重力‐03 何かを持ち上げる
今度は何かを持ち上げる場合について考えてみましょう。
2ℓの中身入りのペットボトルやダンベルなど、片手で持てる程度の重りをもってみてください。この重りを下のX点から上のY点まで垂直方向に持ち上げてみます。
A:X点からY点まで最短距離で持ち上げる。
B:X点からほんの数センチ鉛直方向下のX’にストンと落とすように経由させてY点まで持ち上げる。(その時X’にある時間は一瞬に)
AとB、どちらが楽にY点までもっていけたでしょうか? おそらくBだと思います。
Aの場合はX点にある時に「今から持ち上げるのに使う筋群」がある程度収縮しています。「既に収縮している筋群をさらに収縮させる運動」です。X点の時点で重力に対して逆らう方向に筋力を発揮しているわけですが、それをY点までもっていく過程で重力に逆らい続けることになります。
Bの場合は、XからX’、に行く過程で、「今から持ち上げるのに使う筋群」は一度引き伸ばされます。XからX’、にもって行くためには、「今から持ち上げるのに使う筋群に拮抗する筋群」が収縮する必要がありますから、脳からは拮抗筋に収縮の指令が出ます。拮抗筋が収縮している時は、拮抗筋の拮抗筋(つまり元の筋肉)は収縮しません。ですからX’、からYに行く際に、収縮ゼロの状態からYまでもっていくことができます。
BはXからX’までは重力に逆らわず、むしろ重力を利用している。X’の時点で神経支配を逆に切り替えた瞬間に発生した筋力を有効に活用している。ということになります。
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