『生き残った6人によると』のざっくり感想-大好きな漫画を語る-
e漫画サービスにて、気づけば登録来1370作品を読んでいたらしい。
本当に気に入ったもの以外無料でしか読まないので、全部読破したわけではないのだが、上位5%層に入っているというのなら、どうせならおすすめでも紹介していこうと思う。
何しろたくさんあるので、まずは目下ハマっているこの作品を紹介する。
生き残った6人によると/山本和音 KADOKAWA
ゾンビパンデミック下でショッピングモールに逃げ込んだ男女が、サバイバルしながら共同生活を送る話。発端が成田空港での第一感染者で、ゾンビに対し封鎖施策を取るところなど、おそらくこの作品が描かれ始めたコロナ禍をうまく思わせる。舞台は、封鎖された千葉県、幕張。主人公たちの立てこもるモール「キノ幕張」のモデルは「イオンモール幕張新都心」。この場所の構造に親しんでいる人にはそれが楽しめるだろうし、そうでなくともモール内でのゾンビとの攻防生活に自然と思いを馳せてしまう。
「ゾンビパンデミックの中、…彼らは恋に夢中になっていた」という「はぁ?!」なコピーから始まる本作品だが、決してチープなドラマではなく、ゾンビ設定もキャラクター設定もよく作り込まれている。そして、この状況下だからこそ、恋、というのも、読んでいるうちに納得がいってしまう。
(以下、やんわりネタバレあり)
ちなみに、同タイトルのドラマ(もちろん原作は本作品)があるが、原作があまり進んでいない中ドラマ化してしまった感がすごくて、本作はその後に出た展開が面白くなってくるのに、もったいないことしてんな、と勝手に思う。
ゾンビものが何より嫌いな私がこの作品をここまで好く理由は、この作品が性善説に基づいているからであろうと思う。パンデミックやら、監禁系やら、被害者側の人間が無作為に集められる作品によくある展開が、その被害者たちの仲間割れ・汚い本性のさらけ出し、などなどだと思っている(典型的なのは『なれの果ての僕ら』)のだけど、この作品は今のところあまりそれがない。驚くほど穏やかで、つかの間の仲間を思い、知性と各自の特性をフル動員してサバイバルしていく。もちろん、まったく汚いところがないわけじゃないんだが、人間性の範囲内におさまっている(私としては)ので、気持ちよく読める。だんだん全員が好きになってしまう。
全員が好きになる、というのがまた困るところで、愛着を入れれば入れるほど、タイトルが自分を殴りに来る。生き残れるのは、6人だけなのだ。それだけ最初から種明かしされている。人がいなくなり、現れ、そのたびに複雑な気持ちになる。ただ逆を言えばどの人物も少なくとも一度は死んでおかしくない目に遭いながら過ごしているので、「この状況でも生き残れる人がいる」というのは、先に示された救いでもある。ディストピアの中の、ひとにぎりの救い。
6巻から新章突入ということで、せっかく丸く6人におさまってきた(勝手ながら)ところ人が増えるということに戦々恐々として未だに読めないでいる。
とりあえず、幕張に行く機会があったらイオンモールに行こうっと。精肉コーナーまでは足を踏み入れないように。
ちなみに、著者の山本和音氏の作品集もまた、良い。最初の一編は試し読みできる。短いながらに、頭をガツーンとやられます。
※サムネイルはUnsplashで適当に「kino」と検索しただけで本編とは関係ございませぬ。ポーランドの写真のよう。Photo by Mykyta Martynenko