タンバリン湿原 #ショートショート(500字)
秘境を求めて幾星霜。
我々探検隊は、ついに幻の部族が住むという湿原に辿り着いた。
濃い霧の中、慎重に足を踏み入れるとシャランという音が響いた。生命力溢れる甘美な響きだった。
シャンシャンシャン……とまるでサンタクロースがやってくるような音色に湿原一帯が包まれ、私達は彼と遭遇した。
彼はシャララ……と警戒しながら、手に持っている何かを鳴らす。
「タ……タンバリン!」
隊員の1人が歓声のような声をあげると同時に
「パンッ!!」
とタンバリンが鳴った。
彼は目を輝かせながら、一心不乱にタンバリンを叩く。まるで神へ捧げる舞のような、神聖さすら感じた。
我々は、その様子をジッと見ていた。見るより他なかった。
数分が経ち、隊員の1人が戸惑いの表情を浮かべたその時、彼はハッと顔を上げ、トボトボと霧に包まれた奥地へ戻っていった。
我々は急いで彼のあとを追ったが、濃い霧に阻まれ、再びその姿を見ることは叶わなかった。
のちに隊長はこう語る。
「あの時、私達は彼に何と応えれば良かったのでしょう?もしあの時、最善の行動ができていたら……」
その言葉には後悔の念がひしひしと感じられ、現場には湿っぽい空気が流れたという。
(☆湿原だけに ──)
こちらの企画に参加させていただきました🙏
真面目にふざけながら書きました。
楽しいお題をありがとうございました!
【余談】
タンバリンについて調べていたら、こんな動画を見つけてしまいました。一般人には馴染みの無いタンバリンあるある。おすすめです。↓
ガチタンバリン奏者・大石竜輔さんのチャンネルは、見てると元気が出るのでおすすめです。(こちらの『おジャ魔女カーニバル』は所々大きな音が出るのでご注意ください)↓
三味線・チェロ・タンバリン(和・洋・中東)という異色の組み合わせで織り成す、即興の『千本桜』。バカカッコイイのでおすすめです。↓
『タンバリン湿原』をきっかけに、大石さんのファンになってしまった。
素敵な出会いをありがとうございました。(?)