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【756/1096】理由のない場所①

『理由のない場所』
という本を読んでいる
息子を亡くした方の本
彼は自ら亡くなったようで
[著者はその一ヶ月後から
この本の執筆を始めた]
と大抵の作家紹介に書いてある

一ヶ月後から が強調して見える
当事者からすれば
一ヶ月から作家である彼女が
執筆してしまうことに
気持ちが重なる気もする
作家でもないわたしでさえ
数ヶ月後からnoteを始めたのだから
かくことが生業の人の
思考と感情とことばと現実の
ことばにならないものたちを
文として紡いでいくことは
自然に思える

当事者でもなく作家でもない人には
こどもの死後すぐに執筆するなんて
キャッチーなコピーなのかもしれない

いずれにしても
まだ途中だけれど
キャッチーな内容ではない
現実のようで現実でなく
詩のようで詩ではない文がつづく
根底に悲しみと絶望があり
うわべを雲のような霞のような
ことばのやり取りが続いていく
うつつのようで夢のような
とりとめがない会話の羅列
でも わたしにはわかる
亡くなった彼との思い出やクセの話
途切れなく会話を続けたい気持ち
文全体から漂うどうしようもなさが
わたしにはよくわかる

匂ってくるような文を感じたのは
始めてかもしれない
ことばが書かれているし
状況や意味合いもわかるのだけど
伝わってくるのはその曖昧な
不安な空気感の匂い
もわもわとこちらに漂ってくるようで
自分の身体からも
同じものが滲みでているのではないかと
心配になる
隠しきれないものはある
それは他者に見えない形で伝わる

作家は本に文にエネルギーをこめる
なんて聞くけれど
この本にはその時の著者の
母であり作家である思いが
色濃く乗せられているように感じる
念 というよりも深い後悔と悲しみ
理解のできない現実への調整
それらを自分に重ねてしまうのか
嗅ぎ取り嗅ぎ分け 
悲しみのもやに呑み込まれていく

今のところ 話はたんたんと
すすんでいる(ように見える、読める)
リズムよく会話は進むのだけど 
読む進めることが苦しい
きみと重なる部分を探し
複雑な気持ちになる
本として読んでも難しいテーマだ
現実ならばなおさら難しいこと
大切な人が自ら死ぬことを
理解し許容することの難しさ
あくまでフィクションとして
書かれていることの意味

親であるからわかりたいし
受け入れたいのだけど
親であるから
亡くしたことへの悲しみの深さが
それらとうまくリンクしていかない
逆縁であることの苦しみ
そこなんだよね

どうすればよかったのか
考えてもわからず
わかったところで変わらず
受け入れるしかないことの
受け入れがたさが重くのしかかる
大変なことが起こった と
かなり時間がたってから実感する
そして 信じられなくて
夢の中のような時間もあり
わけがわからない

だからことばにするしかなかった
なんとか可視化して
どうにか自分に反芻させる
理解しなくていいから
反芻させて 身体を心を慣らしておく

人ってたくましいし憐れ

残された者の日々