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【687/1096】とんぼ

8月前にとんぼが飛んでいる
立ちどまり目で追う
青いとんぼ 赤いとんぼ

とんぼを捕まえたくて
網を長く持ち上げ
全力で振り切るきみを思い出す
なにかと不器用で
(手先は器用だったが)
ぶんぶんと振り回す網に
とんぼは入らない
狙いを定める周到さより
振り回すことが目的のような
そんな姿を思い出す
そんなきみがすきだったよ

夏に遊びに出かける子どもたち
街中 道端 いろんな場所で
子どもたちを目にする
トリガーが多い
きみを思い出し悲しくなる
悲しくなりながらも
きみのことをふり返ることの
意味深さを思う

忘れないし忘れられるわけがない
いなくなるんてひどいな
ひとりつぶやく
置いていくなんてひどい
ひどいよ
まぶたが重くなる
また頭でばかり考えている
ぐるぐるとめぐる思考
つられて気持ちの波が来る

我に返り
また歩きはじめる
暑い暑い街の中を
日傘もささず進んでいく
下の子がいうように
この強い日差しには
たしかに日傘が必要だね
しかしながら傘はない
太陽に照りつけられ
ヒリヒリジリジリした道を
意地になって進んでいく
負けるもんか とも思う
負けてたまるか とも思う
そういう自分は強いのだろうか

行くべき道を進みながら
出る時間が早すぎたことに気づく
どこかで時間を潰さねば
涼しいところを探しあて
外のまばゆさをガラス越しに
この文を書いている
鳥が歩く姿が見えた
生きるものはすべてきみだ
痩せた鳥はきみに似ている

またいつか会えますように
そんな勝手なことを思わずにいられない
ごめんね ありがとう

残された者の日々