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【684/1096】手向けの花

きみが小学生のとき
わたしのためにと
花を摘んできてくれたことがあった
きみが思っている以上に
とても嬉しかった
あの花がまた咲いている
この季節になると
花を握りしめて
青いランドセルを背負ったきみを
思い出すよ
生きていたころも思い出していた
よほど嬉しかったんだね

きみが生まれたときのことも
鮮明に覚えている
小さくて光に満ちた子どもに見えた
あのときの自分に
こんなことになることを
教えてあげたとしたら
結果は変わっていただろうか
愚問

きみは仏になった
お供えものはきみの好きだった食べ物
花を生けたいけれど
猫がいるから生けられず
別の所に飾っている
まさか 息子を看取るとは
そんなこと あるんだね

この悲しみをどうしたらいいものか
たんたんと 普通に暮らしながら
小さく小さく 悲しみを吐き出す
空に溶かすように
すこしずつ 昇華する
あとからあとから湧いてくる
終わりのない 行き場のないもの
出さなければ膨らんで
いつか破裂しちゃうかもね
破裂しちゃった方が楽かもね
愚鈍

手向けの花をそなえる
きみのことを思って

こんなことになってごめんね
生きていてほしかった
変わらない思いは
誰かと共有されぬまま
もやもやと漂っている

きみが亡くなったことを口外できない
受け入れられない
どうしようもなく悲しくなるとき
ひとり噛みしめるほかない
こんな苦しみがあったとは
無知

前向きにいられるときは短い
苦心してなるべく良い方へ
頭を使う
こころは 気持ちは
そんなに早くついてこられず
ぽっかり空いた穴をかかえて
それでも前へ 前を向く
しんどい

今日もありがとう
残された者の日々