001-1 読んでいる本 辺見庸『完全版 1★9★3★7 (上)』
産休でやろうと思っていたことの一つ、読書。
まとまった時間ができたので、Amazonで貯めに貯めていた、ウィッシュリスト内から少しずつ読みはじめてみる。
第一弾は 辺見庸さんの1937(イクミナ)の文庫本版を、とりあえず上だけ図書館で借りてみた。
最近の図書館は本当に便利で、近所の図書館に所蔵がなくとも、取り寄せ位依頼をするとものの数日で入手が可能なんですねえ。
狭い家のスペース節約にも、もちろん購入費の節約にもなるのでとっても助かります。
こちら、中国に駐在していた職場の先輩に、2年ほど前に勧めていただいた図書。
ようやく第三章まで読み終えたところだけど、いくつか雑感:
1. まず、2016年に発行されたという点におどろき。
勝手に、もっと古い本だと思い込んでたもので。作者も1944年生まれなので、戦時中の空気は半分以上想像であるだろうけれど、想像しうる範囲での戦争前夜の空気感と、2016年周辺という私も分かる空気感を重ね合わせていて、これまであまりない読書体験。
何が言いたいかというと、今まで読んできた“現代に警鐘を鳴らす”系の本というのは、その本が差す“現代”が、わたし自身が生きる“現代”と少なからずズレていた。けれど、この『1937』については、同じ“現代”を想定しながら読み進めることができるので、作者の言わんとするところを、自分ごととしてより身近にかんじられる。
2.独特のひらがな表記
妙にひらがなが多くて、なんというか珍妙な印象?
作品というよりも、辺見さんの日記を見せてもらっているような気持ちになる。
ただ、こういう本は難しい表現がたくさんで内容が分かったような分からないような気分になることも多いので、そういう点では親しみやすさを感じられて良いのかもしれない。
3.チャレンジングなテーマ
南京大虐殺を所与のものとして書き進められている点については、発行にあたって様々な障壁があったのではないかなあ、などと想像してしまう。
というか、私のような、ちんちくりん社会人にそういうことを想像させるというか、「大丈夫なの?」と忖度させてしまうこと自体が、“現代”がそれなりにヤバいところまで来ている証左なのかもしれないけれど。
そういう時に、角川文庫の最終ページに掲載される「角川文庫発刊に際して」を読むと毎度勇気づけられる
「第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退であった。私たちの文化が戦争に対して如何に無力であり、単なるあだ花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験し痛感した。…近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに私たちは失敗して来た。…
一九四五年以来、私たちは再び振出しに戻り、第一歩から踏み出すことを余儀なくされた。これは大きな不幸ではあるが、反面、これまでの混沌・未熟・歪曲の中にあった我が国の文化に秩序と確たる基礎を齎らすためには絶好の機会でもある。角川書店は、このような祖国の文化的危機にあたり、微力をも顧みず再建の礎石たるべき抱負と決意とをもって出発したが、ここに創立以来の念願を果たすべく角川文庫を発刊する。…」
以上、上巻を半分程度読み終えた上での雑感。
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