「も〜!」と否定するまえに知っておきたい、漫画本の3つの強み
この夏、「僕のヒーローアカデミア」という漫画本が、最終話を迎えた。
少年ジャンプでの掲載がはじまってから、10年にも渡って世界中のひとから愛された作品だ。
登場するキャラクターの誰もが主人公だった。
想いが受け継がれながら、正義と、別の正義が激しくぶつかり合う。
読みながら、多くのせりふと生き様に鳥肌が立ち、涙も流した。
思いやるこころの大切さに気づかされる作品だった。
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ソファの上に、ごろり。
なにやら真剣に読んでいる様子。
ちらりと目をやると、読んでいるものはどうやら漫画本だ。
あなたは、そんな自分の子どもになんと声をかけるだろう。
「また、漫画本なんて読んでるの?」
もしこの類いの言葉が頭をよぎったのなら、おそらくそれは、漫画本に対する漠然とした不安や嫌悪感があるからではないだろうか。
小説であれば、同じ言葉は出てきただろうか。
漫画本には、「読む」までの壁が低いという良さがある。
絵とせりふで作り上げられるところは、小さなころから馴染みのある絵本にもすこし重なる。
しかし、日本の漫画本は、アメリカの漫画本(通称アメコミ)にあったような倫理規制がないまま発展してきた。
それは、年齢制限に気をつけて種類を選ばなければ、こころの成長に悪影響をおよぼす内容を読んでいる可能性がある、ということだ。
なんとなく否定的になってしまう理由は、こういうところにあるのではないだろうか。
では、漫画本のいいところは?
よさも知らずにただ否定ばかりでは、子どものこころに、こちらの想いは届かないだろう。
いいところも悪いところも知ると、伝えるときに選ぶ言葉や、その言葉の重みも違ってくる。
今日は、見識の広い親であるために、漫画本の強みとはなにかを一緒に考えてみよう。
会話のネタになる
漫画本について、驚きの数字を見つけた。
日本の、漫画本歴代発行部数だ。
注目して欲しいのは、これだけの冊数が世に出回っていることだ。
それだけ、目にしたことがある人、読んだことがある人、ファンも多いという事実がみえる。
突然だが、以下のせりふを聞いたことはあるだろうか。
「海賊王に、俺はなる!」
「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」
「心を燃やせ。」
「心臓を捧げよ!」
「我が生涯に一片の悔いなし。」
「戦闘力たったの5か。」
「真実は、いつもひとつ。」
これらは、漫画本から生まれた名言の一部だ。
小説は、読みながら自分の中で想像を膨らませていく。
それとは違い漫画本は、作者の想像する世界へ入り、その世界に浸りながら読み進めていくことになる。
つまりは、これらの有名なせりふ聞いて、頭のなかに浮かんでくるキャラクターやその表情、場面の雰囲気までも、ほぼ狂いなく誰かと共有できる、という現象が生まれるのだ。
これは、漫画本の強みといえるだろう。
共有できる、共感できる、は、コミュニケーションの質を上げてくれる。
会話のネタとして使えそうな漫画本は、コミュニケーションを楽しむための武器として、読んでみるのも悪くはないだろう。
自己啓発本としての学びがある
多くの書物から学びがあることと同じく、漫画本からも学べることがある。
それは、自己啓発だ。
自己啓発とは、自分の意思で、今よりもより高い能力、大きい成功、充実した生きかた、優れた人格を得ようとすることをいう。
漫画本では、キャラクターたちがいうたくさんのせりふを、文字で追っていくことになる。
アニメと違うところは、自分のペースで、気になるシーンの解釈を深めながら読み進められることだ。
気軽に読みなおしたり、ゆっくり文字を追ったりすることもできるため、理解が深まる。
聞き間違えることもない。
それらもあり、読み終えると気持ちが奮い立たされたり、思わぬことに気づかされたりする。
まるで、絵とせりふから作られた自己啓発本だ。
苦しいときに踏ん張るための発想。
慈愛に満ちた心で、人のために動くこと。
目標に向かって、何度でも立ち上がる気高さ。
どのように仲間を大切にするのか。
家族愛とは、なにか。
ほんとうの強さとは、なにか。
誰も最初から強くはない、という真実。
誰かの幸せを願う尊さ。
他人の幸せを、ともに喜ぶことで得られる幸せ。
漫画本を読み、自分自身が高められていく経験も、人生のいろいろな場面で活きてくるのだ。
日本の漫画本は世界にも誇れる
日本の漫画本は、世界中で大人気だ。
なぜなら、話の緻密さとジャンルの豊富さ、そして単価の安さが、ほかの国よりも抜き出ているからだ。
世界には、世界三代マンガといわれるものがある。
ひとつはアメコミ、ひとつはフランス語圏のバンド・デシネ、そして日本の漫画本だ。
誇れることは、人気面だけではない。
日本の漫画本は、歴史も深いのだ。
今現在、世界で最も古い漫画といわれるものが生まれたところも、日本だ。
鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)である。
こういうやつ。
また、第二次世界大戦後には、戦争の惨さを残し、自国への疑念を描いた漫画本もある。
古沢けんじさんの「はだしのゲン」や、手塚治虫さんの「紙の砦」だ。
敗戦後でさえも、発展を遂げてきた。
日本人の意思を主張しながら、歴史の中で揉まれ、生き残ってきたのだ。
これには、日本人漫画家の漫画本にたいする情熱が、執念にすら感じられる。
それらが繋がり、積み重なり、今日に至る。
歴史が深く、そしてその積み重ねた歴史が培ってきた多様なジャンル。
また、思考を凝らした構成、質の高い絵のタッチが世界中の老若男女から認められているのだ。
親が本当に気をつけるべきこと
それは、子どもの興味に親も関心をもつことだ。
倫理規定がないため、親として、人として、この内容はどうだろうと思う漫画本が山ほどあることも事実だ。
だからこそ、子どもが今どのような内容の漫画本に興味を持っているかを知り、一緒に消化していく努力が必要だろう。
話題に出し、子どもが自分で選ぶための力を身につけていけるよう、尽力しよう。
多くの情報に囲まれた現代で子どもを守るには、避けて近づけないよりも、子どもの目線と足取りに親が近づき、ともに考え、選ぶための必要な知識や判断力を養うほうが賢明といえる。
どこがいいのか。
どこがいけないのか。
なぜ興味があるのか。
心身への影響はどうなのか。
面倒くさがらず向き合うことだ。
これは、なにも漫画本だけに限ったことではないだろう。
まとめ
日本の漫画本には、素晴らしい作品がたくさんある。
あなたと、あなたの子どもが、読んでよかったと思えるような漫画本と出会えることを、心から祈っている。
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