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ご近所映画と嗚呼プログラムピクチャー

 前回は悪魔とキツネのライダー映画でしたが、今回はカワウソとトカゲのコンゲーム映画のこと。人間、あればあったで何も言わないくせに、無くなると『寂しい』とか言ってしまうわがままな生き物です。さほど客足が多いとも言えないお店が、いざ閉店するとなれば長蛇の列ができる、あれです。
 
 本当に人間は身勝手なものです。お正月に漫才番組や長時間スペシャル時代劇がなくなると、普段はろくに見てなかったくせに『見たいなぁ』とか言ってしまうものなのです。



  
 で『嘘八百なにわ夢の陣』です。シリーズ三作目、陶芸家佐々木蔵之介とと限りなくねずみ男な骨董商中井貴一コンビが、今回挑むのは豊臣秀吉の愛用した茶器! 怪しげな波動アーティスト、胡散臭い大阪万博、ではない秀吉博の連中を向こうに、幻の逸品をいかに作るか、いかに騙すか、というおなじみの展開。この「おなじみの展開」というフレーズとシリーズものであること、コメディであること、これはかつての『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』『トラック野郎』に連なるプログロムピクチャーの系列ではないか、と思うのです。さすがに盆暮れ正月、年二本上映というのは現在において難しく、2年に一本ぐらいになってますが、サクッと見れてそこそこ笑えて、続きがあればまたいそいそに見てしまう。この感覚を持った映画が絶滅しかかっている今だからこそ貴重な作品だと思うのです。もうね、感動の実話とか、○○万部のベストセラー、伝説のコミックの映画ばかり(予告編でやたらと演者が泣いてる映画)になってはしないか、そんな中でも貴重な存在なのです。可能であれば二本立てが好ましいのですが、それは今やもう無理ですね。


 
 で、前回見た仮面ライダー映画がまさに20数年、ちびっこの心をつかむプログラムピクチャー最後の砦だということに気づきました。そうなると名探偵コナンやドラえもんといった季節の定番アニメ作品もそうなるのですが、大人向けの高年齢の男女がくすくす笑える作品もあってもいいのではないか、と網のです、その責務を果たしているのが『嘘八百』 シリーズだと思います。

 それに部隊が大阪府堺市を中心に展開しているのも地元に住んでいるものにはうれしいことだし、今回はクライマックスでよく出かける狭山池博物館が舞台になっているのもうれしい不意打ちでした。佐々木・中井のトカゲカワウソコンビもノリノリ、彼らをサポートする贋作ドリームチームも健在、『とらや』の皆さん、ジョナサンの家族等々、主役と脇がしっかりしていれば、お客は安心し、あとはどうにもで話は面白く転がるのです。影のレギュラー・堺市博物館の学芸員塚地武雅はいつの間にか大阪城、狭山池にも出没する万能学芸員になって、いいシーンをぶち壊すスローモーション演技でしっかり笑いを取るのです。

 三本でおしまいと言わず、ぜひ4作目、5作目も作ってほしいこのシリーズ、次回はどこへ行くのか、あるいは再来年の大阪万博を皮肉るようなものになるのか、楽しみに待ちたいと思います。


 

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