●●●●●の おうち
うちの庭には、石がたくさんある。
石と言っても、ロックガーデン的なオシャレなやつじゃなくて、地面を掘ったらふつうに出てきたやつ。
漬物石並みに大きいのもあって、邪魔だし処分しようかとも思ったけど、子ども達のウケが良いので庭に転がしっぱなしにしている。
子ども達はその石を使って、たまに遊んだ。
ボールみたいにまん丸な石をボーリングの球みたいに転がして遊んだり(危ない。やめれ)。
ハンバーグみたいな色と形をした石を巡って、近所の子と争ったり(ケンカすな。やめれ)。
石を積み上げている息子の横から、末っ子が邪魔をして崩しているのを見た時は「ここは賽の河原か…?」と思ったり(縁起が悪い)。
去年の秋頃、息子と末っ子は協力して庭の一角に石を積み始めた。大きい石を土台にして、その上に小さめの石を積んでいく。そして、
「できた!これは、お家ね!」
(家……?)
なかなか上手にできたとの事で、2人ともご満悦。
それ以来、石のお家は崩される事なく6ヶ月以上庭に佇んでいた。石って、積み上がってると何だか壊しちゃいけないような、神聖(?)な雰囲気を醸し出す。不思議。
今年も春が来て、庭でバーベキューをする事になった。家族で肉や魚介を楽しむ。アスパラうまい。
満腹になった息子がふと、石のお家に近寄る。すると何を思ったのか
「えいっ」
と石のお家を崩し始めた。
「やーめーてぇーーー!!😱末っ子のおうちぃーーーーー!!!」
泣きそうな声で騒ぐ末っ子。しかし
「あっ、ダンゴムシ!!!」
石のお家には住民がいた。しかも、大量に。
うじゃうじゃうじゃ…(急な太陽光に慌てふためくダンゴムシ達)
「ぎ、ぎょぇーーーー!!!」(面食らう私)
「えっ!まじですごい!」(娘)
「すげー!」(息子)
「!!!!」(末っ子)
「……ダンゴムシのお家になってたんだねぇ。居心地良さそうだもんだね、このお家。」(気をとりなおした私)
「ダンゴムシの、おうち!」(末っ子)
そうして、子ども達は近所の子にダンゴムシのお家を自慢しに行った。
私は夫とバーベキューの片付けをした後、家の中に入った。洗濯物をたたみながら、子ども達の様子を見ていたのだが…
「きゃー!すごい!めっちゃいる!でかっ!!キモーい!!」
ダンゴムシを見ながら盛り上がるご近所お姉さんズと娘。
「さわる?さわる?」(娘)
「やだーっ」(お姉さん①)
「えーー触っちゃう?」(お姉さん②)
「おれがとってやるよ」(息子)
息子がダンゴムシをそっと掴んでお姉さんズの前に差し出した。
みんなでキャーキャーたのしそう。
「ねーねー!みて!!末っ子のうちダンゴムシのお家があるのー!」
幼稚園&保育園児チームを引き連れてくる末っ子。
待て待て、次々にご近所の子を呼んでくるんじゃないよ。
「すげー!」(園児①)
「なんでこんなにいっぱいいるの?!」(園児②)
「でしょ!すごいしょ!」(末っ子)
「おれがとってやるよ」(息子)
なんか、さっきからダンゴムシの係員みたいになってる息子。
みんなでしゃがみながら、ダンゴムシのお家を覗き込む。
ああ、みんな、かわいいなぁ…。
窓の外に広がる、子ども達の世界がかわいくて、愛おしくて。
こっそり写真かビデオを撮りたかったけれど
「あそこのおばちゃん、家の中から私たちの事を盗撮してくる。こわい。」
とか言われたら立ち直れないのでやめた。
そのうち飽きて、みんなそれぞれ遊び始めた。ありがとうダンゴムシ。おうち壊してごめん。
それにしても子どもって、どうしてあんなにダンゴムシが好きなのだろう。
ダンゴムシで盛り上がる子ども達を見れるのも、あと数年しか無いんだろうな。
「あっという間だなぁ~」
なんて言いながら、洗濯物をたたみ終えたのでした。