきて、わるさをするのです。
モモタロウとおばあさんは、あわてて家の中にかけこみます。おじいさんは、ケガをしてかえってきました。
「はしっていたら、もっていたカマでザクッとやっちまった」
「さいきんオニが多いから、おちおち外にでれやしないねぇ」
おばあさんがおじいさんの手当てをします。
そのようすをしんぱいしながらみていたモモタロウは、言いました。
「ボクがオニをタイジしてくるよ。そうしたらみんな安心してくらせるでしょう?」
「なんとりっぱなこころざし!さすがワシらのモモタロウ!」
おじいさんとおばあさんは、さっそく旅じたくをはじめます。こうしてモモタロウは、キビダンゴをもってオニタイジへと出発したのでした。
🍑
オニガシマをめざして歩いていると、サルに声をかけられました。
「おまえさん、モモタロウだろう?わしにはわかる」
「あなたは?」
「先々代のモモタロウにオトモした、サルだ」
「サルってながいきなんだね」
「まあな。ちなみにオランウータンは、60年くらい生きる」
「へぇえ、すごい」
モモタロウはおもわず感心します。
「もしよかったら、ナカマになりませんか」
「キビダンゴはくれるんだろうな?」
サルがニヤリとわらいました。
モモタロウとサルが歩いていると、ネコに声をかけられました。
「あなた、モモタロウでしょう?わたし、オニタイジにずっとキョーミがあったの」
「そうなんだ」
「まえにオニタイジに行ったイヌがやたら自慢してきてウザかったのよね。年寄りのくせにまわりにチヤホヤされてるし正直ネタマシイ」
「いきなり辛辣。」「耳がイタイ。」
モモタロウとサルは率直ないけんをのべました。
「イヌがオトモになれるなら、ネコがなってもいいじゃない」
「わかった。いいよ。」
ネコはやったあ!とヨロコビました。
モモタロウとサルとネコが歩いていると、シマエナガ(しろくてちいさい鳥)に声をかけられました。
「たのしそうな御一行ですね。ぼくもナカマにしてください」
「シマエナガってたたかえるの?ちいさすぎない?」
とネコが言うと、シマエナガがふわふわのからだをふるわせながらハンロンします。
「シマエナガのブキは、かわいさですから。」
たしかに、シマエナガはかわいい。かわいいは絶対的な正義なのです。
「ネコがオトモになれるなら、シマエナガがなってもいいじゃない」
「わかった。いいよ。」
「いいんだ」「いいのか?」ネコとサルが口々に言います。
シマエナガはやったあ!とヨロコビました。
🍑
へんてこなモモタロウ一行は、オニガシマをめざして進みます。
けれども、オニどころかクマの子いっぴきおそってきません。というか、だれもいません。
「ふむ、おかしいな。昔はオニがウジャウジャいたんだが……」
サルがそんなことをはなしていると、うしろから「おい」という声がきこえました。
ふり向くと、あかいオニがたっています。やせっぽっちなオニでした。とつぜんのオニとのそうぐうに、モモタロウ一行が息をのむと
「えっ、サルとネコとシマエナガってどういう関係性?」
オニがおどろいた声をあげました。
「いつのまにかこうなっていたんだよ」
モモタロウがれいせいにへんじをします。
「うーん。今回のモモタロウは、ずいぶんかわいらしいんだな」
「今回って?」
「ああ。はなしが長くなりそうだから、オレの家においで。オチャくらいなら出すよ」
モモタロウがコクリとうなずくと、
「オニの出すオチャなんて飲みにいって大丈夫なの?」
「ワナかもしれんぞ」
ネコとサルがヒソヒソ声で言いました。
シマエナガは、かわいく首をかしげています。
「わからない。でも、オニのはなしをきいてみたいんだ」
オニガシマにつくと、そこはシーンとしずまりかえっていました。やっぱり、だれもいません。
モモタロウがふしぎにおもいながら
「つまらないものですが……」
と言ってキビダンゴを手渡すと、オニは「わはは!」とわらいました。
「キミはロボットなのにずいぶんニンゲンくさいんだな」
「えっ、ボクってロボットなの?」
「えっ」「えっ」「えっ」
サル、ネコ、シマエナガもおどろきのひょうじょうをうかべます。
「あっ、もしかして言ったらダメなやつだった?」
「いや、ダメじゃないけど……。こころのじゅんびができてなかった」
「なんかごめん。」
モモタロウはなんとなく、じぶんがニンゲンではない気がしていました。でも、ふつうのコドモとして生きたくて、見て見ぬフリをしてきたのです。
「オニはニンゲンより長生きで、ちからもつよい。だから、ニンゲンはオニがおそろしいんだろうな。何度もキミみたいなロボットがやってきて、オレたちをたおそうとしてきたよ」
オニがはなしはじめます。かみしめるように、ゆっくりと。
「だけど、もうホロビる。キミが何もしなくてもオニはしぬんだよ」
「どうして?」
「キミのまえにきたモモタロウが、ビョーゲンキンをまいたんだ。だから、みんなビョーキでしんだ。オニガシマのオニは、もうオレひとりだけだ」
「モモタロウがそんなことをしていたなんて」
「ひどい!」
サルとネコが声をあげました。
シマエナガもふるふるカラダをふるわせています。
「じゃあ、どうしてあんなにたくさんキンキューソクホウが流れるの?」
「それは、オレがさみしくて、どうしようもなくなるときがあって……。だれかとはなしたくて、街のちかくまで行ってしまうんだ。ニンゲンはみんなかくれてしまうから、いみないけどね」
「どうして?どうして、オニはビョーキをなおそうとしなかったの?」
「オレたちオニは昔、ニンゲンにひどいことをしていたみたいだから……」
オニはとおくを見つめ、ふうっといきをつきました。
モモタロウたちは、オニのことばをまちます。
「こんなにこじれてしまっては、もうしかたがないんだよ。ニンゲンとのたたかいをおわらせる。ずうっとまえに、オニのみんなで決めたことなんだ」
モモタロウは、どうしたらいいかわからなくなりました。
モモタロウの目のまえにいるオニは、ニンゲンとおなじように、ヘイワをのぞんでいるようにみえました。
「ぼく……ビョーキをなおすクスリがないか、おじいさんとおばあさんにきいてくる」
「ムダだよ。オニがしねばニンゲンは万々歳だからね。クスリなんて、さいしょからないよ」
そんなことより。と、オニがモモタロウをみつめます。
「こんなに長くオレのはなしを聞いてくれたのは、キミがはじめて。だから、オレはうれしいんだ」
そう言って、オニは にっこりわらいました。
「オレみたいなオニがいたことを、キミにおぼえていてほしい」
(おぼえていてほしい……)
オニの言ったことをハンスウしながら、モモタロウも にっこりわらいます。
「……うん、わかった。キロクするのはとくいだよ」
「じゃあ、よろしくたのむ」
オニはあんしんしたようすで目をとじました。それから、もう二度とうごくことはありませんでした。
🍑
モモタロウは サル・ネコ・シマエナガと別れたあとも、ときどきオニタイジのことをおもいだして、ふふふとわらいました。セカイを知らないモモタロウにとっては、だいぼうけんだったのです。
また、あいたいな。
セカイがかなしくならないように、いつかあたらしいオニがうまれたときに困らないように、モモタロウは いつまでもいつまでも キロクしつづけましたとさ。
おしまい。
こちらの企画に参加させていただきました。
だれも活躍しない桃太郎になりました。モモタロウがロボットなのは、かんぜんに私のシュミです。
白鉛筆さん、note4周年おめでとうございます🥳
楽しい企画をありがとうございました!
お読みいただき、ありがとうございました☺️