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【727/1096】ふり返り

ここ数年 秋口は山に行っている
自然の中に身を置き
普段の生活からはなれてみる
緑が足りなかった
いつもそう思う
緑の多いところに住みたい
そう思う

田んぼの多い地域で育った
山もあったし 川もあった
きみたちもできたら
そういうところで育てたかった
ネックは仕事
大人の仕事にこどもは振り回される
どんな家庭もそうだけど
うちは特にそういう傾向が強い

仕事がなければ食えない
食えるほど働けることに感謝すれど
ライフワークバランスが取れないこと
それがネックだった

自然の中に行くことで
子どもたちものびのびしてるように
見えた
きみも そういうところが
好きだったよね
キャンプにもよく行って
焚き火だの 川遊びだの
楽しかったな

友だちは人でなくてもいい
というのは大人の意見で
学校という集団で
友だちに恵まれなければ
居場所はない
そのことに無頓着すぎた
苦しい学生生活を送っていたのか
今となってはわからない
普通の子のそれよりは
友との楽しみは少なかっただろう

世界は広い けれど
子どもには家庭と学校しかない
第三の場所として
習い事などもあるけれど
ひとときすぎて救いにならなかったのか
わたしはわたしを基準に考えすぎ
きみの立場や思いを知らなさすぎた
話せる環境 関係性があれば
もっと違う結果になったのかな

「それを知っていたとしても
止められたかどうかはわかりません」
はっきりと専門科は言った
迷いのないお言葉

環境要因よりも因子要因の方が
強いというエビデンス
その人のもつ因子が
環境により発動されるかされないか
生まれたときから
同じ親でも個性は違う
それを目の当たりにしている
因子のせいと言われたら
どうしようもないじゃないか
どうしようもなく悲しい

何が要因であれ きみはいない
きみは死ぬことにした
なにがあったか全てはわからない
ふり返れどふり返れど
解明しない謎
想像するきみの苦しみが
全てあたっていることもないのだろう
死生観の違いも因子なのか

怒りを内包している
自分に 家族に きみの周りの人に
世界に 怒りを感じている
静かにふつふつと
ポーカーフェイスで
おだやかを装い いかっている
悲嘆の過程の怒りだとしたら
必要なときなんだろう
喪失ってなんて残酷なんだろう

自分はどうしたいのか
そこからはじめるしかないか
今年も山へ行こう
きみもいたらよかったな

残された者の日々