第6波襲来の中、伝えたいこと
ついに第6波が来ました。
ところが幸いにも、第6波の流行株は、弱毒化したオミクロンでした。
これをどう捉えたらよいのか・・・
表向きには、国から言われた通りに自粛して、
私生活は、まだまだ緩んだままの人が多い気がします。
「コロナはただの風邪」
「感染力は強いが、死亡者はほとんどいない。」
そんな情報を信じている人が多い印象です。
実際はどの程度感染しやすいのでしょうか。
そしてどの程度重症化しやすいのでしょうか。
1.新型コロナ~オミクロン株の力
オミクロン株は昨年11月にアフリカで見つかった変異株で、
その後12月にイギリスで蔓延、その感染力に世界が驚嘆しました。
南アフリカやイギリスから報告が上がり始めていますが、
まだまだ情報不足で何とも言えないというのが実情だと思います。
南アフリカやイギリスとは、ワクチンの種類や接種のタイミング、医療情勢など違う事ばかりだからです。
でも情報がそれしかないので、参考にしてまとめてみます。
・オミクロン株は季節性インフルエンザより、7.5倍程度感染しやすい。
⇒2度ワクチンをうつと2週間後に2.5倍に減、半年たつと7倍まで上昇。
⇒3度ワクチンをうつと2週間後に2.3倍に減、そして少しずつ上昇?
・発症したら14%が入院が必要になる。
⇒2度ワクチンを接種すると4%、半年たっても7%程度になる。
⇒3度ワクチンを接種すると2%程度で済む。
・発症したら死亡リスクは0.4%程度(この値がワクチン接種者を含むか不明)
おおよそこんな感じと思います。
ちなみに季節性インフルエンザの入院リスクは0.012%、死亡リスクが0.001%です。
以上からワクチン未接種の場合、季節性インフルエンザに比べて新型コロナのオミクロン株は、
感染リスクが7.5倍、入院リスクが1167倍、死亡リスクが400倍となります。
弱毒化したという数字も出ていますが、
ただの風邪とは言い難い数字なのが分かってもらえると思います。
2.新型コロナ~オミクロンの印象
自分の病院の発熱外来でも、年明けからコロナの陽性者が多くなりました。
東京都の陽性者数のように、あっと言う間に増えました。
以前の変異株と同じように軽い風邪のような症状の人もいれば、
若いのに、インフルエンザのように相当つらそうな人もいます。
忽那先生も言ってますが、特に咽頭痛の割合が多く、そして強い印象です。
関係のない病気で入院した方で、念のため検査した方からも、
コロナウィルスが検出されたりします。
そして入院者も段々増えてきていますが、
沖縄の病院では約半数が65歳未満と聞きます。
高齢者でなくても注意が必要です。
3.医療のひっ迫はどのくらい?
3-1.発熱外来
そして医療現場はだいぶ緊迫しています。
東京都のモニタリングの資料からみてゆきます。
自分の病院の発熱外来の予約は連日一杯ですが、なんとか回っています。
東京都のコールセンターも、あっという間に夏の第5波なみになりました。
そしてまもなく検査がまわらなくなりそうです。
もしかすると今後、薬局で売っている抗原キットや、
ネットで購入するPCRの検査パックが不足するかもしれません。
市販のキットやパックで陽性の場合、医療機関の受診を勧められます。
ですが、実際は受診しない方も多くいます。
そう考えると、潜在的な感染者はもっと多いかもしれません。
3-2.コロナの入院
そして入院については早くもひっ迫しています。
もともと病院は、夏に入院患者が減って冬に増える傾向にあります。
冬だけオープンする病院なんてない訳で、
必然的に夏は幾分余裕があって、冬は満員になります。
夏の第5波の時とは違って、ただでさえ病院は繁忙期で余裕がありません。
またコロナの入院は、保健所が主導して搬送方法や病院を決めます。
そして入院を受け入れるのも、病院の一つのフロアに1日3-5人が限界です。
1日に入院できるコロナ患者に限界があると思われます。
入院患者数の増え方を見ると、1日100人程度が限界と想像します。
そんなこんなで、医療崩壊を示す東京ルールの件数は、
第5波の1日120件程度を大きく超えています。
救急・入院診療はだいぶひっ迫しています。
4.恐れていること、伝えたいこと
4-1.コロナ患者の診療~伝えたいこと
現在、都内ではコロナの検査は何とか足りていると予想されます。
ですが、今後は足りなくなることが予想されます。
少し先に感染の流行が始まった沖縄では、検査体制や感染者の観察体制が崩壊の危機になっています。
どうせ混雑で検査を受けられないから、と検査しない人もいると思います。
また、自前の検査キットで確認しなければいけないこともあると思います。
ですが、できれば検査を受けて下さい。
自前の検査で陽性と出たら、しっかりと医療機関で再検査を受けて下さい。
「5日前から風邪のような症状、やがて呼吸苦」とか、
「自前の検査キットで陽性も、医療機関受診せず。やがて呼吸困難」
保健所を介さずに、このような方が救急車を呼んだ場合、
受け入れ先を見つけるのは非常に困難になると思います。
病院を受診して、保健所に介入してもらって下さい。
4-2.コロナ患者以外の診療~伝えたいこと
コロナ禍では、エッセンシャルワーカーが感染や濃厚接触により休職を余儀なくされることが生じています。
医療従事者は濃厚接触者の場合、症状がなければ業務前に抗原検査で陰性が確認されれば仕事が可能とされています。
ですが、沖縄では21の病院のうち、15の病院の救急診療、8つの病院の一般診療に影響が出ているとあります。
都内でも救急車の搬送先の選定には難渋している状態です(東京ルール)。
避けられる救急搬送事例は、飲酒による急性アルコール中毒と、(特に雪の日の)転倒です。
飲み過ぎと、悪天候時には外出を控える・転倒に気をつけるようお願いします!
4-3.恐れてる院内のクラスター~伝えたいこと
そしてもう一つ我々が恐れているのはコロナの院内感染です。
前述したとおり、我々は濃厚接触者でも条件次第で勤務します。
院内感染をゼロにするよりも、医療を回すことが優先されます。
なので院内感染がおこっても不思議はないと思っています。
ただ日本には、以前はインフルエンザで、今はコロナでも患者様に感染させてしまうと、社会から批判されます。
院内クラスターを起こした病院は、公表される地域もあります。
そしてスタッフが、スタッフの家族が風評被害にさらされます。
院内感染を起こしてでも、医療を回せと命令されて、
院内感染を起こしたら、風評被害にさらされる現状。
医療従事者は、これが一番恐れていることではないでしょうか。