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【基礎講座3】プロセス型アウトライナー

「アウトライナー」はジャンル名

ここまでずっと「アウトライナー」という言葉を使って話を進めてきましたが、アウトライナーというのはジャンル名なのでした。「アウトライナー」という特定のアプリがあるわけではない。そのあたりがたとえば「Obsidianの話」をするのとは勝手が違うわけです。

(※正確に言うと「アウトライナー」という名の特定のアプリはあるのですが、それはここで言う意味でのアウトライナーではないのです)

最近アウトライナーに触れて、これから新しくアウトライナーライフを始めたい。そんな場合、どのアウトライナーを選べばいいでしょうか。

もちろん、好みのアウトライナーを使えばいいのです。特に最近は新しい魅力的なアウトライナーが次々と登場していて、2015年に『アウトライン・プロセッシング入門』を出した頃とはずいぶん状況が変わっています(素晴らしいことです)。

ただ、2022年5月時点で「はじめてアウトライナーを使ってみたい」という人に勧めるとするなら、私はWorkFlowyかDynalistを推奨します。ともにアウトライナーとしての基本機能をきちんと備えている一方、機能もUIもシンプルですぐに使い始められる。ウェブブラウザさえあればOSを問わず使えて、モバイルアプリも提供されている。

そして何よりも、両者がプロセス型アウトライナーだからです。

プロセス型とプロダクト型

私はアウトライナーを二種類に分類しています。ひとつはプロセス型、もうひとつはプロダクト型です。

プロセス型アウトライナーは、「見出し」や「本文(内容)」という概念を持たず、インデント(字下げ)の深さのみで階層を表現するタイプのアウトライナーです。WorkFlowyやDynalistの他、Mac用のOmniOutliner、最近登場したBike、Transnoなどが該当します。Roam ResearchやLogseqのアウトライナー部分もそうです。

以下はDynalistの画面です。見出しとは関係なく階層化されていることがわかると思います(カッコのついた段落)。

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もう一方のプロダクト型アウトライナーは、「見出し」と「内容」を区別するタイプのアウトライナーです。「見出し」として定義された段落をアウトラインとして抽出するMicrosoft Wordのアウトラインモードなどが該当します。ウィンドウをアウトラインペインと内容ペインに分割して表示する2ペイン型のアウトライナーもプロダクト型です(必然的に見出しを抽出することになるからです)。

以下は同じ部分のWordアウトラインモードでの表示。見出しが本文とは区別されている一方、見出し以外の部分(本文)は階層化できません。

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この分類は、従来あまり意識されてこなかったように思うのですが、アウトライナー選びの際にけっこう重要な視点だと思っています。

私がお話しするアウトライン・プロセッシングの技法は、基本的にプロセス型アウトライナーを使うことを前提にしています。

プロセス型は流れる思考の過程(プロセス)を扱う

自分でも言葉にしきれていないモヤモヤとした考えを形(たとえば文章)にしたいとします。そもそも言いたいことがわかっていない場合もあれば、言いたいことはわかっているけれど表現の仕方がわからない場合もある。

そんなときには、頭の中にある思いや考えをアウトライナー上に書き出して、階層化してみる。折りたたんで全体を見ながら組み替えてみる。その過程で新たに浮かんできた思いや考えを書き加え、また同じことを繰り返す。その過程(プロセス)の中から、言いたいことや結論を浮かび上がらせていく。

そんな使い方に適しているのが、機能上「見出し」と「内容」の区別がないプロセス型アウトライナーです。このような使い方では、見出しなのか内容なのかが確定していない思考の断片を扱うことになるからです。

この目的でプロダクト型アウトライナー(たとえばWord)を使おうとすると、見出しに縛られてしまって自由に考えられなくなる。自由な思考は見出しとは関係なく流れていくからです。見出しがあると流れがせき止められてしまうのです。これは「はじめにアウトラインを決めてしまうと頭がアウトラインに縛られてかえって書けなくなる」理由のひとつでもあります。

ひと言でいえば、プロセス型アウトライナーは、流れる思考(の過程=プロセス)を扱うアウトライナーです。

私はある時期Wordのアウトラインモードをメインのアウトライナーとして使おうとしてうまくいかず、その理由を考える中でこの違いに気づきました。

プロダクト型は完成品(プロダクト)として固定する思考を扱う

誤解しないでほしいのですが、これは「プロセス型はプロダクト型より優れている」という意味ではありません。私はかつてプロセス型アウトライナーのことを「真のアウトライナー」と表現していたのですが、これは浅い考えだったと今では思っています。プロセス型とプロダクト型とでは目的が違うのです。

文章(特に長い文章)は、「だいたいできた」ところから「完成」までの段階にいちばん労力がかかるものです。プロダクト型アウトライナーはこの段階で力を発揮します。モヤモヤしていた思いや考えがだいたい形になってきた後の話です。この段階では何が見出しになるかは概ね定まっています。だから見出しに頭が縛られる心配はありません。

プロダクト型アウトライナーでは、アウトラインの状態と本文の状態を行き来できるのが普通です(Wordの場合ならアウトラインモードと印刷レイアウトモードを切り替えることによって。2ペイン型アウトライナーの場合はアウトラインペインと本文ペインという形で)。

つまり、文章としての仕上げをしつつ、必要に応じてアウトラインに戻って全体の構造を見直し、場合によっては構成を組み替えてしまうことができる。

実際に私は文章、特に長い文章を書く際には、文章の全体像が見えてくるまではプロセス型アウトライナーを、そこから文章が完成するまではプロダクト型アウトライナーを使うようにしています(このあたりの使い分けの具体例は『書くためのアウトライン・プロセッシング』に書きました)。

プロセス型が流れる思考(の過程=プロセス)を扱うのだとすれば、プロダクト型は完成品(=プロダクト)として固定する思考を扱う、ということになるでしょうか。

自由に考えるにはプロセス型

というわけで、私にとってはプロセス型もプロダクト型も手放せないのですが、生活の中で自由に考えるためのアウトライナーとしてはプロセス型であることがマストです。

繰り返しになりますが、現時点ではじめてアウトライナーを導入するならシンプルで汎用性があるWorkFlowyかDynalistがお勧めです。もちろん他のプロセス型アウトライナー(たとえばLogseqのアウトライナー部分)でも同じことができます。

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