石徹白Life1360日目2021年9月8日(水)【自然体験活動指導者(NEALリーダー)養成事業で「自然体験活動の技術(刃物)」の講師をつとめさせていただきました】
国立曽爾青少年自然の家(奈良県宇陀郡曽爾村)にて、2泊3日の指導者養成事業に伺いました。
参加者11名+担当職員2名で、講師5名(1~3コマを担当)でした。
まずは全体像をお伝えします。
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0.開催趣旨(2泊3日の全体)
・子ども達と一緒になって、安全に活動できるような指導者(グループリーダー)になるために、必要なことを学べる機会を提供する。
・自然体験活動指導者としての基本的な知識と技術を学べる機会を提供する。
・施設や地域を活用した体験を通して自然体験活動への理解を深めるきっかけを提供する。
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1.全体概要
https://note.com/takuyaonishi/n/n6040bd020f76#l0RRd
目次
今回、私は「自然体験活動の技術」を担当します。
内容は「火」と「刃物」です!!
※加えて、「自然体験活動の指導」を
急遽ピンチヒッターにて担当しました。
◆日程
◆会場
◆募集対象
◆募集人数
◆参 加 費
◆送 迎
■自然体験活動指導者(NEALリーダー)について
◆目的(趣旨)
◆講 師
◆具体的な日 程
◆申込み方法
◆募集締切日
◆現地への交通
≪申込・問合先≫
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2.全体の講義内容
対象者理解、自然体験活動の安全管理、青少年教育における体験活動、自然体験活動の指導、自然体験活動の特質(地域における体験活動)、など。
他の講師陣による内容も素晴らしいものでした。
これだけの濃い3日間で参加費が4000円なんて、破格すぎます!
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3.担当講義その1「自然体験活動の技術(刃物)」のテーマ
今回は「現在地の確認と次への一歩」です。
参加された一人ひとりが指導者としての現在地を自覚して、
今後の活動にいかせるような時間にしたいと思いました。
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4.アイスブレイク「刃物と言えば?」
刃物と言えば?という問いかけにあわせて、絵を描いてもらいました。
11人の内で5人が包丁を挙げました。さらにもう1人は出刃包丁でした。
他にナイフが2人。カッターナイフが1人。鋏と刃物の先端が1人でした。
世間的に日常で最も身近な刃物は「包丁」であることがうかがい知れます。
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5.チェックインワークシートで自分の経験を思い出す
いくつかの問いを挙げて、各自に記入いただきました。
例えば、
◆はじめて 「刃物」(種類は問わず何でも)を使ったのは、いつですか?
回答)
4歳~9歳(小3)までの幅がありましたが、5歳が5名で最多でした。
おおむね小学校低学年までに刃物を使う経験をしているようです。
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その他の質問としては
◆今までに何回ぐらい「包丁でリンゴの皮むき」をしたことがありますか?
回答)
「数えきれない」ほど多くの経験をしている方が4人いましたが、
10回以下の方が5人と最多になりました。
刃物を使う機会が減っている証でしょうか。
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◆象印調査シリーズ イマドキ小学生の生活体験に関する調査
これらに関連して面白い調査結果が公表されていますので、
みなさんと共有しました。
詳細はリンク先を開いてください。
https://www.zojirushi.co.jp/topics/shougakusei.html
グラフになっていますので見やすいです。
引用ここから=== ↓ ↓
”象印マホービン株式会社では、首都圏の小学生のお子さんをもつお母さんを対象に、「イマドキ小学生の生活体験調査」を実施しました。
1995年(平成7年)と20年後の2015年(平成27年)の2回。
”2015年の調査では、約9割の小学生が包丁でリンゴの皮をむくことができないという結果になっています。
「できる」10.1% 「できない」22.0% 「やらせたことがない」68.0%
1995年(20年前)
「できる」36.3% 「できない」29.0% 「やらせたことがない」34.7%)”
引用ここまで=== ↑ ↑
私の危機感は「できる、できないの手前」にあります。
20年間で「やらせたことがない」の割合が倍増している点が気になります。
「危ないことを知らないのが危ない」と思いますが、いかがでしょう。
子ども達だけでなく、大人や指導者の現状はいかに?
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◆刃物の使い道は?
各自2分間で、思いつく限りのことを書きだしてみました。
切る、剥く、刺す、研ぐ、きざむ、叩く、はつる、そろえる、割るなどなど。
各自が6~15個まで平均10.8個の使い道が出ました。
全体で共有すると他にも「投げる、振り回す、脅す」など物騒なものも出てきましたが、
ざっと短時間でも用途は25個以上あることを確認できました。
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6.歴史文化を辿る
ここからは、私の得意分野「考古学」を形にしたワークショップです。
1年を1mmとすれば、10年は1cmです。
100年は10cm、1000年は・・・?
1mですね。
そうして人間と刃物の関わりを辿っていけるように、
会場にずらりと並べてみました。
私が日常的に使っている刃物が9割で、
施設で準備いただいたものもあわせると
30点以上になりました。
現状で世界最古の石器は330万年前、
つまりは3.3km先の地点から人類が刃物を使い始めたということです。
こうなると物理的に会場内では収まりません。
それだけ長くお付き合いがあるということも言えます。
縄文時代の始まり16500年前、
つまり16.5mの地点には、
黒曜石を置いてみました。
石器時代は大昔のことだと思われますが、
現代でも目の手術に黒曜石は利用されることもあるそうで、
今も石器時代は部分的に継続しているとも言えます。
ともかく刃物と言えば、「包丁」かもしれませんが、
実は用途も形も使われてきた期間も広く大きく長くあります。
材質も金属だけとは言い切れません、
骨や貝、木だって刃物として使うことはできます。
手道具から電動工具や動力工具への変遷を辿っていく中で、
めちゃくちゃ脱線しそうになるのを我慢しつつ、、、。
みなさんの視点視野、可能性を広げる時間になったらと思い
対話しました。
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7.刃物を使う体験
鋏で紙を切りました。
日常にあるものをどれだけ使いこなせるか。
単純ですが子ども達と一緒に活動する際に、
日々の蓄積が滲み出てきます。
小刀で鉛筆削りもしました。
3本の小刀を使いつつ、軍手を使ったリスクマネジメントや左利きの方との関わり、刃物の状態を観察する事など、
体験から感じていただきました。
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8.鉈で薪割りをする
鉈を包丁と間違える子ども達がたくさんいます。
それは日常から薪が消えたことを意味していると思います。
かつては炊事や風呂の薪割りだけでなく、
枝打ちやちょっとした細工など、幅広く使われてきた刃物です。
燃料革命もあり、薪を使うことがなくなって、
「危ない」という一言で刃物から遠ざけられている現状。
人類が使ってきた道具の中でも、
特に長くおつきあいしてきた刃物。
今一度、見直してみるのはいかがでしょう。
さて、講義の中では頭だけでなく体験を交えて、
一人ひとりが身体知を伴って学んでいただけるよう進めています。
刃物を使う最後は、鉈で薪作り。
3種類の太さに割っていただき、
夕食後にはそれを使ってお湯を沸かします。
安全に鉈を使うポイントをお伝えしつつ、
あとは実践あるのみ。
室内でも鉈を使えるクラフトホールの設定がとてもありがたく感じました。
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9.危機管理の問いを立てる
刃物を安全に使うためにできることは?
それぞれが問いを立てる機会にしていただきました。
あえて回答や共有の時間はとりませんでした。
時間も足りないのと、翌朝には國學院大學の青木康太朗氏による「自然体験活動の安全管理」を受講することになっていましたので、
そちらにお任せするようにしました。
問いを立てるということは意識がそこに向かいます。
答えが自ずから出て来ることもあります。
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10.ふりかえりタイム
各自の感じたこと、気づき、学び、次への一歩を文字にしていただきました。部分的に抜粋させていただきます。
・刃物をテーマにしたワークショップではありましたが、
歴史の見せ方や可能性を広くもっておくことの重要性など
指導者としての視点が多く盛り込まれた内容でした。
・刃物にとても詳しい人には、初めて会ったのでお話しや刃物、
考古愛(?)がとても新鮮で面白く取り組めました。
・扱いに慣れてきたころが一番危険。
・刃物の使い方は多様であるとわかった。
・現在地の確認という言葉と、その確認作業の方法が面白かったです。自分の次の一歩につなげたいです。
・あらゆる可能性があるのでもう少し刃物とは一体何かを自分がよくわかっておく必要があると感じました。
・一般的に刃物と思われていない物も使い方で刃物と呼べることが、
自分の中では面白く、まさにサバイバル感と思いました。
・自分の視野がどれほど狭いかを(現在地を知る)実感する良い経験、体験となった。
・指導する前に自分がやってみる。使ってみることが非常に大切だなと改めて感じた。
・刃物だけではなく、物の枠をなくすことで可能性が広がる。
・刃物に対するイメージや可能性を広げることと、危機管理上の基本の両面を体験活動に入れることが重要だと思いました。その2つを教える場面をきりかえることで集中力を持ちながら楽しく学べると知りました。
・切り方について決まったやり方を押し付けずに、個別の切り方をみんなで検証するのが面白かったです。
・道具は普段のメンテナンスが大切です。使いこなすのは回数と慎重さが大切。
・何でも危ないと言って遠ざけるのではなく、正しく怖がらせることで、
安全に使えるということがわかった。どうしてそうするのか、理由をしっかりと伝えるのが大切だと改めて感じた。
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11.おわりに
体験活動は生きるを学ぶこと。
刃物も使い方次第でいかようにもなる道具であり、
1つの正解ではなく、
一人ひとりの人生が滲み出てくるもの。
扱いも学び方も違いがあって当たり前です。
刃物を通して、尊重することの意味に改めて気づく機会をいただきました。
コロナ禍において感染症対策をとりながら、多くの準備物や会場手配など、参加者の皆さんの学びを下支えしてくださった職員の皆さんに感謝です。
ありがとうございました!
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講師◆大西琢也プロフィール
火起師(ひおこし)、NPO法人森の遊学舎代表、元 石徹白エコツーリズムと地域起こし支援隊。1975年2月20日、和歌山県生まれ神奈川県育ち。東日本大震災に遭遇し福島県南会津町→石徹白地区(岐阜県郡上市)に避難移住。地域に根ざした「場づくり」や「共に育むキョウイク」に取組んでいる。
https://note.com/takuyaonishi/n/n2eac871116a0
根っこを育む自然学校 森の遊学舎 http://ugaku.com
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