死神は1マイルを4分で走る
速く走ると死ぬ?
高強度で長時間の運動は、健康へ悪影響を引き起こすのではないかという見解があります。とくに運動量と心臓イベントの間には「U字型」「逆J字型」であるとする文献もあります。
実は昔、人間は1マイル(1600m)を走るのに4分を切るのは不可能で、それに挑戦すると死ぬと言われていたそうです。そんな1マイル走の4分切りに初めて成功したのは1954年で、イギリスの医学生のロジャー・バニスターでした。その際、バニスターさんは成功した際に「私は死んだ」と思ったそうです。ですが彼はもちろん死なず、それどころか88歳まで生きることができました。
実は高強度で長時間の運動は健康に悪影響というのは、主にエリート市民ランナーについて研究したものです。それをオリンピック選手のような一流のアスリートに当てはめてよいのか?世界選手権に出場するような滅茶苦茶速いランナーは、逆に長生きするのではないかという仮説から、それを検証した文献をみていきたいと思います。
文献より~死神を追い抜く?~
そんな死神が待っていると言われる1マイル4分切りを成し遂げたのは、1954年のバニスターさんを1人目として、その20年後の1974年までに200人になったそうです。その200人を年齢や性別、国籍で一致させた一般人の生存割合と比較しています。
なんと「挑戦すると死ぬ」と言われていたことを成し遂げた結果、一般の人より長生きする結果になったのです。死神が待っている1マイル4分を超えると、死神を追い抜いて一般人より長寿となるのです。そして1950年代、1960年代、1970年代と年代別に比較してみます。
結果年代別に見ても、それは普遍的なものであるように思えます。そしてこの文献のタイトルは、「Outrunning the grim reaper: longevity of the first 200 sub-4 min mile male runners(死神を追い抜く:1マイルを4分未満で走った200人目までのランナー達は、長生きだった)」としています。長く生きるために死神を追い抜くには、1マイル4分未満で走らないといけないのかもしれません。
現代のランナーで死神を追い抜いたのは?
この文献は、一般市民ランナーもガチで走って頂上を目指すと長生きするというものではありません。そして1マイル4分切れたランナーと切れなかったランナーで比較したものではないので、1マイル4分のライン上に死神がいるとも、追い抜くとも言い難いこともあります。
ですがそれを踏まえたうえで、1マイル4分を切ると長生きするデータがある、そんな目で競技を観戦してはいかがでしょうか。1600m走は国際大会での種目にはありませんが、近似した競技と成績でいうと1500m走で3分45秒未満です。オリンピックではさすがに予選でも全員クリアしていますが、日本選手権では昨年は8人が死神超え、今年は超えられなかったようですね。
速く走れる優秀な遺伝子を残すため、死神を追い抜けるようなランナーには長生きして欲しいですね。
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