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Potato less world

「じゃがいもが消えた日」

ある日、地球上のすべてのじゃがいもが突如として姿を消した。それは、科学的な原因も、人為的な陰謀も、神の気まぐれのような超常現象も特定できない、まさに不可解な出来事だった。

最初に気づいたのはスーパーの店員たちだった。「あれ?じゃがいもが入荷してない?」と首を傾げ、次に農家が「収穫したじゃがいもが全て消えた!」と騒ぎ始めた。テレビニュースは朝から晩までこの異変を報じ、人々は戸惑い、次第に騒然としていった。

「カレーが作れない!」「ポテトチップスがないなんて!」

街中のいたるところで悲鳴が上がり、料理好きの主婦からジャンクフード愛好家まで、あらゆる層が大混乱に陥った。しかし、じゃがいもが消えた影響は食卓だけにとどまらなかった。

フライドポテトのないファーストフード店

世界的なファーストフードチェーン店、売り上げの70%をフライドポテトが占めていた。そのため、じゃがいもの消失は致命的だった。臨時記者会見が開かれ、CEOが涙ながらに語った。

「皆さん、私たちはポテトなしの新しい時代に対応するため、ライスフライを提供します!」

しかし、ライスフライや他の代替品は、顧客の期待には到底及ばなかった。ネット上では「ポテトを返せ!」のデモ動画がバズり、各地で抗議活動が起きた。

科学者たちの奮闘

一方、世界中の科学者たちはこの謎を解き明かそうと躍起になった。DNAレベルで消滅の痕跡を追う研究、宇宙からの影響を調査するプロジェクト、さらにはじゃがいもを人工的に再現する計画まで進められた。しかし、どの試みも失敗に終わった。

「じゃがいもは何か別次元に吸い込まれたのかもしれない」と語る科学者もいれば、「これはじゃがいもの反乱だ。彼らが自ら消えることを選んだのだ」と冗談を言う者もいた。

新しい食文化の誕生

それでも人々は生きていかねばならない。じゃがいもの代替品として、サツマイモやカボチャ、タロイモが注目されるようになり、これらを使った新たなレシピが次々と生み出された。特に「サツマイモチップス」は人気を博し、一部の人々からは「じゃがいもより美味しい!」という声も上がった。

また、消失したじゃがいもを題材にした芸術作品や小説が増え、「ポテトロス」という言葉が流行語大賞を受賞した。じゃがいもに代わる新しい文化が生まれたことで、世界は少しずつその喪失感を乗り越え始めていた。

じゃがいもの帰還

それから10年後、ある朝、どこからともなくじゃがいもが突然元の姿を取り戻した。畑にも、スーパーにも、冷蔵庫のなかにも、まるで何事もなかったかのように戻っていた。

人々は狂喜乱舞し、「じゃがいも復活祭」と名付けられた祝祭が世界中で開かれた。しかし、一方でこう言う人もいた。

「じゃがいもがない時代に慣れたから、もうそこまで必要じゃないかもね。」

こうして、じゃがいもの消失と復活を経た世界は、新しい視点を得ることになった。何が起ころうとも、人間は順応し、前に進む。それを証明した出来事として、この不可思議な事件は歴史に刻まれた。

そして今日も、じゃがいもは静かにテーブルの上で存在感を放っている。

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