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【単行本】静かな侵略
静かな侵略
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ある日、彼らは突然やって来た。宇宙船に乗ってやって来た。
宇宙船は最初、ヨーロッパのとある国のとある街の上空に出現した。空に漂う漆黒の円盤はあまりにも巨大で、そこにあるだけで空一面を覆い隠している。ただ空に浮いているだけで何をするでもなかったが、それでも得体の知れぬ大きな物体は人々の心を不安に駆りたてた。
この事件は世界中で瞬く間にニュースとなったが、最初は誰も信じようとしなかった。人々は巧妙なフェイクニュースじゃないかと疑ったり、某国の新兵器に違いないと陰謀論を口にする。宇宙人が現れたのだという荒唐無稽の話よりも、どこかのお国が侵略を始めたとか、プロパガンダのために映像を作ったのだと信じるほうが至極もっともらしく思えた。
宇宙船の出現から一週間ほどたったある日のこと、空を覆い隠す円盤が突如として消え去った。それは本当に一瞬の出来事で、人々は一週間ぶりに降り注ぐ太陽の光を目の当たりにしても、それがいったい何を意味するのかしばらくの間理解できなかった。
宇宙船がいなくなったことはすぐさま話題となり、人々は喜んだ。ニュースには「これでやっと洗濯物が乾くわね」と安堵する人々が映っている。こうして大事件は終わりを迎えたかのように思えた。だが、人々が安心したのもつかの間、宇宙船は消失と同時にヨーロッパの別の国に出現していた。宇宙船が出現した新しい街では人々は嘆きながら、遠くの街へと避難を始めていた。
だが、新しい街でも宇宙船は沈黙を続け、一週間ほど経つとまた別の国へと移動した。宇宙船はそんなことを幾度となく繰り返し、ヨーロッパ、アジア、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカとあらゆる場所に現れた。一時期は南極や北極でも宇宙船が観測されたとのことだった。
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