2024BRM622 イバラキイバラキ ~petit~300km 撤退録
スタート~PC1
先日、行われたオダックス近畿主催の300kmブルべに参加してきました。結果は残念ながらDNFとなりましたが、ブルべに参加するのは3回目で300kmは初挑戦、自身最長のライドとなりました。
装備はこんな感じ。夕方から雨の予報が出ていたため、前にSKSのフェンダーを。フェンダーを付けるとダウンチューブにつけているツール缶と干渉してしまうため、三角の中に位置替え。ボトルはステムポーチをつけてそこに着けた。トップチューブバッグにモバイルバッテリーや塩飴、ワイヤーロック。サドルバッグの中はカッパの上下、レイングローブ、シューズカバー、替えの靴下とベースレイヤー、薄手ジャージ。レーダーライトとおにぎりリフレクターも。ボトルは2本体制。お茶とアクエリ。服は7meshのウールの半そでジャージに、パールイズミの長袖ベースレイヤー。下はよく覚えていない。靴下はお気に入りのOLENOのウールのもの。何もつけない状態の車体で9.7kg。最近、サドルとシートポストをTNIのカーボンに、タイヤとチューブをハッチソンのブラックバードとMageneのTPUチューブにした。全部装備して雑に吊りはかりで測って12~13kgくらい。
帰りはサンダーバードに乗る予定なので縦型輪行袋。北陸新幹線が敦賀まで延伸したが、敦賀~大阪は在来線に乗らなくてはならない。北陸新幹線も自転車を置けるような大型荷物スペースはない。ブルべのときは少しでも荷物を減らしたいため、ツール缶に収まるコンパクトなpekoさんの横型輪行袋がいいのだが、サンダーバードでは縦型でも通路にはみ出てしまうほど狭いため、かさばる縦型に。今回はドロップバッグを1つ500円で預けることが出来たので、金沢で泊まる用意を預けた。
フロントバッグはなんと100均で見つけたもの(550円)。容量は2.5Lくらい。キューシートを透明な部分に入れて走りながら確認できればいいなーと思っていたのだが、中身を入れると重みでお辞儀をしてしまい、キューシートは見えなかった。今思えばこんなに補給食入れなくてもよかったかも。
ブロンプトンの集団がいて、尊敬のまなざしで見つめる。改造されているとはいえ、あれで300km走るとは。私はブロンプトンで走るとしまなみ海道でさえ肩が凝って死にそうになっていたというのに。
朝5時に茨木を出発。6時スタートも選べたが、時間ぎりぎりでゴールする見込みだったので、なるべく早く終われるように5時にした。前日の準備に時間がかかってしまい、夜はほとんど眠れなかった。体調も前日からおなかが痛くよくない。スタート直後から胃がムカムカしており、朝ごはんも持参していたが固形物は食べる気にならなかった。
早朝はいい。人も車も少ないし、なんだか自分のために夜があけて太陽が昇っていくように感じられる。今回のコースは普段よく走る道が含まれていたのだが、早朝に走ると見え方がまた一味違った。
信号待ちで3,4人かたまり、「300ですか?600ですか?」などと会話しながら京都に向けて走っていく。今回のブルべは金沢まで行きっぱなし300kmと往復して茨木に帰ってくる600kmが同時開催なのだ。
気温が上がり速いペースで飲み物を飲む。この気候でウールのジャージは失敗だった。すでに汗ジミができている。坂に入る前のコンビニでお茶のボトルが空になったので補給した。
本日最初の難関である長坂峠(京都府宇治市炭山)に差し掛かる。ブリーフィング時に、「工事中で対面通行になっている、結構なヒルクライム」だと言われていた。実際、路面に縦線が切ってあったし、工事用の水なのか清掃のためなのか、坂の上から水が流れていた。後で調べたら平均斜度11%、最大斜度18%らしい。ここで無理に踏んでも疲れるだけなので、押し歩きをした。斜度そのものがキツイというより、先にまだまだ曲がりくねった坂道が続いているのが見えて戦意をそいでくる。ここで何人かに「お疲れ様ですー」と言われながら抜かれた。
なんとか坂をクリアし滋賀県に突入。ここからはしばらく平坦である。交通量も増えてきた。先日、大河ドラマに感化されて行ってきたばかりの石山寺を横目に走る。快調、快調~♪と思っていたのだが、なぜかPC1をローソンと勘違いしていた。蛍光ベストの人が誰もいないのはおかしい…と思いキューシートを確認すると、なんと数キロ手前で通過してきたセブンがPCだった。時間がもったいないと思いつつも折り返す。
サイコンにはルートをPCごとに区切って入れているのだが、どうやらその時点でローソンをゴールにしてしまっていたらしい。
PC1~PC2
このあたりでやっと空腹感が普通になり、朝ごはんを食べることが出来た。好物の鱒の寿司おにぎりである。鱒の寿司といえば富山の名物。富山県内ではどこのコンビニでも普通に売っているが、そういえばここは滋賀県なのになんで普通に売ってたんだ…?
6月とはいえだんだん気温が上がり、朝方、固形物は食べられなかったが空腹感はあり、それを誤魔化すためにもかなり水分も摂取していたためボトルも補給した。
ここでなんとなく同時に出発したブルべ参加者の男性二人の後ろにつかせてもらうことが出来た。自分一人だと35km/hなんてとても巡行できないが、追い風なこともあり、ぐんぐん進む。琵琶湖を右に見て平坦な道を走る。交通量はそこそこ多い。途中の信号でちぎれてしまったが、かなり楽させてもらった。isadoreのジャージを着たお二人ありがとうございました。
途中、スキンヘッドでノーヘルのメルクスに乗った白人を抜いたら、アタックを仕掛けるように抜き返され、「なんだったんだ、あれは…」と驚いた。
まだ60kmくらいしか走っていないのに右足の裏が痺れてきた。クリートを外しフラペ状態で漕ぐ。今まで、ソールの柔らかいスニーカーやサンダルで走った時しか足裏が痺れたことはなかったので焦る。結局、一日中何度もクリートを外すことになった。
しばらく一人で走ってPC2のローソン 滋賀安曇川店に到着。ちょうどお昼時だったこともあり、ランドヌールが何人も休憩していた。先ほど前をひいてくれた二人組とも再会。なんと少し寄り道をして、福井のヨーロッパ軒でソースカツ丼を食べるつもりだという。私は、そのままコンビニで何か食べてもよかったのだが、時間的にも少し余裕がありそうで、すぐ近くに丸亀製麺が見えていたのでしっかりお昼を食べることにした。
甘めの味付けでおいしかったのだが、この時自分が欲していたのは塩分だったと気づく。もっとしょっぱい梅干しとか昆布とか食べたい気分だった。
ゆっくりお昼を食べていたらまわりにすっかりランドヌールはいなくなってしまった。ここからはずっと一人旅であった。
PC2~PC3
敦賀駅前で一枚。PCではないが、銀河鉄道999の登場人物などのオブジェがいくつもあり、立ち止まった。このあたりでまた先ほどの二人組とすれ違う。逆方向に走っていたので、ミスコースか?と思わず立ち止まり確認したが、そういえばヨーロッパ軒に行くと言っていたんだった、と思い出し再び走り始める。
敦賀駅からPC3の葉原区公会堂までが地味に疲れた。大きな登りがあるわけではないが単調な田舎道が続く。車もあまり通らない。これで本当に合っているのか?と疑心暗鬼になる。サイコンの動きも?マークが出てなんだかおかしい。スマホでride with GPSを起動させてみると概ねあっているが、一本違う道を走っていた。
へとへとになりながらもPC3の葉原区公会堂に到着。時間に余裕はなかったが、疲れがたまっていたので階段に腰を下ろし、粉のアミノバイタルを飲む。午後から心拍計とレーダーライトがサイコンに接続できず、モヤモヤしていた。腰を据えて再接続に何度もトライしてみるが、ずっと検索中のままでどちらもつながらない。特にレーダーライトはソロで走るときには重宝しているので使えないと困るのだが、接続できなかった。家だと繋がるのに野外だと繋がらない問題は、今日現在でも未解決である。
PC3~PC4
ここから先は海岸線に向けて走る。高速道路と並行して走る古そうな道である。路面は悪く、なぜか濡れているところもある。そして、旧北陸線葉原トンネルに差し掛かる。今まで使ったことのなかったヘルメットライトを初めて使った。トンネルの中は一切、灯りがなく、VOLT800を最大光量でつけても暗く出口が見えず不安だった。正直、一人でここを走るのは怖かった。ライトはもう一つAMPP500を持ってきていたが、VOLT800と交代で使うつもりだったので、つける場所がない。ヘルメットライトがあれば近くだけでもはっきり見えて安心である。路面がガタガタだし、ところどころ水たまりもあった。今思えばこんなところなかなか来ることがないので写真でも撮っておけばよかったのに、疲れていて頭が回っていなかった。「トンネル」じゃなくて「隧道」と書いてあるなーとか考えていた。
山間を抜けやっと人の営みが感じられる道に出たが、サイコンがまた?マークで道なき道を示すのでイライラ。スマホのGPSはちゃんと表示されるので、時々確認しながら走る。サイコンがあればスマホのナビはいらない!とサイコンを買った当初は思っていたが、これは考えを改める必要がありそうだ。前回の200kmブルべで奈良の山間を走っていた時もガーミンさんはトンチンカンなことを言ってたし。
少し走り海岸線に出た。天気が良ければ走っていて気持ちよいのだろう。潮の香りと北陸のじっとりとした湿度を感じていた。
ここらへんでなぜか心に余裕が出てくる。自分の足で福井まで来たんだぞとテンションが上がっていたのかもしれない。敦賀に入った時点でもう福井には入っているのだが、水仙郷や越前ガ二の看板を見ないと福井に入った気がしなかった。実家が富山なので、幼いころに車に乗せられて、わざわざ福井までカニを食べに連れて行ったもらったことを懐かしく思い出していた。
掌が痺れてきた。ほとんどパッドのないグローブをしていたせいかもしれない。手持ちのグローブでパッドが厚いものはカフが短く長袖を着ていても手首がくっきりと日焼けしてしまったので、パッドは薄いもののカフの長い9分丈のグローブを着用していた。
PC4~PC5
このあたりで雨がポツポツ降ってきた。ヨーロッパ軒に行っていた二人組にも再会。久しぶりに人間と話してホッとする。お腹がすいてきたので冷製じゃがいもスープとチキンを食べる。塩分を簡単に摂取できるのでこの手のスープは好きだ。夏だけと言わず年中売ってほしい。
天気予報を見るとかなり大きな雨雲が迫っている。おそらくこれから先、やむことはないだろうと思い、雨具を上下とも着こむ。シューズカバーとレイングローブはつけるか迷ったが、暑いかなと思い、つけなかった。このあとすぐに後悔することになるのだが。
PC4~PC5
だんだん雨脚が強くなってきた。しおかぜラインのトンネル前で横に激しく風にあおられ、バランスを崩しそうになった。だんだん走るのが楽しくなくなってきた。このあたりでDNFが頭にちらつき始める。ここまでだいたい200km走ってきた。天気予報と自分の走力からして、雨雲につかまることは覚悟していた。しかしずっとこの先、一人で夜の闇の中を、しかも雨で走るのは不安である。時間的にはグロス15km/hでもゴールに間に合いそうではあった。とりあえずPC5の雄島橋まではあと30kmくらいなので行ってみようと思った。
写真では伝わりにくいかもしれないがかなりの雨脚だった。雨具を着ているので濡れることはないが、雨が当たって痛い。カッパはOMMのトレラン用の薄手で軽量なものを使っているからかもしれないが、そもそもこんな雨の強いときに自転車に乗るべきでないのだ。
冷静になって考えようと思って近くに自転車をとめ、面倒ではあったがサドルバッグからシューズカバーを出して身に着けた。フェンダーをつけているから足はあまり濡れていない気がしていたが、シューズカバーをつける前と後では暖かさが段違いである。6月末だというのに、昼間は暑くて暑くてたまらなかったのに、身体が冷えていることに気づく。DNFするにしてもこのあたりに鉄道は通っていない。ゴールする気力はなくなっていたが、ここにいても仕方ない。もうあまり頭は回っていなかったが、街まででなくてはと思い直し、走り出す。レイングローブは迷ったがつけなかった。雨でただでさえサイコンの操作が思うようにできないのに、グローブをつけると尚更できないと考えたからだ。
坂井丘陵フルーツラインの看板が見えた。予備校の友達で坂井市出身の子たちがいたなと思い出す。坂井市といば石川県までもう少しである。ぼんやり街の光が見える。車が通り、容赦なく水をまき上げる。寒い、手がびしょ濡れだ。誰もいないはずなのに、なぜか声が聞こえる。何の音なのか。そしてここでライトが電池がないよと赤くなった。フロントバッグに入れていたAMPP500と交換するためにジッパーを開けると、閉まらなくなった。さすがは100均の商品、裏切らない。
DNF
時計を見た。20時半ごろである。北陸新幹線の終電は朧げな記憶では21時台だった気がする。リタイアするならまだ電車が残っている時間にしなくては意味がない。このあたりなら芦原温泉駅があるはずだ。決断するなら今だ。もしここでパンクしたらリカバリーできないなと思い、250kmほど走ったがDNFすることにした。たかが50km、されど50kmである。
スマホで「あわら温泉」駅をナビさせたつもりだったが、やっとの思いで駅につくと何かおかしい。新幹線の駅にしては小ぢんまりとしている。いや、新幹線のためだけの駅ならしょぼいし…新高岡駅とか…思ったがどうやらここは違うらしい。えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅だった。ここから出る電車に乗っても金沢にはたどり着けない。ドロップバッグを預けているし、金沢で宿をとっているのでなんとしても金沢には行かなくては。
気を取り直してJR芦原温泉駅に向かう。幸い4.2kmと近いようだ。普段ならすぐそこの距離なのに果てしなく遠く感じた。真っ暗な田んぼ道を気力だけで進む。カエルの合唱とともにまた人の声が聞こえる。これは幻聴なのか。こんな経験は初めてだ。
なんとか芦原温泉駅に着いた。初めて来た駅だったが目の前にビジネスホテルがあるし、やたら新しい雰囲気だし新幹線の駅だと確信した。時刻表をみると22時台に2本新幹線がある。普通電車も動いているようだ。今からゆっくり準備しても間に合う。ここでDNFの電話連絡をした。
漕ぐのをやめて輪行していると、体がだんだん冷えてきてぶるぶると震えが来た。屋根はあったが風が強く、そうしている間にも雨が横殴りに吹き付ける。サドルバッグに予備の着替えがあったので着替えた。半そでとはいえ湿った服を着ているより暖かい。足はぐっしょり濡れていたが、素材がウールなこともあってそこまで寒さは感じていなかった。
結局、ゆっくりと準備していたら終電の22:58発に乗ることになった。券売機で切符を買おうとするが紙幣が少し濡れていて機械にはじかれてしまう。手持ちはこれしかないし、角が少し濡れているだけなのに突き返される。完全にパニックになってしまった。この時間、この駅に駅員がいるわけもなく、目の前で紙幣が濡れていたために電車を逃すことになるとは、本当にどうしよう…と思ったら先ほど突き返されたお札が急に認識された。良かった。今思えばカードで払えばよかったのだが。自転車に乗るときはmouse on trailの財布を使っていて今まで中身が濡れたことはなかったのだが、この雨と背中の汗でキャパオーバーだったらしい。
ホームにあがると駅員がいて久しぶりに人間をみてホッとする。終電だから乗り遅れないようにとアナウンスがある。この駅から乗るのは自分ひとりのようだ。
新幹線は速いものですぐに金沢駅についてしまった。自分は何を苦労して自転車に乗っていたのかと少々馬鹿らしくなってくる。金沢は小雨だった。土曜の夜なので酔っ払いがいっぱいいる。
駅からホテルまでは少し距離があり、輪行を解除する元気もなかったのでタクシーに乗った。ホテルに荷物をおいてゴールである茨木ハウスまでドロップバッグを取りに行くころには日付が変わっていた。
ドロップバッグを受け取ってホテルに戻ると雨の中、再出発するランドヌールを見かけた。600kmにエントリーしていても、悪天候のため折り返し地点である金沢でやめる人も多かったようだが、すごい人である。後でリザルトを見ると300kmは出走者22人に対し完走者が19人、600kmは17人に対し3人だった。あのヨーロッパ軒に行っていた二人組は完走できたのだろうか。時間的に雨にはあっているはずである。
300kmブルべは制限時間は20時間だ。グロス15km/hで時間ぴったりになる計算だ。このブルべに向けて自分はロングライドに出る時間は取れなかったが、二日に一回は実走かローラーを回すようにしていた。しかし、走り切れなかった。前日に睡眠時間の確保ができなかったことや、シューズカバーを身に着けるのが遅かったことなどいろいろ反省点はあるものの、一番の敗因は雨と見込みの甘さだ。時間を使い切るつもりで最初からいると精神的に余裕がない。平坦の基本的な巡航速度をもう少し上げないといけない。遅いから誰の後ろにもついていけず、ずっと一人旅になり余計疲れるのだ。
おまけ
次の日は大雨警報が出ていたが金沢を観光した。サンダルを持ってきていたが、とてもサンダルで出歩ける天気ではないのでSPDシューズで出かけた。
後日談
後日、すぐに(お金で)解決できそうな問題だったのでブルべ専用と謳われているグローブを購入しました。このグローブ、存在は前から知っていたし試着したこともあったんだけど、手が小さいのでハンドルが握りにくくなりそうだと思い買わなかったんだよね。バーテープをかわいさ重視でクッション性のない布製のものを今は巻いているので、手が痺れたのかも。これから手の振動吸収はこいつにまかせよう。
バーテープはbtpのこのシリーズは可愛いし人と被らないのでオススメ。ただしグリップ力とクッション性は求めないでください。