Tak.
アウトライナーのエバンジェリストTak.がお届けする、アウトライナー(アウトラインプロセッサ)を活用して文章を書き、考え、生活するマガジン。アウトライナー活用のテクニックはもちろん、アウトライナーを通じて見えてくるディープな世界を、書籍とはまた別の形でお届けします。月2回以上更新予定。
倉下忠憲とTak.が、デイリータスクリストとアウトラインの使い方について書いていく、つもりの連載です。
5年分のブログ記事をベースにセルフパブリッシングによって作られた、やままあきさんの電子書籍『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです』ができるまでの全プロセスとを紹介しつつ、セルフパブリッシングについて考えます。
無神経について考えていた。 ある著名な人が、自らが健康であることを当然の前提として、深酒のためポテンシャルを発揮できないでいたそれまでの自分を「重いハンデを背負ってきた」と表現しているのを目にしたからだ。 悪気のない冗談(あるいは冗談にさえ至らない軽口)なのはわかっているけど、率直に言って俺の愛する人が背負ってきたハンデを背負ってみやがれと思った。 ■ 無神経な言葉を放つ人に、無神経の自覚があった試しはない。自覚がないからこそ無神経なのだ(自覚のなさには無知、気を抜い
……というのは、かつての上司に聞いた「昔の話」。80年代後半から90年代前半くらいの話だろう。 武勇伝的誇張はあるだろうし、その時代のあらゆる職場がこうだったはずはない(その会社は広告業界の周縁部に位置する。国会中の旧大蔵省とかマッキンゼーとかがこうだったとは思えない)。時期にもよるだろう(繁忙期ではなかったのかもしれない)。 でも、父(造船業界)に聞いた話からも、ぼく自身が最初に就職した会社(電機メーカー系ソフト開発)で新入社員として観察した様子からも、この時期の内勤の
私は長いこと、アウトライナー(特にプロセス型アウトライナー)は「動かして考える」ために使うものだと考えてきました。静的な情報ではなく、今まさに生まれつつある、あるいは変化しつつある情報を扱う道具。あるいは「過去」ではなく「未来」を扱う道具。 だから、情報の蓄積と整理にアウトライナー使うというイメージがあまりありません。そういう目的に使っていけないことはまったくないのですが、それなら他にもっと適したツールがある、と思っていたわけです。その考えは基本的に今も変わっていません。
A:「無理をしない」ことは現実的にほとんど不可能なので「無理をしない」というコンセプト自体が意味のないもののように感じられる。 B:重要な局面で願うような結果を得るためにはほとんど必ず無理が必要だ。 ■ Aタイプの無理の中でも特に問題なのは、無理をすること自体がデフォルトになっている状況、無理をすることを前提にものごとが回っている状況なのだが、こんなことを指摘すること自体が無意味で無粋に思えるくらいAタイプの無理は当たり前になっている。 そしておそらく、多くの人が「大
※この記事は、KDPでの出版を念頭に作成中の『想像する文章エディタ(仮)』の一部(の予定)です。 ※2024/11/18 タイトル含め、大幅に修正しています。 作家のワープロ・パソコン1991 かつて『ASAHIパソコン』という雑誌がありました。その1991年1月1日・15日号の特集は「私のワープロ・パソコン」。執筆にワープロやパソコンを使っている作家10人に執筆について聞くという企画です。30年以上前の雑誌記事を今さら引っぱり出してきたのは、文章エディタに対する「想像力
↓ 文章の持つ推進力・指向性は発想を生み出す力にもなるし、修正を難しくするしがらみにもなる。 前者を有効に生かす手法がフリーライティングで、後者を断ち切るツールがアウトライナーだ。 フリーライティングは自分の中の生成AIに身を委ねるみたいなところがある。 生成AIの時代には、フリーライティング結果に組み込まれた固有のランダム性がより意味を持つようになる。 ランダム性を取り繕い、必然性と普遍性を与えようとする努力が発想を生む。 ↓
仮見出し 書きかけの文章が行き詰まっている。何かが良くないことはわかるのだが、それが何なのかわからない。そんなときに役立つのが仮見出しとアウトライナーの組み合わせです。 仮見出しとは、最終版の文章には残さない前提の、文字通り「仮」につけておく見出しのこと。 仮見出しの使い道はいろいろありますが、いちばん有名(?)なのは「未使用」ですね。「未使用」は、書きかけの文章に「未使用」という見出しを立てておいて、不要だと思うけれど削除していいか迷う断片や、思いついたけどどこに入
集団を構成するひとりひとりはごく普通の(善)人なのに、集団としてはだんだん悪に近づいていくようなありようをいろんなスケールで目にしてきたし、そういう集団がいちばん怖い。 心から正しいと思うことをするために信念を持ち、全身全霊をかけて邁進した結果ファシズムに寄っていくような指導者がいちばん怖い。 「置かれた場所で咲きなさい」という言葉も「正しいことをしたければ偉くなれ」という言葉も、一面の真実と有効性とともに、いつの間にか悪に接続してしまう可能性を含んでいる。 ■ 必要
どう考えても正しいと考えられることを表立って支持しない人がいるとき、その理由はその人が無知だからとは限らない。そのとき無知を「啓蒙」しようとしてしまうことで支持の可能性すら失ってしまうことがある。 ■ 辛そうにしていなくても辛い人はたくさんいるし、憤っているように見えなくても憤っている人はたくさんいる。 ■ 「どうして君は●●なんだ」と責める口調で言う人は「どうして」と言っているわりに理由には興味がないみたい。 ■ 謙遜のつもりで自分を傷つけ、そのことを通じて他人
別名アイデアプロセッサ アウトライナー(アウトラインプロセッサ)は、その初期から「アイデアプロセッサ」という別名を持っていました。実際、最初のアウトライナーであるThinkTankの広告ですでに「the first idea processor」という表現が使われています。だから「アイデアプロセッサ」は100%正当性のある(?)表現なわけです。 にもかかわらず、私は「アイデアプロセッサ」という言葉にずっと違和感を持ち続けてきました。自分自身でその言葉を使ったことは、たぶ
※この記事は、KDPでの出版を念頭に作成中の『想像する文章エディタ(仮)』の一部(の予定)です。記事の前半はこちら。 まだ見ぬ文章エディタ 私にはまだ見ぬ憧れの「文章エディタ」があります。文章エディタとは文字通り「文章を扱うための機能を持ったエディタ」という意味の造語です。 それは「テキストエディタ」とどう違うのか、と思う人がいるかもしれません。文章を書くためにテキストエディタを使うことだってできるわけだし、実際にそうしている人もたくさんいます。でも本当は「文章」を扱う
ある人の明るさやおおらかさに救われるということがある。 でも、明るくおおらかに振る舞うことってそれほど簡単なことではないよね。 天然で明るくおおらかな人は、むしろ無神経に見えたりするかもしれない。 何が言いたいかというと、好ましい明るさとおおらかさの人はもしかしたらかなり無理をしているのではないかということ。 だから簡単に「救われ」たりしてはいけないのではないか。 もちろん救われてもいいのだが、救われるとしてもそういう人だから好きなだけ当然のように救われてもいいと思ってはいけ
※この記事は、KDPでの出版を念頭に作成中の『想像する文章エディタ(仮)』の一部(の予定)です。 広い意味での物書き 私がこれまでしてきた仕事は一貫して「文章をたくさん書く仕事」でした。調査報告書、企画書、提案書、調査票、議事録等々。プレゼンのスライドも文章です。だから「文筆業」ではありませんが、広い意味での「物書き」ではあります。 ここでいう「物書き」とは、英語のwriterのイメージだと思ってください。writerには職業としての文筆業者だけでなく、「日常的に多くの
「良い文章のための方法論」 『思考のエンジン』の奥出直人が、アウトライナーを使わずにアウトライナーによるプロセスライティングをシミュレートする方法を解説した文章があります。『パソコンを思想する』という1990年のムック本に掲載された「良い文章のための方法論」という文章がそれです。 アウトライナーをシミュレートすると言っても、単に昔ながらのアウトライン(≒構成案)を作って書くという意味ではありません。あるいは付箋やカードを使って構成を検討するということでもありません。プロセ
「ライフ・アウトライン実践」の連載は今回で(内容的には前回で)一応終了です。予定よりもずっと長い時間がかかってしまいました。なんと一年半。 私事になってしまいますが、「ライフ・アウトライン実践」連載開始直後に私自身のライフ(生活と人生)に大きな変化が生じたことが、時間がかかった大きな理由です。今さらながら「ライフってこんなに大変なんだ」と実感しています。 もちろん、そのライフ状況を乗り切る大きな助けになっているのがライフ・アウトラインです。それはもう掛け値なしに。アウトラ
「簡単なことなど何もない」というのは大人になって学んだとても重要なことのひとつだ。 「難しく考えすぎてはいけない」というのも大人になって学んだとても重要なことのひとつなので、なんだか矛盾している。 ■ マッチングアプリの広告は、出会いの瞬間とカップル成立後のイメージしか見せてくれない。マッチしてから成立までのプロセスと成立した後の継続も出会いと同じくらいかそれ以上に難しいものだと思うが、その部分は見せてくれない。 もちろん難しく考えすぎると発生する恋愛も発生しなくなる