マラソンでBCAAを摂取する効果(どういう人が摂取するといいのか)
ランナーのサプリメントとしてBCAAが最も有名です。普段摂取するサプリメントから、レース中に摂取する補食・給水・サプリメントとしてもBCAAが含まれた商品がたくさんあります。本当にこんなにBCAA漬けになるくらい摂取した方がよいのでしょうか。
今回はBCAAを摂った方がよい人とそうでもない人、そしてその効果と誤解について書いてゆきます。
1.BCAAの効果
1-1.BCAAの効果
国際栄養学会からの提言にもあるように、ランニングにおけるBCAAの効果は第一に強いトレーニングの後の筋の回復向上です。第二に強いトレーニングの後の免疫低下の抑制です。
特に持久力トレーニングや継続したトレーニング中はBCAA、特にロイシンが消費されると言われています。また長距離のレースでは、距離が長くなるほど骨格筋のダメージが増大します。そんなBCAAを消費してしまった環境で筋がダメージを受けた場合、ロイシンを含んだBCAAを補うことで骨格筋の再合成の速度が高まるとされています。
なのでBCAAは、日々しっかりトレーニングをしている人は日常的に、レースで時々強い負荷を背負う人はレース前後にBCAAを摂取するのがよさそうです。
また、強いトレーニングやレースの後は、免疫が低下すると言われています。その結果風邪をひきやすくなるとされています。レース前後でBCAAを摂取することで、グルタミン濃度の低下による免疫異常を起こさなかったとの報告がいくつかあります。レース後に風邪をひきやすい人も、レースの際に摂取した方がよさそうです。
1-2.BCAAの誤解
一般的にBCAAに期待することとして、「レースで摂取すると後半までバテない、結果いいタイムが出る」を期待する方が多いと思います。ですが文献的には、パフォーマンスは変わらないとするものが多いようです。例えばこの文献は、100kmレース中で(エネルギーをうまく使う効果があるのであれば、ウルトラの方が差が生じやすいはずです)、計20gという結構な量のBCAAを摂取したにもかかわらず、パフォーマンスは変りませんでした。
BCAA摂取の目的はあくまで「速くゴールする!」のためではなく、「速く筋の回復をして、またトレーニングできる体にする」「翌日以降の筋肉痛を軽減して日常生活を送る」「マラソンの後の風邪を予防する」というものです。
以前はマラソン大会のExpoで、BCAAが中心のフルマラソン完走セットが売られていました。ですが最近はエネルギージェルを主体としたフルマラソン完走セットが増えてきたと思いませんか?
2.BCAAを摂った方がよいのはどういう人?
2-1.BCAAを摂取不足の人
BCAAは、肉・魚などの動物性たんぱくに多く含まれています。そして普段からBCAAをしっかり摂取していれば、追加でBCAAを摂取しても効果は乏しいと言われています。なので普段、肉・魚をしっかり食べる習慣のない人は、日頃からBCAAを摂取することをお勧めします。
ちなみに韓国の65歳以上の高齢者4852人、中国の18~40歳若年者948人の食品調査では、女性・低学歴・低収入・非飲酒者・活動が低い(ランナーはこれにあたりませんね!)人はBCAAの摂取量が少なかったとの結果があります。そして筋力が弱く、肥満傾向であったとのことです。
日頃時間やお金がなくカップラーメンや菓子パンなどで食事を済ませるランナーや、内臓の力が弱くて消化によいものしか摂取できない女性、肥満傾向の方や骨格筋量の少ない方は摂取した方がよいと思われます。
2-2.肝障害の人
肝障害のある人では血中BCAAが低下し、BCAA摂取しても反応が悪いことも報告されています。前述の韓国や中国の食品調査では、飲酒者はBCAAの摂取量が多いとされていますが、肝障害のある人やお酒を飲んで何も食べない人(自分もこれです)はBCAAを日常的に摂取することをおすすめします。
ちなみにBCAAやグルタミン酸は二日酔いにもよいという記事もありますし、自分も二日酔い予防に寝る前に飲んでいた時期もありました。とりあえず飲酒者にはおすすめします。
3.どういうタイミングでBCAAを摂取した方がいい?
3-1.強いトレーニングの前後に摂取する
・ハーフマラソン以上の距離をガチで走るとき
・フルマラソン以上の距離を走るとき
・普段のトレーニング量の多い人
・強いトレーニング(大会)の後に風邪をひく人
先述した通り、BCAAの効果は強いトレーニングの後の筋回復と免疫の低下抑制です。弱めのトレーニングの際は必要ありません。筋の崩壊がおこるようなガチランの20km以上のレース。フルやウルトラ・それ以上の距離の練習やレースの時にはしっかり摂取することをお勧めします。BCAAをホエイプロテインと一緒に摂取すると筋合成が高まると言われています。BCAAと牛乳を一緒に摂取すると、より効果が高いかもしれません。
3-2.普段から摂取した方がよい人
・骨格筋量の少ない人
・動物性たんぱく質の摂取量の少ない人
・(飲み過ぎで)肝臓の値が高い人
・お酒を飲み過ぎたあとに
このような人は、「日常摂取するサプリメント・補食」として摂取することをお勧めします。
特にアミノ酸が枯渇しやすい朝に、そして寝る前に補給しましょう。もちろん運動時は消耗しますので、運動時も摂取しましょう。忙しいですね(笑)
ホエイプロテインと一緒にとると効果が高いという報告もあります。
4.ちなみに自分は?
自分は大学病院で10年以上も肝臓の専門医として仕事に従事していました。肝臓病の方はBCAAが不足している方が多くて、その影響もありBCAAの重要性には人一倍気づいていました。結果「月刊ランナーズ」の広告にアミノバイタルを摂取するバイタリストとして取材をして頂きました。
自分の場合BCAAは普段から摂取するのではなく、しっかりと走ったとき(走り過ぎた時)、しっかり飲んだとき(飲み過ぎた時)に服用する程度です。当時は週2しか練習していなかったものの、日々飲酒していたので、結果BCAAは毎日飲んでいました(笑)。