記事一覧
【小説】AIスピーカー
「サミー、おかえり」
リビングに小さな光が灯り、2秒ほどの間が空いてから無機質な声が部屋に響き渡る。
「お帰りなさい、リエさん。電気とエアコンをオンにします」
部屋に電気が灯り、エアコンからピッと音が鳴る。
部屋には私以外誰にもいないのに、何だか落ち着かない気持ちを抱えながらソファーに腰かけ、AIスピーカーにチラッと目をやる。
先月、孤独な男性が人工知能と恋をする映画を見てから、AIスピ
【小説】ピノキオみたいな
「ごめん、待った?」
肩上の長さで揃えられた髪を揺らしながら、春香が僕の元へ小走りでやってくる。
「いや、今来たところだよ」
その言葉を発したと同時に、下腹部に急激な痛みを感じる。
痛みに顔をしかめてしまった僕を覗き込んで、「また発作?大丈夫?」と春香が心配そうな表情を向けた。
ああ、またこの発作の本当の理由を彼女に伝えづらくなってしまった——再度顔をしかめてしまいそうになるのを、必死に堪
【小説】ポリメリアン
「あ、ポリメリアンだ。かわいー」
見慣れた道を歩きながら、ちぎれんばかりに尻尾を振るポリメリアンを見て、私は自然と笑みが溢れた。
「ポリメリアン?」私の隣を歩く吉岡さんが不思議そうな顔をしてから、「あっ」と何かに気づいたような表情になり、「きっと、ポメラニアンだね」
「ポメ……リニアン?」
「違う違う、ポメラニアン」
吉岡さんは一文字ずつしっかりと発音し、私が「ポメラニアン?」と聞き返すと、「
『殺人鬼から逃げる夜』
どういうきっかけだったかは覚えてないけど、映画『殺人鬼から逃げる夜』の予告をたまたまYouTubeで見て、予告編だけでここまで引き込まれるのかと驚かされた。
それから何度も繰り返し予告編を見て、前売り券を購入して、まだかまだかと公開日を待って、ようやく見ることができたのだけど、随分と高まり膨らんでいた期待を、優に超えるほど素晴らしい映画だった。
まず予告編の素晴らしさから話すと、この予