かまぼこ屋さんでなぜドジョウ?
blogの内容をラジオ番組風に仕上げてありますので、下記リンクからお聞きください。文字でお読みになる方はこのままどうぞ。
富山県西部 小矢部市の中心、越前町商店街にある老舗 まごま蒲鉾店はちょっと興味深いお店でした。蒲鉾屋さんでありながら、名物はどじょうの蒲焼なのです。どちらも魚が材料であるのは一緒ですが、どう考えても共通点が見出せない。そこで、店主の辻正雄さん 豊子さん ご夫婦に話を聞きました。
5月から9月頃、店先で炭火焼きされるどじょうの蒲焼。実は蒲鉾にかわる商材として作り始めたものでした。今では想像しにくいでしょうが、冷蔵庫がまだ一般的でなかった時代、暑い時期には蒲鉾の鮮度が保てず、蒲鉾を作って売る事ができなかったのです。そこで暑い時期の売上確保策として、ドジョウの蒲焼を採用したのです。当時は田畑に水を供給する用水路には、どじょうがたくさんいて、隣接する南砺市には伝統食文化としてどじょうの蒲焼があったことから採用したのでした。
現代の生活だけを見ていると、どうしても視野が限定されがちですが、冷蔵庫が無い時代を想像できれば、この話がすんなり得心できるはず。少し前の歴史を知ることは、視野を広げてくれるものです。
参考までにまごま蒲鉾店の創業は昭和11年電気屋が始まり。職種が変わりながら戦後すぐに蒲鉾屋としてスタート。ほどなくドジョウの蒲焼きを開始。蒲焼のタレはその当時から継ぎ足し続けています。昭和→平成→令和と続く伝統の味をひと串110円で販売しています。
まごまの名前は、創業者が辻 孫助という名前だったから。本名はしょういちさん。代々受け継がれてきた孫助の名だそうです。豊子さんの記憶では、大正時代に商店街の広告キャッチコピーに、こんなセリフを出していたそうです。
まごまの前でまごまごせんと
まごまへ入って買い物せんか
シャレが効いた言葉遊びが印象に残りますよね。孫助のまごの字に丸が囲われたマークがあったことからまごまる→まごまとなったのではないかと懐古しておられました。
小矢部市には、北前船に起因するニシンの食文化があったり、冷蔵庫のない時代を経て今に続く蒲鉾店の変容の歴史があったりと。少し前の事を知ることで、今手に入る品物の価値がグッと上がる体験ができました。