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マラソン前のトイレ事情~原因と対策~
マラソンのスタート前、トイレは大混雑します。
特に冬のマラソンの混雑はすさまじく、長蛇の列ができます。
なのに一度トイレにいったら、また行きたくなる!なんていうことはないだでしょうか。どうしてこんなにもトイレが混雑し、そして我々もトイレに何度も行きたくなってしまうのでしょうか。
1.膀胱冷却反射
まずは会場につくと、着替え→荷物預け→スタート地点へという流れで準備される方が多いのではないでしょうか。ですが尿意は、着替えるために脱いだ瞬間から始まる方が多いと思います。
それは膀胱冷却反射が原因とされています。
1-1.膀胱容量減少
まずは脱ぐと体が冷気にさらされます。すると全身の筋肉が緊張するように、膀胱の筋肉が緊張して膀胱の容量が減少します。本来は300ml程度の尿を溜められる膀胱ですが、少ない尿量でもう一杯となってしまう訳です。
また、膀胱が冷やされることで尿意を感じやすくなります。麻酔下のモルモットの研究ですが、特に外気温が変わらなくても膀胱内に冷水を注入すると、温水よりも少ない量で膀胱筋反射がみられたという文献があります。
要は冷たい外気にさらされると、また膀胱を冷やしてしまうと、そんなに尿が溜まっていなくても尿意を感じるわけです。
2.寒冷利尿
2-1.寒冷利尿~全身の血管が収縮すると尿量が増加する
膀胱冷却反射で、着替えてトイレに行ったらハイ終わり!!ではありません。その後も何度もトイレに行きたくなる方が多いと思います。それは何ででしょうか。
それは寒さで主に手足の血管が収縮した結果、血液が臓器に集中します。そして腎臓へ血液が集まった結果、腎臓がいつもより多くの尿を作り出します。結果何度でもトイレに行きたくなる訳です。
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(三上春雄.南極における寒冷利尿の研究.1997)
寒冷下では、特に直後から30分にかけて尿量が増加するという報告もあります。その後暖まってもしばらくは尿量は多いままですから、スタートから5-10kmまでのトイレが混雑するわけです。
2-2.寒冷利尿の落とし穴
寒冷利尿で何度もトイレにいくと、それだけ体が脱水になります。そしてナトイウムやカリウムというミネラルもしっかり喪失します。
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5~10km程度なら、体が軽くなっていいと思うかもしれません。ですがほんの15分程度の持久力運動でも能力の低下がみられたという研究もあります。ましてや脱水が問題になるフルマラソンでは、スタート前から大きなハンデを背負うことになります。
できればスタート前は寒い環境に身を晒さないことが大事です。
3.対策
3-1.スタート前に体を冷やさない
スタート前はギリギリまで体を冷気にさらさないこと。脱いでトイレに行ったすぐスタートが理想です。
ですが実際のレースでは、そういうわけにもいかないと思います。できれば着替てもスタートまでは、着脱しやすい手袋やアームウォーマー、ビニール袋で保温するのがよいと思います。
3-2.薬は?
膀胱冷却反射を抑制するためであれば、デトルシトール、ベシケアとった抗コリン薬や、ベタニス、ベオーバといったアドレナリン作動薬が有用であるとされいています。
ですが血圧が急上昇したり、不整脈が引き起こされる可能性のあるマラソンでこのような薬の服用はおすすめできません。
他、八味地黄丸は皮膚をあたためて寒冷ストレス下の尿量・尿回数を減少させたという文献もあります。もしお困りでしたら、試してみてはいかがでしょうか。過度のランニングで低下すると言われる低テストステロン、いわゆる男性更年期にも効果あるとも言われています。