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お酒の話(ラム)
ラムとは
サトウキビ(原料)を発酵させ、蒸留した蒸留酒。ラムは英語表記(英語:Rum)であり、ロム(フランス語:rhum)、ロン(スペイン語:ron)、ロム(ポルトガル語:rom)と各言語によって若干異なる。
ラムの歴史
ラムの製造に欠かせない「サトウキビ」はコロンブスの航海によってカリブ海に持ち込まれた。1492年の新大陸発見の翌年、2度目の航海にて、カナリア諸島産のサトウキビをカリブ海(エスパニョーラ島)に持ち込み栽培が始まったとされている(コロンブスの備忘録にも記述あり)。
ラムの語源
ラムの語源については諸説あり、真偽は定まっていない。
・ランバリオン(英語:rumbullion)説
イギリス人がバルバドス島の原住民が蒸留酒で酔っ払った姿をみてデボンジャー地方の「興奮」rumbullionと表現し、頭文字が残ったといわれている。
※rumbullionはピジン語(バルバドス島 クレオール方言)であり、語源は「茎」(ラテン語 セビーリャ方言:rheu)と、(英語:bullion)又は、「煮るもの」(フランス語:bouillon)の合成語という説もある。
・サッカルム(ラテン語:saccharum)説
「サトウキビ属」を表すカッサルムの末尾が残ったといわれている。
ラムの起源
ラム酒の起源について大きく2つの説が有力となっている。
・バルバドス島説
17世紀にバルバドス島に移住したイギリス人がサトウキビからラムを製造した説。
・プエルトリコ島説
16世紀初頭にスペイン探検家フアン・ポンセ・デ・レオンの隊員がプエルトリコにて蒸留技術を用いてラムを製造した説。
ラムと三角貿易
「砂糖」「銃」「奴隷」の三角貿易により、砂糖の需要が高まると廃糖蜜(モラセス)も増えていった。この廃糖蜜を発酵、蒸留することでラムは作られる。当初のラムは質も悪く、奴隷のエネルギー補給や、アルコールによる支配(制御しやすくする)為に用いられた。また当時はラムが壊血病の特効薬として信じられており、様々な船や港酒場に置かれていた。※実際に①ギリス海軍では1970年代までラムを壊血病対策として支給していた。
ラムの転機
ラムの品質が向上したのは17世紀終わりから。
1693年にフランス人修道士ジャン・バチスト・ラバ(ペール・ラバ)がフランス領マルティニーク島に渡り、コニャックの蒸留機や技師を持ち込み、当時の最高技術でラムの製造を始めた。結果としてラムの品質は飛躍的に向上し、砂糖と同様に第一級の貿易品となった。
ラムの種類
製造方法による分類
・トラディショナル(インダストリアル)製法
サトウキビから砂糖を精製する際、サトウキビジュースを遠心分離にかける。その後結晶化した砂糖と、廃糖蜜(モラセス)に分かれる。この廃糖蜜を発酵、蒸留する製法。廃糖蜜は冷凍保存が可能であり、遠隔地、通年でのラム製造が可能となる。ラムの約9割がこの製法でつくられる。
・アグリコール製法
サトウキビを圧搾してつくるサトウキビジュースをそのまま発酵、蒸留する製法。19世紀フランス領にて確立。サトウキビジュースは保存が出来ないため、収穫期、現地の蒸留所でないと製造できず、土地の個性などが出る。
甜菜糖(デーツ)の栽培開始、ナポレオンの大陸封鎖や甜菜糖の奨励などにより、植民地での砂糖生産需要が激減、一方でラムの需要は伸び続ける中、廃糖蜜を作らず、サトウキビジュース100%でラム作る方法がフランス領植民地で確立した。
・ハイテストモラセス製法
サトウキビを圧搾してつくるサトウキビジュースを加熱しシロップ化したもの(ハイテストモラセス)を発酵、蒸留する製法。シロップは冷凍保存可能で糖度やサトウキビの風味がより強くなる。トラディショナル製法とアグリコール製法の中間のような製法。
風味による分類
・ライトラム
モラセスと水を混ぜたものを純粋酵母発酵、連続式蒸留機で蒸留する。ステンレスタンクやホワイトオーク樽(チャーリングなし)で短期間熟成。
活性炭で濾過⇒ホワイトラム
樽熟成のまま⇒ゴールドラム
主にスペイン植民地の多い。
・ミディアムラム
①モラセスを自然発酵、連続or単式蒸留機で蒸留する。
※バカス(サトウキビの搾りかすの茎や葉)やダンダー(蒸留後の残留液)を添加する場合もある。
②ライトラムとヘビーラムをブレンドして作る製法もある。
主にフランス植民地やフランス海外県に多い。
・ヘビーラム
モラセスを自然発酵、単式蒸留機で蒸留する。
※蒸留前にバカスやダンダーを添加する場合もある。
ホワイトオーク樽(チャーリングあり)、バーボン樽などで熟成。
3年以上熟成でダークラムとなる。
主にイギリス連邦加盟国に多い。
・スパイスト・ラム(フレーバード・ラム)
トラディショナルラムにバニラや、フルーツや、香辛料などを漬け込む製法。
熟成(色)による分類
・ホワイトラム(シルバーラム)
蒸留後、ステンレスタンクで3ヵ月~1年の熟成し、活性炭で濾過して瓶詰めする。
淡色又は、無色透明。クリアでありながら荒々しさ、原料本来の風味を感じる。
・ゴールドラム(アンバーラム)
蒸留後、大樽(チャーリングなし)、バーボン樽で3年未満の熟成
薄い褐色色、黄金色。爽やかさと荒さとまろやかさを併せ持つ。
・ダークラム
蒸留後、バーボン樽(チャーリングあり)で3年以上の熟成。
高温多湿な生産地では12年以上の熟成が困難であり、当時は欧州にてボトラーズとして長期熟成されていた。
濃い褐色、琥珀色
熟成方法
・コンチネンタルエイジング:大陸(ヨーロッパなど)で熟成する製法
・トロピカルエイジング:原産地で熟成する製法
産地(宗主国)による分類
・イギリス系(RUM)
スコッチの製法を取り入れている。特にジャマイカ、ガイアナではブレンデッドの技術を用いている。連続と単式のブレンドを作ることもある。
骨太でしっかりとした味わい(軽やかでマイルドなものもある)
ジャマイカ、ガイアナ、バルバドス、トリニダード・トバゴなど
・フランス系(RHUM)
コニャックの製法を取り入れている。アグリコール製法のラムが多く、
XOやVSOPなどの等級表記も用いられる。
サトウキビの風味を生かした香り豊かで繊細な味わい。
マルティニーク島、グアドループ島、ハイチ、モーリシャス島、レ・ユニオン島など
※マルティニークではAOCを取得している。
・スペイン系(ROM)
シェリーの製法を取り入れいている。また大陸系、島系でさらに異なる。
大陸系:ボディが厚く、強い甘み。熟成にはソレラシステムを用いる。
島系:軽やかでライトな味わい、キューバより技術が伝わる。
キューバ、グアテマラ、パナマ、ニカラグア、プエルトリコなど
ラムの製法
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☆参考HP☆